写真史への接近
前回と同じ、創刊号の写真と思われるかもしれませんが、これは創刊300号記念特集のトビラです。1978年。特集タイトルは「カメラ毎日をハーフ・ミラーとして写真・風俗と写真表現を考える」企画構成 西井一夫 ・日高 敏 となっています。
1978年は、私17歳で、まだ写真にもカメラにも一切関心をもっていなかった頃です。なぜ、このキリヌキを持っているかというと、少し話しが長くなります。
1984年に日吉にある東京綜合写真専門学校の2部(夜間)に入学。昼間は3年、夜は2年制という、ちょっと変わったカリキュラムだったのですが、この2年の終わりくらい。そう、卒業製作の写真を撮影していた頃、校舎1階にあった売店「大石商店(だったはず)」の前で、既に卒業していた先輩である伊奈英次さんに出会い、アドバイスをいただいたのです。これがきっかけで、なんとなくウマがあい、その後たいへん懇意にしていただくことになりました。
私24歳。伊奈さん28歳くらい。そうそう、数年後、「久門よぉ、30になっちゃったよぅ」と言われたことを、昨日のように思い出すことができます。
それからしばらくしてからだったと思います。氏が身辺整理を行なった時に、たくさんのカメラ毎日があるから要らないか? という話を受け、全部引き取ったのです。タダ。雑誌を立てて横に並べて畳一畳(長辺)分はありましたから、ざっくり100冊以上、期間にすれば10年分くらいでした。
大雑把なのにマメな私、関心のある企画・ページだけを選別・切り抜いて、保存しました。それだけでもずいぶん時間がかかったと思います。大阪からきていた高嶋さんにも見てもらったんじゃないかなぁ。
大きなテーマとしては、ダイアン・アーバスと寺山修司さんの記事は全て切り抜きました。これは多分まだ、実家にあるはずです。コロナで帰省するのもままならいのでつらいところですが。その他もろもろ、気になるページをまとめたフォルダの一冊はずっと手元に残っていて、深酒した時などに見返すことがあります。ここに掲載した紙面は、その中の一つ。
閑話休題。
この特集は、1945年からこの号が発売された1978年までの、「33年間の写真史」を総覧しようという試みです。深入りすると話が進みませんので、その時代区分だけ紹介しておきます。
- 前史 ’45~’53 裸婦とリアリズム論争の時代
- ’54~’56 ザ・ファミリー・オブ・マンの時代
- ’45~’53 裸婦とリアリズム論争の時代
- ’57~’62 ヌーベル・ヴァーグの時代
- ’63~’67 コマーシャルの時代
- ’68~’72 コンポラの時代
- ’73~’78 混在の時代
私自身が同時代であった項目は一つもないのですが、それでも私の上の世代の方々にとっては、馴染み深い項目が多いはずです。5年毎に時代区分をして、それぞれに分かりやすいテーマをつけていて、非常にわかりやすい。学校で教科書的に教わる「写真史」はいわば世界史であって、こちらは日本史。それも現代、評価も定まりきらない現代史なので、自分に関わりがあるテーマとして理解できました。なので、これによって写真表現の現代史を把握することができたのでした。不可解な写真作品を見たときに、それをどのように見ればいいかを時間の遠近法の中で、その位置を決めることができる。まことに便利な物差しを得たような心持ちでした。
逆にいえば、ここに提示された枠組みで「写真」を見てしまうクセは、今も残っているように感じます。これはいわば、「刷り込み」のようなものかもしれません。