遺影専門の写真スタジオとしてどんどん大きくなっている写真館。改めて調べると1979年生まれでファッションスタイリストをしていた太明良さんが、2014年に創業したスタジオです。シニア向けのサービスで写真館→美容室→洋品店→ネイルサロン→モデル事務所的なサービスまで手広く展開。

 いいなぁ。

 出自がスタイリストというのがいいのだろうなぁ、と、写真から始めるしかない私などは嫉妬します。というのも、写真から始めると、サンプルに出ている写真の全て似たりよったりのイメージに、個性がないなぁ、とかいちゃもんをつけそうだから。

 ただ、冷静にお客様の立場で考えるなら、「全て似たりよったりのイメージ」こそを求めているのです。それが、自分の理想に近いかどうか、が選択の余地になるだけ。選択肢が他にない、あるいはここが有名、というので、多くの方々は十分なのです。スタジオアリスのイメージだって、「子供らしいかわいさ」では全て似たりよったり、子供が写っている写真をみれば、これはアリス(あるいは他の類似店)だとわかるのと同じようなこと。「子供らしいかわいさ」には、泣き顔もあれば、意地悪であったり残酷であったりするのもあるのですが、こうしたところが一切ない、まるでディズニーの世界が理想。こう考えると、ミソは「現実など見たくない」がスタート地点かもしれません。

 髪の毛は薄くなってボサボサ、シワ・シミも多くなって、普段着もボロボロ・・・・。こんな現実など見たくない、残したくない。これは全ての人に共通する意識でしょう。

 逆にいえば、今、この日本では一般の方々が大人になってからスタジオで撮影する習慣は一切なく、多少老いを自覚してきたら日常的な写真も撮らなくなりますし、高齢化の至る葬式の準備という点から「遺影」が必要といわれると、こういう専門店が安心、ということにもなります。

 成功するしかないですね。

 で、繰り返しになりますが、スタイリストが始めたということが成功の秘訣なのだと思うのです。スタジオアリスが着替えと箱を用意した(誰でもちょっと勉強すればフォトグラファーになれる)撮影ビジネスとして始まったように。

 こう考えると、「写真」から始めて成功するのは不可能なことかもしれません。「写真」は何かを写すツールでしかありませんから、「何をどのように」を軸にしない限り存在できなません。こうした意味では、一般にいう「写真館」という言葉には、前に書いたよう「正統的な家族を、正しく写す」イメージがこってり貼りついているわけで、シニアや子供をターゲットにしたところで、「正統性や正しさ」への欲求からは逃げられないでしょう。

 私が写真に関心をもった40年以上前から、どちらかというと「正統性や正しさ」から離れる方向に魅力を感じていたことを思い返すにつけ、あたらめて、今後のやり方を考えないといけないなぁ、と思う今日この頃です。