第11回目 写真の「色」を楽しもう!

似顔絵 英語でいう “photograph(=直訳すると光画)” にあたるオランダ語に「写真」の意訳を蘭学者があてたからでしょうか、「写真はありのまま(=真)を写すもの」という意識が強いせいか、なんとはなしに、被写体そのものの「色」と写真に写っている「色」が違っていると不自然に思えることが多いはずです。

 その反面で、決して現実的とは思えない「色」で写っている写真に、不思議な魅力を感じたりもします。「色」とは、本当に不思議な対象です。

 今回は、人が見る「色」と写真に写る「色」の関係の謎に迫ります。この謎を理解すればするだけ、写真の「色」を自在に操れると同時に、「色」をより深く楽しめるようになるはずです。

1. 光と色

 太陽光をプリズムで分光すると、7 色の光(国と地域によっては 5 色ないし 6 色)に分けることができることをご存じですね。これは光の屈折率が、波長によって異なるためです。
 波長の長い光、つまり赤い光は屈折率が小さく、プリズムを通った後、最も外側に出てきます。
 逆に、波長の短い光、つまり青い光は屈折率が大きいため、最も内側に出てきます。
 こうして分光した色の帯をスペクトルといいます。
 ”太陽光のスペクトルは 7 色に分けうる” という概念は、「光学」を1704年に著したアイザック・ニュートンによるもの。「音階の 1 オクターブは 7 音でできていて美しく調和している。光もきっとそうに違いない(!?)」という錬金術的な強引な発想から、「赤、オレンジ、黄、緑、青、インディゴ(=ジーンズの染料)、菫(すみれ)」と定義しました。日本語では、「赤橙黄緑青藍紫(セキトウオウリョクセイランシ)」と覚えたりもします。
 つまり、光の色の違いは、光の波長の違いによるものです。

 しかし、実際には、一つの色にはさまざまな波長の光が混在しているのが普通です。さまざまな波長の光の組合せやそれぞれの強さを眼が感じ、脳が全体的に把握し、その結果として一つの色を私たちは認識しています。
 すなわち、実際に見える一つの色には、1.)光の波長と色の関係、2.)波長の組合せや強さと色の関係、3.)脳による認識の仕方、が関わってきます。このため、光の色を隙なく論理的に理解するのは、たいへん難しいことです。

 ここでは、写真を撮影する上で知っておけば役立つ「色」の知識を簡単に整理していきます。

1.1. 物の色

 私たちが普通に「色」という場合、それは物(対象物)の色を指します。物そのものに色があると私たちは単純に信じているわけです。もちろん、これでも不都合はありません。
 しかし、少し考えれば判るように、物は光によって眼に見えているわけですから、物の色とは、実は、物が反射している光の色なのです。
 つまり、赤い物は、その表面で赤い光を反射しているからこそ、赤く見えるのです。もし仮に、これを青い光で照明したとすると、赤い物は、黒く見えます。また、濃い青フィルターを装着して撮影した場合も、黒く写ります。なぜならば、濃い青フィルターは、赤い光を吸収してしまうからです。

photo

<写真 1. >
フィルターなしで撮影

photo

<写真 2. >
濃い青フィルターを使って撮影

 このように考えると、色というのは単純そうに見えて、意外に面倒な対象だということがわかると思います。実際に眼に見えているさまざまな色を全て写真上に正しく再現することは、ほとんど不可能に近いことなのです。

1.2. 光源の色

 冒頭に、「太陽のスペクトルには 7 色が見える」と述べました。もともとの太陽光は、白色光ですが、それを分光すると 7 色が現れるのです。大変、興味深いことに、このスペクトルを逆向きのプリズムに通せば、元の白色光が蘇(よみがえ)ります。つまり、光の色は、単波長(単色)の光に分解したり、逆に単波長の光を組み合わせることで別の色をつくり出すことができます。

Photo 3.

<写真 3.>
電球の光で撮影
(デーライトタイプフィルム使用)

 さて、電球照明や夕焼けの光で撮影した写真は、全体的に橙(だいだい)色の強い写真に仕上がる(<写真 3. >)ことをご存知のはずです。

 昼間に電球を点灯した時にその光が橙色を帯びていること、あるいは夕焼けの光がそもそも橙色をしていることから、こうした写真はそれほどは不自然には見えませんが、ただ「実際に見た時よりも濃い橙色になる」傾向があるように感じたことはないでしょうか ? これは、感光材料の特性も少しは関係していると思いますが、それ以上に眼の慣れ(思い込み、記憶)が大きく影響しているようです。
 こうしたスライドフィルムを部屋を真っ暗にして映写すると、そのまま現場にいるような臨場感をおぼえたりもします。不思議なものです。


Photo 4.

<写真 4.>
蛍光灯照明で撮影
(デーライトタイプ
 フィルム使用)

 もう一つ。一般的な蛍光灯照明で撮影した写真は、全体的に緑色が強く仕上がる傾向があります(<写真 4. >)。

 特にリバーサル(ポジ)フィルムでは緑色がかなり強く写ります。これは、蛍光灯から発せられる特定波長の強い光(輝線スペクトルと呼びます)の影響と言われています。

 ただ、それがなぜ人の眼には見えず、感光材料には感じるのか ? この疑問に答える十分な理論を私は寡聞にして知りません。
 ある人の説によれば、「人の眼にも実際には緑色に見えているはずだ」と言いますが、それにしては、太陽光と蛍光灯照明を同時に比較したときに、蛍光灯の光がいっこうに緑色に見えません。
 「人の眼は輝線スペクトルを無視しているのだ」という説もありますが、なぜそんな具合に無視できるのか? そこが判りません。どなたかご存知の方は教えてください。

 ともあれ、こうした具合で、光源の色によって、実物の見え方や写真の仕上がりが大きく変わってきます。ですから、見たままのきれいな色(記憶色)に写したい場合には、光源の色にも充分注意する必要があるわけです。

1.3. 色温度とは何か ?

 光源の色の性質を簡単に表示するモノサシのひとつに「色(いろ)温度」という考え方があることをご存知の方は多いでしょう。写真にも非常に馴染み深いものです。
 金属(理想的には “完全黒体” と見倣(みな)します)を熱していくと、次第に赤味を帯びた光を発するようになり、温度を上げていくと赤味が取れて黄色くなり、次第に白っぽい光を発するようになります。さらに加熱すると、青味がかった光を発するのだそうです。

 こうした具合に、温度と色とには一定の関係があることから、色温度がモノサシによく使われるようになりました。色温度の単位には「K(ケルビン)」が用いられ、数値と色のおおまかな関係は次の表のようになっています。

自然光と人工光の色温度(K)とフィルムの種類

<自然光> ▼昼光(晴天)(約5,500K)
日の出・日の入り
▼(約2,500K)
日陰・曇天
(約7,000K)
<人工光>  家庭用電球
 ▼(約2,800K)
▼スピードライト(約5,500K)
ろうそく
▼(約1,900K)
写真用電球
▼(3,200K)

–2,000– –3,000– –4,000– –5,000– –6,000– –7,000– –8,000K–
赤味の強い光 青味の強い光

<フィルム> ▲タングステンタイプ
(3,200K)
▲デーライトタイプ
(5,500K)

 フィルムにも色温度の指定がある(第3回目の 2.2 参照)ことに注意してください。
 これはフィルムが正しい色(昼光(晴天)で観察した時と同じ色)を発色するための光源の色温度の指定という意味です。たとえば、デーライトタイプのカラーフィルムは、色温度 5,500 K の光源の光で撮影した時にはじめて被写体の色を正しく再現します。
 もしも、これより色温度の低い光源(=屋内の家庭用白熱電球など)で撮影した場合には、赤み(橙色)が強く写り、逆に色温度の高い光源(屋外の日陰など)で撮影した場合には、やや青みがかって写ります。
 タングステンタイプのカラーポジフィルムは、色温度 3,200 K の写真用電球(通称タングステンランプ)の光で撮影した時にはじめて被写体の色を正しく再現します。

 フィルム指定の色温度以外の光源で、被写体の色を正しく再現したい場合には、「色温度変換(CC)フィルター」を使用します。日陰用フィルターや電球用フィルターなど、さまざまなタイプが発売されていますので、必要に応じて使用してください。
 厳密さを求める場合には、同じ光源と同じフィルター(と同じフィルム)を用いて、テスト撮影をおこなうのが基本です。

 蛇足になりますが、電球や蛍光灯などの照明器具のカタログにも色温度が明示されています。これは、これらの照明器具の光を人の眼で見た場合の色の感じ方を基準に表示したものです。電球などのスペクトルが連続している照明器具ではよいのですが、蛍光灯や水銀灯などの輝線スペクトルを発する(つまりスペクトルが連続していない)照明器具の場合には、これらのカタログに記載の色温度を写真撮影にそのまま使うことはできません。覚えておいてください。

2. 「3 原色」とは何か ?

 写真はいうに及ばずテレビや印刷など、色を再現するためのさまざまな技術のほとんど全てには 3 原色の考え方が使われています。ですから、3 原色の仕組みを理解すれば、これらの色を自在に調整できるようになります。

 「それでは、3 原色とは何色と何色と何色でしょうか ?」と、日本人に尋ねると、たいてい、「赤、黄、青」という答えが返ってきます。これは信号機の 3 色ですね。いえ、信号機の 3 色は、最近では、「赤、黄、緑」と教えられているそうですが、私が子供だった頃には、「赤、黄、青」と教わりました。
 ともあれ、3 原色です。実は、これには 2 通りあります。一つは「加色法の 3 原色」で、赤(R)、緑(G)、青(B)。もう一つは「減色法の 3 原色」で、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)です(シアンとマゼンタは、あまり聞かない色の名称かもしれませんが、これを機にそれぞれの色の印象と共に覚えてください)。

2.1. 加色法と減色法

Photo 5.

<写真 5.>
モニタをルーペで拡大視すると……
赤・緑・青のカラーフィルターが見えます

 まず「加色法の 3 原色」、赤(R)、緑(G)、青(B)ですが、これはカラーテレビ、液晶ディスプレイなどに応用されています。モニタをルーペなどで拡大して見ると、規則的に並んだ赤(R)、緑(G)、青(B)の粒々(画素(ピクセル)といいますか、カラーフィルターの配列)が見えます(<写真 5.>:右)。
 つまり、「加色法の 3 原色」の光の強さを、さまざまに変えて組み合わせることで、あらゆる色がつくり出せるわけです。
 野球場や盛り場の巨大テレビ画面(”○○ビジョン”)も同じ仕組みです。


Photo 6.

<写真 6.>
カラー印刷物を
ルーペで拡大視すると……
C、M、Y(とK)の
網点が見えます

 次に「減色法の 3 原色」、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)ですが、こちらはカラー印刷に応用されています。
 カラー写真の印刷物をルーペで拡大して注視すると、これも規則的に並んだ、シアン、マゼンタ、黄などのインク(インキ)の粒々(網点(あみてん)といいます)が見えます(<写真 6.>:左)。
 つまり、「減色法の 3 原色」のインクの濃さ(=色の粒である網点の大きさ)をさまざまに変えて(= 0 〜100 % の範囲でパーセンテージ表示します)掛け合わせることで、あらゆる色がつくり出せるわけです。

 ちなみに、C、M、Y の 3 色のインクを掛け合わせると理論上では真っ黒になるはずですが、実際にはどんなにインクの濃度を上げても、黒に近い灰色にしかなりません。
 そこで印刷の現場では、黒を黒としてきちんと表現するために、減色法の 3 原色のインクに黒(”B” とも、墨(スミ)ともいいます)を加えた計 4 色のインクが使われています。


Fig.1.

<図 1.>
「カラーフィルムと乳剤層」

 それでは写真ではどうかというと、これら「加色法」と「減色法」両方の 3 原色を使っています。

 <図 1. >に、カラーフィルムの仕組みを図示しました。
 カラーフィルムの感色層は、下から順に赤光、緑光、青光に感じる乳剤がフィルムベース上に塗布されています。
 面白いことに、フィルムを現像すると、それぞれ、下層からシアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)に発色します。
 カラーネガフィルムでは、それぞれの光が当たっている部分が発色し、カラーリバーサル(ポジ)フィルムではそれぞれの光が当たっていない部分が発色する点が、ネガとポジで異なります。

2.2. 色の足し算、引き算

Fig.2.

<図 2.>
「光の波長と、3 原色の関係」

 さて、「加色法」、「減色法」それぞれの 3 原色を、光の波長との関係で簡略化して図示したものが左の<図 2. >です。
 スペクトルの色とは異なり、ある範囲の波長の光が均等にある場合に、人の眼にそれが何色に見えるかを示しています。

 波長 400〜500 nm(ナノメートル)の光がほぼ均一にあれば、私たちはそれを青(B)色と認識します。緑(G)は、500〜600 nm。赤(R)は、 600〜700 nm です。これが「加色法の 3 原色」です。

 「減色法の 3 原色」ではどうかというと、波長域が広く、500〜700 nmまでの光がほぼ均一にある場合に黄(Y)色に見えます。マゼンタ(M)がちょっと面白くて、400〜500 と 600〜700 nm と別れています。400〜600 nmの光があれば、シアン(C)に見えます。

 この<図 2.>の「光の波長と、3 原色の関係」の見方がわかると、興味深い事実に気付くはずです。
 つまり、青(B)と緑(G)を足せば、シアン(C)と同じ波長域の光が揃うことになります。同様に、緑(G)と赤(R)を足せば黄(Y)になり、青(B)と赤(R)を足せばマゼンタ(M)になります。
 それぞれの色を記号で数式化して書いてみましょう。

B + G = C   G + R = Y   B + R = M

 また、青(B)と黄(Y)を加えると、全ての波長域が揃うことになります。これはつまり色が無くなって無彩色(白やグレー)になることを意味します。
 色が無いので、これを仮に「0」と表示することにしますと、次の式で表せます。

B + Y =0   G + M = 0   R + C = 0

 これを算術的に変形すると、次のようになります。

B = – Y    G = – M    R= – C

 これが、いわゆる補色の関係です。
 つまり、青(B)の補色は黄(Y)、緑(G)の補色はマゼンタ(M)、赤(R)の補色はシアン(C)で、それぞれの色を等量だけ混ぜることで、無彩色になります。
 ですからたとえば、蛍光灯照明による緑(G)カブリを補正したい場合には、その補色であるマゼンタ(M)のフィルターを用いればよいわけです。
 どうですか !? 慣れるまでは少し分かりにくいかもしれませんが、色はこのように算術的に計算できるのです。一度理解してしまえば、色を自在に調整できるような気分になるはずです。

Fig.3.

<図 3.>
「原色・補色のリング」

 さて、こうした色の足し算、引き算を覚えやすくした「原色・補色のリング」(<図 3. >)を描いてみました。
 このリングでは向かい合う色がそれぞれ補色になっています。また、一つ飛ばしの色を混ぜることで、その中間の色ができます。
 つまり、このリングを覚えておけば、「色の調整」が直観的に判ります。

2.3. 色フィルターの使い方

 ここまでに述べた色の仕組みを理解していなくても、「青いフィルターをレンズの前にセットすれば青い写真になる」ことは、誰もが知っているはずです。色メガネを掛けるのと同じですね。
 ただ、色の仕組みを理解すると、青(B)フィルターを用いることで、その補色である黄色(Y)の被写体は無彩色に近くなることや、緑色(G)の被写体がシアン(C)に近く写ることが判ります。色の仕組みを知っていることで、色フィルター使用時の写真の仕上がりの予想が立てやすくなるわけです。

 色フィルターは、その補色の色の光を吸収することで、画面全体の色を調整するものです。ですから、濃いフィルターを用いると、透過する光量自体が少なくなります。この点にのみ注意して、まずはいろいろ遊んでみることから始めてみましょう。

2.3.1. 色調整(CC)フィルター

photo 7

 

 コダックや富士写真フイルムから、3 原色(R、G、B と C、M、Y の計 6 色)のシート状の色調整(色補正、CC)フィルターが販売されています(<写真 7. >:右)。

 色調整(補正)の基本的な考え方は、「偏った色の補色のフィルターを加える(すなわち補色をカットする)」ですが、これらのフィルターには、その濃さが数値で示されており、色の足し算・引き算を、より正確におこなえるようになっています。
 CCフィルターをひと揃い揃えるにはかなりお金がかかりますが、色の調整をより自在かつより確実におこなえます。

 実は、ラボでカラープリントを作成する際にも、これと同様の色フィルター調整(補正)がおこなわれています。なお、カラーネガフィルムからのプリントは「減色法の 3 原色」で調整(補正)がおこなわれています。

2.3.2. 色温度調整(変換)フィルター

Fig.4

<図 4.>
曇りの自然光デーライト光電球光
(色温度高い)5,500K(色温度低い)

 色(いろ)温度については前述しましたが、これを 3 原色で考えるとどうなるか ? を少し考えておきましょう。
 <図 4. >は、「色温度と RGB 3 原色の光の成分の光量の関係」を描いた棒グラフです。

 中央のイラストは、R、G、B 3 原色の光の成分の光量のバランスがとれている晴天の太陽光やスピードライト光などのいわゆるデーライト光を表しています。この棒グラフを基準に考えてみましょう。
 「色温度が高い」というのは、青の成分の光量が多く、赤の成分の光量が少ないことを意味しています(<図 4. >の左図)。
 逆に「色温度が低い」というのは、青の成分の光量が少なく、赤の成分が光量が多いのです(<図 4. >の右図)。
 つまり、色温度とは、この棒グラフの傾きを数値化したものだと考えればいいのです。

 色温度を調整(変換)するには、3 原色の色調整(色補正、CC)フィルターを 2 枚使えばいいのです。しかし、かなりやっかいな調整になることは確かです。
 色温度調整(変換)フィルター(富士写真フイルムでは「LBA」(橙色系です)、「LBB」(青系です)。コダックでは「80」、「85」など)は、このような光の色の傾きを 1 枚で調整できるように設計したフィルターだといえます。

3. 写真の「色」とは何か ?

 色の仕組みを簡単に整理してきました。「色温度」を理解すれば、光源とフィルムの組合せによる色の調整をおこなえます。なぜならば、光源やフィルムは、色温度を一つのモノサシとして設計されているからです。
 また、「 3 原色」を理解すれば、写真における色調整(補正)のほとんどを自在におこなえます。なぜならば、写真は 3 原色でできているからです。

 それでは、なぜ色は 3 原色でできているのでしょうか ?
 答えは、意外な理由からです。人の眼の網膜の色を感じる視細胞(錐体(すいたい)細胞)には 3 種類あって、それぞれが赤、緑、青の光を感じとっているのです。
 つまり、これら 3 種類の錐体細胞がそれぞれ RGB の各成分の光をどれくらいづつ感じたかに応じて、脳の中で 3 原色から全ての色をつくり出して認識しているわけです。

 しかし、そうは言っても、現実の世界にはさまざまな色があります。輝くような色、透明感のある色、鈍い色、などなど……。色の様子とか、色の表情とでもいえば理解できるでしょうか。これらの全てが、3 原色の組合せで表現できるというものでは決してありません。
 現在のカラー写真は非常に一般的なものです。人によっては、「写真に写る色は、現実そのものの色だ」と信じていたりしますが、実際には、現実に見える色のほうが遥かに表情が豊かです。

 一方で、「写真に写した色のほうがきれいに見える」ということも実際にはあります。なぜかというと、そういう具合に見えるようにフィルムやカラー印画紙などは設計されているからです。特に、一般向けの感光材料は、どちらかというと 3 原色を派手に見せるように設計されています。その方が、技術的にも簡単で、しかも中間色が省略される傾向がありますから、色がはっきりきれいに見えるのです。
 「プロフェッショナル用」とか「高品位用」と銘打たれた高価な感光材料は、3 原色だけでなくそれらの中間色も忠実に再現するように設計・製造したものですが、それが故に、プリント作成などはより難しくなります。

 こうしたわけですから、まずは「実物の色をしっかり観察すること」から始めたいものです。意外なことに、実物をよく観察できるようになればなるほど、写真の腕もあがっていきます。とにかくは、「自分の眼で見ること」が基本です。

3.1. 正しい色

 先にも少し触れましたが、写真でいう「正しい色」とは、「太陽光(昼光)で実物を観察した時の色を、写真の上に再現していること」を指します。なぜかというと、太陽光は、地球上のどこでも簡単に得られますから、これを基準にすることで、世界中のどこの地域の人にでも、写真を通して実物の色を正しく伝えることができるからです。

 正しい色の写真を写すには、1)光源(色温度)の選択、2)フィルムの選択、3)撮影時やプリント時の色調整、を正しくおこなう必要があります。
 一般的には、太陽光かスピードライトの照明で、デーライトタイプのカラーフィルムを使えば、それだけで正しい色が再現されます。あるいは、写真用電球による照明でタングステンタイプのカラーフィルムを使う方法もあります。
 これら以外の場合には、フィルムなどが指定しているフィルターを使用して、補正しなければなりません。

Photo 8.

<写真 8.>
「正しい色」ではありませんが、
電球照明の温かい雰囲気を感じませんか ?

 ここで写真の色を少し別の角度から考えてみましょう。例えば、白熱電球で照明された部屋を撮るとします(<写真 8.>)。電球の光は橙色をしていますが、それがゆえに、なんとなく温かい穏やかな感じがするはずです。これを、色温度変換(CC)フィルターを使用して「正しく」補正して撮影したとすると、確かに「正しい色」にはなりますが、電球の光の雰囲気が失われます。どうしたものでしょう?
 写真に写る色は正しいことが望ましいことは確かですが、ただそれだけで十分かというと、決してそうではありません。

3.2. 表現する色

 テレビドラマを視たり、雑誌などに掲載の写真を見ていると、現実とはかなりかけ離れた色が画面を支配している……、そんなイメージを眼にすることがあります。画面(紙/誌面)全体が真っ青であったり、真っ赤であったりします。でも、それらが変に見えるかというと、決してそういうわけではなく、それがそこで伝えるべき内容を「色」がより効果的に演出していることに気が付きます。
 現代の私たちは、数え切れないくらいのイメージをテレビや写真を通して受容しています。ですから、それらのイメージの見方を無意識の内に熟知しています。ところが、これとは逆に、ビデオや写真を撮る側に立った時、「イメージをどう見せるか」といった方法論をまるで知らないことに気がつきます。だからこそ、まずは「正しい」方法で撮ることから始めます。しかし、決してそれだけでは表現できないものがあるのですね……。面白いことにこれは、「正しくない」方法を選択することではじめて表現できるものだったりするのです。間違った「色」、現実的ではない「色」で写すことで、はじめて表現できる何かもあるのです。
 こうしたわけですから、「正しくない色の写真はよくない」というのではなくて、「写真の色は写真の色として、それを楽しむ」ことからはじめてみましょう。そうしてみると、今までに撮った写真の中からも、意外な豊かさを発見できるに違いありません。


photo

<写真 9.>
スピードライトで照明し、
タングステンタイプフィルムを使って
撮影した「色」

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<写真10.>
濃い黄色のフィルターを使って
撮影した「色」

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<写真11.>
複写用フィルム(フジ CDU II)を使用し、
タングステン照明で
撮影した「色」

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<写真12.>
スピードライトに赤フィルターを付けて
撮影した「色」

 色についてもっと詳しく知りたい人には、次の新書をお勧めします。『色彩の心理学』、『色彩の科学』の 2 冊。共に金子 隆芳 著(岩波新書)です。

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