第2 回目 光の魔術師「レンズ」の不思議

似顔絵 一眼レフ用の交換レンズは、重く、大きく、しかも比較的高価です。しかし、原理そのものは私たちがふだん使っている虫眼鏡やルーペと同じなのです。
 いったい、何が違うのでしょうか ? 虫眼鏡では写真は撮れないのでしょうか ? こうした素朴な視点から、写真レンズの奥の深さを紹介しましょう。
 さらに、一眼レフ用のちょっと変わった交換レンズについても紹介します。きっと、普通じゃない写真に数多く出会えるはずです。

1. やってみよう!

1.1. 虫眼鏡と写真レンズの違い

写真 1.

<写真 1.:右>レンズ豆の水煮の缶詰(イタリア産)

 レンズの語源は、この缶詰の素材であるレンズ豆(Lentil, 和名ヒラマメ)です。両凸レンズの形はこの豆に似ているところから転用されたようです。
 実際に食べてみると、普通の豆の味でした。ちょっと残念。

 虫眼鏡を使って太陽光を一点に集め、黒い紙を焦がした経験は誰にでもあるはずです。この時、太陽光が一点に集まった所を「焦点(=まさに焦げる点ですね !)」と言い、これとレンズとの距離を「焦点距離」と呼ぶことを学んだはずです。
 もし天気が良ければ、手持ちの虫眼鏡やルーペを使って、次の実験をやってみてください。実に単純な実験ですが、考えだすときりがないほど疑問が沸いてきます。

写真 2.a.

Q. 虫眼鏡で太陽光を集めます。これ(<写真 2.a.:右>)は、ピントが合っていない状態です。
 ピントが合っていなくても、太陽の丸は丸のままです。これはなぜでしょう ?

A. 虫眼鏡のレンズが円形だからです。試しにレンズを、黒い紙などで四角や三角に覆ってみてください。どんな形にボケるでしょうか ?

写真 2.b.

Q. 太陽光が一点に集まった所が「焦点」。これと虫眼鏡との距離を「焦点距離」といいます。物差しで測定してみましょう。
 しかし、よくよく見ると、点ではなく小さな円です(<写真 2.b.:左>)。これはなぜでしょう ?

A. 太陽に大きさがあるためです。太陽の大きさは直径約140万キロで、地球から約1億5千万キロにあります。見かけ上の角度は約32分(1 度 = 60分の約半分)です。

写真 2.c.

Q. 虫眼鏡を太陽光に対して斜めにすると、焦点の形が奇妙に歪みます(<写真 2.c.:右>)。これはなぜでしょう?

A. 虫眼鏡が安物だからです。写真レンズや高価なルーペなどでは、こうした歪みがほとんどありません。このような像の歪みの原因を「収差」といいます。

 ここで、少し余談になりますが、ルーペの倍率と、レンズの焦点距離、収差について、少し詳しく説明しておきましょう。

● ルーペの倍率
 ルーペには普通、4 ×とか 8 ×とかいった具合に倍率が表示されています。これは正式には基準拡大率というもので、実物を目の前 25センチ に置いたときに見える大きさを基準にして、ルーペを使えば何倍に見えるかを示したものです。
 基準拡大率を M、ルーペの焦点距離を f(単位:ミリ)とすれば、M = 250 / f という関係があります。つまり、4 ×のルーペならば焦点距離 75 mm の凸レンズだというわけです。

写真 3

<写真 3.:左> 虫眼鏡やルーペの使い方。目をレンズにできるだけ近づけることで、拡大率は最大になります。

 一般的な虫眼鏡は焦点距離がだいたい 150〜200ミリ ですから、基準拡大率は 2 倍以下です。ただし、虫眼鏡の用途は拡大することよりも、遠視や老眼などで近くの物にピントが合わない場合の矯正用ですから、倍率はさほど大きくなくてもよいのです。

 また、目をルーペにできるだけ近づけて観察すれば、倍率は最大になり、(基準拡大率 +1)倍の像を見ることができます。

● 焦点距離
 虫眼鏡やルーペと違い、写真レンズは何枚ものレンズを重ねて作られており、それ自体が長く、焦点距離を計る基準がはっきりしません。この正しい基準を、レンズの「主点」といいます。話が面倒になるのでここでは触れませんが、大雑把にはレンズの中心あたりと考えていいでしょう。
 特に例外的なのは、次の 2 種類のレンズです。

写真 4.

<写真 4.:左> 写真レンズを使って焦点を結んだところ。
 虫眼鏡に比べると、大変きれいです。
 よく観察すると、ビルや電線も写っています。ただ、写真レンズのようにレンズ自体がぶ厚い場合には、焦点距離を正確に知ることは難しいものです。

A. レトロフォーカス(逆望遠)・タイプ

 一眼レフの多くの広角レンズはこのタイプで、レンズ全系の主点を、レンズの最後部よりもさらに後方におくことができる設計です。
 焦点距離の短いレンズであっても、一眼レフのレフレックスミラーなどに衝突しない構成にできます。

B. テレフォト・タイプ
 特に大判カメラ用の望遠レンズに多く、主点がレンズの先端よりもさらに前方にあります。蛇腹の長さを短くできるため、大判写真の望遠撮影には特に便利です。

 ちなみに、35ミリ(135)判カメラの “35センチ” は、フィルムの幅が 35ミリ であることに由来しています。焦点距離とは何の関わりもありません。

● 収差
 レンズを使って、実物を拡大したり画像を投影したりするとき、もっとも理想的な像のあり方を簡単に述べると、次の 3 つになります。

  • 点は点になる。
  • 光軸に垂直な平面には、全てピントが合う。
  • 形が正しく相似形になる。
写真 5.

<写真 5.:右> いい加減な凸レンズを使って、カレンダーの数字を拡大したところ。画像の周辺が歪み、さらに本来見えないはずの色が見えます。
 このような色が見える原因を「色収差」といいます。

 実際には、こうした理想的な像を完全に得ることは不可能です。つまり完全に理想的なレンズはできません。その原因を「収差」といい、数学的に取り扱うことができます。
 良く知られている収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、像面の弯曲、像の歪曲(3 次収差と呼ばれます)の 5 種類があります。

 また、これら以外に、光がプリズムで 7 色(日本以外の国では 6 色とも 5 色ともいいます)に分解されるような原因によって起こる収差を「色収差」といいます。


1.2. 虫眼鏡のレンズで写真を撮る !

図 1.

<図 1.> 虫眼鏡のレンズで写真を撮る実験の方法。
 虫眼鏡の光軸(レンズの中心軸)を、できるだけ正しくカメラボディのレフレックスミラー面の中心部に合わせ、虫眼鏡とカメラの距離間隔を調整すれば、どこかでピントが合います。

 まず、てっとり早いところで、簡単な実験をやってみましょう。
 虫眼鏡を右手に持ち、レンズを外した一眼レフを三脚などに固定します。虫眼鏡の光軸を、一眼レフのレフレックスミラーの中心部にできるだけ正しく合わせます。そして、虫眼鏡を前後に動かしてみると、どこかでピントが合うはずです。
 先に測定した、虫眼鏡の焦点距離と比較してみましょう。単純で、しかも大切な事実が分かります。
 つまり、無限遠(≒かなり遠い被写体)にピントを合わせるには、フィルム面と虫眼鏡の距離を、虫眼鏡レンズの焦点距離に等しくすればいいのです。そして、近い被写体にピントを合わせるには、その位置から虫眼鏡を徐々に遠ざけていけばいいわけです。
 ボディ内部に強い光が迷い込んで入っていなければ、そのまま写真撮影もできます。ものの試しに撮影してみるといいでしょう(絞り込み測光ができ、絞り優先AEモードを搭載したカメラならばAE撮影できます)。

 さて、ここまで来ると、後はだいたい想像できるはずです。
 写真レンズのように余分な光を遮る筒(鏡筒とか鏡胴といいます)があれば、虫眼鏡でも写真撮影ができるわけです。

 ボディキャップに大きめの孔を開け、光を通さない厚紙やプラスチックなどで自作してみましょう。虫眼鏡の焦点距離(下の<図 2.>の左図の青い←→で図示)に適合するよう鏡筒の長さを考え、伸縮可能にしてフォーカシングできるようにすれば、さまざまな対象を簡単に撮影することができます。絞り込み測光ができ、絞り優先AE機能を搭載したカメラならばAE撮影もできます。

図 3
写真 6.a.

<写真 6.a.>
ボディキャップ BF-1A の中心に大きな孔を開けたところ。
これが “虫眼鏡レンズ” のマウント部になります。

写真 6.b.

<写真 6.b.>
伸縮可能な鏡筒を作り、前後に虫眼鏡のレンズと<写真 6.a.>のマウント部を取り付けます。
鏡筒の長さに注意して設計します。

写真 6.c.

<写真 6.c.>
完成。
安直なレンズですが、絞り込み測光で絞り優先のオート撮影も可能です。

<写真 7.a.〜c.> 虫眼鏡レンズ(<写真 6.c.>)の撮影例。
収差が大きく残っているレンズですから、全体的にぼんやりした像になりますが、それなりの “味わい” が楽しめます。

写真 7.a.

<写真 7.a.>
無限遠

写真 7.b.

<写真 7.b.>
中距離(約 5メートル)

写真 7.c.

<写真 7.c.>
近距離(約 1メートル)

2. 焦点距離で何が変わる?

 一般的な35ミリ(135)判カメラの写真レンズは、大きく次の 4 種類に分類できます。
 まず焦点距離が一定(固定)のレンズを、その焦点距離の長短で 3 分類し、

  • 標準レンズ:焦点距離が、50ミリ 前後のもの。
  • 望遠レンズ:標準レンズよりも焦点距離の長いもの(より正確には、長焦点レンズで望遠比が 1 以下のものが望遠レンズです)。
  • 広角レンズ:標準レンズよりも焦点距離の短いもの。

そして、焦点距離が可変のレンズ(バリフォーカルレンズ)の代表として、

  • ズームレンズ:焦点距離を連続的に変化でき、変化させても焦点が移動しないレンズ。

があります。
 「どのレンズがよいか ?」という質問には、なかなか上手く答える方法がありません。要は、何を撮りたいか ? と、どう撮りたいか ? の問題ですから。
 というよりも、いろいろな焦点距離のレンズを使うことで、写真はまったくといっていいほど違ってきます。その不思議さを楽しんでいただければいいな…..、というのが私(久門 易)の思いです。

 さて、焦点距離の違いによる写真写りの違いを整理しましょう。

2.1. 焦点距離と画像の大きさ

 レンズの焦点距離が長くなればなる(≒望遠レンズになる)ほど、被写体をフィルム面に大きく写すことができます。どの程度大きくなるかというと、単純に焦点距離に比例すると覚えておけばいいでしょう(接写の場合や魚眼レンズは例外です)。
 例えば、100ミリ 前後の焦点距離の望遠レンズを使う場合、50ミリ 標準レンズの約 2 倍の大きさで写すことができます。200ミリ レンズでは、50ミリ の 4 倍に写すことができます。これで、だいたいの見当がつくはずです。

写真 8.a.

<写真 8.a.>
28mm

写真 8.b.

<写真 8.b.>
55mm

写真 8.c.

<写真 8.c.>
105mm

<写真 8.a.〜c.> 同じ被写体を同じ位置から撮影する例。焦点距離に比例してフィルム面に大きく写ります(写真 8.a.〜c. ではカメラのファインダースクリーンに大きく映ります)。

 ズームレンズでいう「ズーム比」は、焦点距離の大きい値を小さい値で割った数値です。例えば 35〜70mm ズームレンズのズーム比は、70 / 35 = 2 となります。つまり、このズームレンズでは、画像の大きさを最大で 2 倍(逆に考えると 1 / 2 倍)に変化(変倍)できるという意味です。

2.2. 焦点距離と画角

 前述したように、被写体は、焦点距離が長い(≒望遠レンズになる)ほど、大きくフィルム面に写ります。言い方を変えると、”焦点距離が長いほど、狭い範囲しか写せない” のです。
 逆に、焦点距離が短い(=広角レンズになる)ほど広い範囲を写せます。特に、焦点距離が広角レンズになるほど、焦点距離の違いはわずか数ミリであっても、画角はかなり違うということになるので、ちょっと注意が必要です。

 カタログ、使用説明書などに記される写真レンズの画角は、135判フィルムのタテ 24 × ヨコ 36 ミリの対角線上(約 43ミリ)に写る範囲を指しています。

焦点距離(ミリ) 20 24 28 35 50 85 105 135 180 200
対角線方向画角 94度 84度 74度 62度 46度 28度30′ 23度20′ 18度 13度40′ 12度20′
水平方向画角 83度 74度 64度 53度 39度 23度50′ 19度30′ 15度 11度30′ 10度20′
垂直方向画角 61度 53度 45度 37度 26度 16度 13度 10度 7度40′ 6度50′

 50ミリ レンズの画角は 46 度ですから、ちょうど直角 90 度の半分くらいです。これが35ミリ(135)判でいう “標準”。
 そして、直角 90 度をちゃんと写せる焦点距離は 22ミリ です。
 焦点距離の数値と画角の数値とに、感覚的なズレを感じるはずです。

<写真 9.a.〜c.> 被写体までの距離は同じまま、レンズの焦点距離を変えて撮影した例。
 焦点距離の違いによって、被写体の大きさだけでなく、写る範囲が変わります。

写真 9.a.

<写真 9.a.>
35mm
広い
小さい

写真 9.b.

<写真 9.b.>
80mm
←→
←→

写真 9.c.

<写真 9.c.>
200mm
狭い
大きい


2.3. 焦点距離と遠近感

 ”焦点距離によって画角が変わる” ということは、つまり、”広角レンズになるほど、遠くのものがより小さく写る” ということです。逆に、望遠レンズでは、近くも遠くもあまり大きさが変わらないように写ります。何が違って見えるかというと、次のように整理できるでしょう。

 広角レンズでは遠近感が誇張され、形が少し歪んでいるように写ります。逆に、望遠レンズでは遠近感はあまりありませんが、形が設計図のような理念的な正確さで写ります。カタログ写真撮影などに望遠レンズが用いられる理由はここにあります。
 こうした違いは、通常の使い方とは逆に、広角レンズでは近寄って、望遠レンズでは遠くから撮影すると大変よく分かります。ズームレンズは非常に一般的になりましたが、自分の足を使って被写体に近づいたり遠ざかったりすることで、写真のイメージがずいぶんと変わるのです。
 高価なレンズを使うことよりも、自分の脚を使うほうが、安上がりで、しかもはるかに意外性に富む写真が撮れたりする理由が、ここにあります。

<写真 10.a.〜c.> 広角←→標準←→望遠とレンズを交換し、顔の大きさを同じに揃えるように、フィルム面から被写体までの距離(撮影距離)を変えて撮影した例。
 レンズの焦点距離の違いによって、被写体との距離そして遠近感が変わっています。写真のイメージがずいぶんと変わるのです。

写真 10.a.

<写真 10.a.>
35mm
近い
誇張

写真 10.b.

<写真 10.b.>
80mm
←→
←→

写真 10.c.

<写真 10.c.>
200mm
遠い
正確

3. ちょっと変わった面白レンズ

 あまり一般的ではないかもしれませんが、使ってみると意外な楽しさが見えてくるレンズをいくつか紹介しましょう。
 使い方に少し面倒な点があるものもありますが、基本的にニコンの一眼レフの多くで使用できます。こうした風変わりなレンズを使ってみるだけで、一味違った写真が誰にでも撮影できるようになります(一部、使えないレンズとボディの組み合わせがあります。詳しくは、カタログか使用説明書などで確認してください)。

3.1. テレコンバーター

 ここで紹介するテレコンバーターは、主レンズ(マスターレンズ)とカメラの間に装着するだけで、焦点距離が 1.4 倍ないし 2 倍(=ニコンの現行商品ラインナップの場合)になるタイプのコンバージョンレンズです(マスターレンズのうしろに装着するタイプなので、リアコンバーターと呼ぶ会社もあります)。
 テレコンバーターは、凹の屈折力を持っていて単独では結像しません(このレンズ自体には焦点距離はありません)。カメラのAE機能はそのまま使えます(一部、使えないレンズとボディの組み合わせがあります。詳しくはカタログか使用説明書などで確認してください)。

 特徴は次の通り。

  • 実質的なレンズの明るさ/絞り値(F 値)が暗くなります。1.4 倍モデルで 1 段分。2 倍モデルでは 2 段分。
  • 主レンズの被写界深度目盛りは、そのまま目安として使用できます。
  • 最短撮影距離は変わりません。つまり、主レンズの 1.4 倍ないし 2 倍の拡大撮影ができます。

3.2. レフレックスレンズ

 屈折光学系の大部分を大小 2 枚の凹面鏡に置き換えることで鏡筒を短くし軽量コンパクトに設計できた望遠レンズです。天体望遠鏡では、よく知られていますね。
 色収差の発生しない凹面鏡の反射光学系と、球面収差などの補正に有利な屈折光学系のそれぞれの長所を活かした光学系です。分厚いガラスで構成する屈折光学系のような重さもなく、また、色収差を抑えることができ、非常に小型にできるわけです。慣れれば超高感度フィルムとの組み合わせで晴天下の手持ち撮影も可能でしょう。

 特徴は次の通り。

  • ニコンの現行商品「レフレックスニッコール 500mm F8 <New>」などのほとんどの反射望遠レンズは、絞りを固定しています。このため、被写界深度のコントロールなどはできません。AE 撮影は、絞り優先モードで可能です。
     一眼レフカメラボディのシャッタースピードの連動範囲を超えてしまい露出オーバーの場合には、必要に応じて、NDフィルターをレンズに挿入するか、フィルムをより低い感度のフィルムに交換しなければなりません。
  • 点のボケはドーナツ形に、線のボケは二線状になります。
  • 「レフレックス ニッコール 500mmF8<New>」では、最短撮影距離が 1.5m。そのままで接写のような撮影も可能です。

<写真 11a.〜e.>「レフレックスニッコール 500mm F8<New>」の撮影例

写真 11a

<写真 11.a.>
50mm レンズで撮影。
画面中央にサギがいるのがわかるでしょうか ?

写真 11b

<写真 11.b.>
500mm F8レンズで撮影。
サギがはっきり見えますね。
50mm レンズの約10倍の大きさでフィルム面に写っています。

写真 11c

<写真 11.c.>
500mm F8 に 2×テレコンバーターを付けて撮影。
(実質的には 1000mm F16 のレンズになり、ヤワな三脚ではカメラブレが非常に目立ちます。
さらに “F16固定絞り” で、ピント合わせも困難です。
被写体の明るさやフィルム感度によっては、被写体ブレが大きく写ります。慎重に撮影しなければなりません)

写真 11d

<写真 11.d.>
最短撮影距離は1.5メートル ですから、このような接写も可能です。
驚くべき便利な性能と言っていいでしょう。

写真 11e

<写真 11.e.>
後方にドーナツ状のボケが見えます。
これが反射望遠レンズの大きな特徴です。

3.3. フィッシュアイ(魚眼)レンズ

 フィルム画面内に、おおよそ180度の画角を写すことができるレンズを魚眼レンズといいます。ほとんどの魚の目は、両目で360度(片目で180度)の視界があるところから名付けられたようです。魚の気分が味わえるレンズかどうかは、私は知りません。
 ニコンの現行商品には、フィルムの対角線上に画角180度を写すことができる(=対角線魚眼レンズ)「AI AF フィッシュアイニッコール16mmF2.8D」があります。

 販売が既に終了したフィッシュアイニッコールレンズには、135判フィルムであればその上に約 23ミリの円形に画角 180 度を写しこむことができる(円周魚眼レンズ)「AI フィッシュアイニッコール 8 mmF2.8S」がありました。
 さらには、画角 220 度(=人の両眼の最大視野は約 180 度と言われています。この人間の能力を大きく超えた範囲を一眼レフカメラのファインダーを通して眺め、一枚の平面の写真にできます! ロマンですな〜)を撮影できる「AI フィッシュアイニッコール 6mmF2.8S」もありました。

 デジタルカメラの世界では、ニコン「COOLPIX 995」、ニコン「COOLPIX 990」、ニコン「COOLPIX 950」、「COOLPIX 910」などのレンズの前枠にネジ込んで装着する
(「COOLPIX 700」に装着するときには「ステップアップリング UR-E1」が、
 「COOLPIX 880」に装着するときには「アダプタリング UR-E2」が、
 「COOLPIX 885」に装着するときには「アダプタリング UR-E4」が、
 「COOLPIX 5000」に装着するときには「アダプタリング UR-E6」が、要ります)
専用アクセサリーで、35ミリ(135)判換算で 8 ミリ 相当の円周魚眼レンズにするフロントコンバーターの「フィッシュアイコンバータ FC-E8」が、1998(平成10)年に発売されて以来人気を呼んでいます。

 いずれも、超広角レンズとは異なり、画面中心を通らない直線は歪んで写ります。

写真 10

<写真 10.>
対角線魚眼レンズである「AI AF16mmF2.8D」の撮影例。
画面の周辺は大きく歪んで写ります。

写真 11

<写真 11.>
「AI AF 16mmF2.8D」の撮影例。
両目で見えるほとんど全ての範囲が一枚の写真に写ります。

写真 12

<写真 12.>
「COOLPIX910」に、「FC-E8」を装着した撮影例。
画角約 183 度までの魚眼ズームレンズになります。

3.4. PCレンズ

 ”PC” とは、パースペクティブ コントロールの略。つまり、遠近感を調整できるレンズと考えればよいでしょう。
 「PC ニッコール 28mmF3.5」の場合、レンズをフィルムに対して平行に各方向に移動(約11mm)できるような仕組みを備えています。大判カメラでいうアオリ(シフト、ライズ / フォール(ドロップともいいます))* が可能になるわけです。
 建築物の撮影では、垂直の線を全て平行に写したり、障害物を避けて撮影したり、鏡への写り込みを隠したりもでき、写真をつないで作るパノラマ写真も美しく仕上げることができます。

 「PC Nikkor」の絞りの操作はプリセット方式で、一般の完全自動絞り方式のレンズとかなり異なります。少し慣れが必要でしょう。
 また、アオリ操作をすることで多少画像が暗くなりますので、露出調整にも注意が必要です(一部、使えないレンズとボディの組み合わせがあります。詳しくはカタログか使用説明書などで確認してください)。

<写真 13.a.〜c.>「PC ニッコール 28mm F3.5」の撮影例。

写真 13a

<写真 13.a.>

写真 13b

<写真 13.b.>

写真 13c

<写真 13.c.>

図3

フィルム面を垂直にしたまま、レンズを平行移動して(アオって)(ライズ)撮影。
垂直の線を全て平行に写すことができ、まるで設計図のような形で写せます。

レンズをアオらず、そのまま撮影。
通常の28mm広角レンズで撮影するのと同じ写り方です。

レンズを<写真 13.a.>とは逆方向にアオって(フォール)撮影。
遠近感をさらに誇張して写すことができます。

注:「アオる」
 「レンズ光軸が撮影画面の中心部でフィルム面と直交する」という関係を崩すことを総称して「カメラムーブメント」といいます。
 その中には、

  • レンズ光軸とフィルム面の直交という関係は崩さないで、レンズ面(またはフィルム面)を互いに平行移動させる「ディス プレースメント(シフト、ライズ / フォール (ドロップともいいます))」と、
  • レンズ光軸とフィルム面の直交関係を崩す、スイングとティルト
という、2 系統の操作が含まれます。
 厳密には、前者の「ディスプレースメント」のみが「アオリ」なのですが、日本では、両者を混同して「アオリ」と総称することがあります。

 レンズって本当に不思議でしょう。詳しく紹介すると、いつまで経っても終わりませんので、今回はこの辺で終わり。

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