第5 回目 時間を制御する「シャッター」

似顔絵 写真を撮る時に「シャッター(レリーズ)ボタン」を押すのは常識ですよね。シャッター(Shutter)とは、商店やガレージのシャッターと同じ意味の英語ですから、カメラのシャッターもなんとなくイメージできるはずです。
 では、シャッターをレリーズする(=解放 or 開放する)ボタンを押すことで、いったいカメラの中では何が起こるのでしょうか ?
 さらに、一般的な一眼レフカメラでは「シャッター速度」を調速・選択することができますが、そうすることで写真写りの何が変わってくるのでしょうか ?

1. シャッターって何 ?

写真 0.

 カメラのシャッターとは、フィルムに当たる光をふだんは遮り、一定時間だけ通過させるための開け閉めできるフタのようなものです。
 大昔のカメラ(写真提供:日本カメラ博物館)では、レンズの前にフタを付けておき、撮影する瞬間にフタを取って、「ヒー、フー、ミー……」と時間を数え、適切な時間が過ぎたらフタを閉めて覆うようなことをやっていました。もっとも、こんな呑気なことができたのは、フィルムの感度がとてつもなく低く、昼間でも数十秒もの露光時間が必要だったからです(手作業による開閉時間の誤差など、数十秒もの露光時間の中ではとるに足らないのです)。
 余談ですが、現在でも天体写真を長時間露光で撮影するときなどでは、こうした方法をとることも。

 しかし、フィルムの感度がとても高くなった現在では、こんな悠長なことはできません。最近のカメラでは、数秒から数千分の 1 秒以上といった非常に短い時間だけ、シャッターが正確に開いて閉じるという、ほとんど神業のようなことがおこなわれています。

 現在のカメラに使われているシャッターは大別して、「レンズシャッター」と「フォーカルプレーンシャッター」という二つの種類があります。

 「レンズシャッター」は、レンズの近くにシャッター機構を置くもので(絞り機構を兼用しているものもあります)大判カメラや中判カメラ、コンパクトカメラのほとんどに採用されているシャッターです。
 一般には、レンズの内部、前方あるいは後方にシャッター羽根などの遮光機構を備えつけ、この羽根などの開閉で露光時間を調整します(レンズ付きフィルムに使われているのもレンズシャッターですが、それらはシャッター速度を 1/100 秒程度の単速に固定しており露光時間の選択・調整はできません)。
 なお、レンズにシャッターを組み込む / 組みつけるため、レンズ交換を可能にするためには別の遮光板などが必要になります。このためレンズ交換可能な35mm(135)判カメラには、現在ではほとんど使われていません。

 一方、現在の35mm(135)判とIX240判一眼レフに主に使われているシャッターは、「フォーカルプレーンシャッター」と呼ばれるものです。少し詳しく説明しましょう。

1.1. フォーカルプレーンシャッターの仕組み

 「フォーカルプレーン(focal-plane)」とは焦点面の意味で、つまりフィルムの直前にシャッターを置くタイプです。フィルムのすぐ前にシャッターがあり、レンズを交換するときに基本的には遮光の心配はありません。
 一般的なフォーカルプレーンシャッターは、光を通さない 2 枚(あるいは 2 組の羽根)の幕でできています。そしてこれら 2 枚 / 組の幕を、時間をずらして順に走らせることで露光時間を調速します。先に走る方を「先幕」(あるいは「前幕」)といい、後から走る方を「後幕」といいます。
 一眼レフの裏蓋を開けた時に見えるのが、このシャッター幕です(決して触ってはいけません)。

 シャッター幕が横方向に走るタイプを「横走り(左右走行式)フォーカルプレーンシャッター」と言います。
 横走り式のフォーカルプレーンシャッターでは典型的な「ドラム型シャッター」では、これら 2 枚の幕はゴム引きの布(羽二重の絹布など)あるいは金属(ステンレス、チタンなど)の薄膜でできています。

 シャッター幕が縦方向に走るタイプを「縦走り(上下走行式)フォーカルプレーンシャッター」と言います。
 まれに前述の 2 枚の幕の「ドラム型シャッター」もありますが、細長い金属(あるいは炭素繊維複合材やプラスチックなど)製のシャッター羽根を数枚づつ綴って、先幕と後幕の 2 組としたタイプ(「スクエア型シャッター」といいます)が最近の一眼レフカメラでは主流です。
 「ニコレックス F」に搭載された「コパル スクエヤ (I 型)」シャッターユニットがその名の由来である「スクエア型シャッター」は、先幕と後幕それぞれに、細長い羽根を何枚も少しづつズラして重ねたような作りになっていて、ちょうどエレベーターのドアを寝せたような状態で縦方向に開閉するようになっています。

 いずれにしても、非常にデリケートな部分ですから、くれぐれも絶対に触らないようにしてください。

写真1.a.

<写真 1.>
横走りフォーカルプレーンシャッターの例(ニコン F2)
先幕と後幕の 計 2 枚の幕は、チタン製

写真1.b.

<写真 2.>
巻き上げの途中に、先幕と後幕の境目が見えます

写真1.c.

<写真 3.>
縦走りフォーカルプレーンシャッターの例(ニコン F4)
(先幕と後幕の 2 組の幕は、各々アルミ合金製の羽根 2 枚と炭素繊維複合材料製の羽根 2 枚の計 4 枚で構成)

1.2. シャッターレリーズボタンとシャッター

 シャッターレリーズボタンを押すことで、シャッターが開き、そして閉じます。その間、フィルムに光が当たります。フィルムが露光される。つまり写真が撮れるわけです。
 一眼レフのファインダーを覗きながら、「今、この瞬間だ !」といった決定的瞬間を撮影したいとは、誰でもが思うはずです。しかし、これがなかなか難しいですね。まあ、基本的には「今、この瞬間か、あるいはもうちょっと先か ? 」と迷う心が一番の問題なのですが、”決定的瞬間” を捉えるために、一眼レフ特有のデメリットの存在も念頭においてもらいたいと思います。
 一つには、一眼レフカメラは内部のレフレックスミラーによってファインダー像を観察するというややこしいシステムを採っていることがあります。つまり、シャッターボタンを押すと、まずミラーを跳ね上げて、それからやっとシャッターの先幕が走りはじめるのです。機種によっても異なりますが、この間、約 1 / 20 秒(=50ミリ秒)程度は必要です(「半透明のハーフミラーを固定した一眼レフカメラならば(測距・測光を終えたあとの)シャッターレリーズボタンを押してからシャッター幕が走るまでの時間差(タイムラグ)が短い」といわれるのは、ここに理由があります)。
 もっと言えば、人がシャッターボタンを押そうと頭で決めて、指先が動きだすまでの時間だって、速い人でも数十分の一秒程度は必要らしいですから、とにかくは一呼吸早めのシャッター操作は必要です。

 そしてもう一つ肝心なこと。それは、一般的な一眼レフカメラでは、シャッターが開いている瞬間、つまり撮影されている瞬間の画像がファインダーでは確認できません。シャッターが開いている瞬間は、ファインダー像を得るためのレフレックスミラーが跳ね上がっていて、もとに復帰(クイックリターン)するまで時間がかかるからです。
 一眼レフカメラで撮影していて、ファインダーがまばたき(ウインク)をするように感じるのは、このためです。
 もっとも、一般的な撮影で、これらが問題になることはほとんどありませんが、頭の片隅にでも覚えておくと、本当の「決定的瞬間(by アンリ・カルティエ・ブレッソン)」が撮れることが多くなるかも……。

<写真 4.a.〜h.>シャッターレリーズボタンを押してから、シャッターが開くまで……。

写真 4.a.

<写真 4.a.〜b.>シャッターレリーズボタンを押した瞬間。
レフレックスミラーによってファインダー像を観察できます。

写真 4.b.
写真 4.a.

<写真 4.c.〜d.>レフレックスミラーが跳ね上がっていく瞬間。
この時、ファインダー像は暗転し見えなくなります。

写真 4.b.
写真 4.a.

<写真 4.e〜f.>ミラーが跳ね上がり終わった瞬間。シャッターの先幕の羽根が見えます。
この時も、ファインダー像は見えません。

写真 4.b.
写真 4.a.

<写真 4.g〜h.>シャッターの先幕が走行して、フィルムに露光している瞬間。
この時も、ファインダー像は見えません。
この後、後幕が走行しシャッターは閉じ、レフレックスミラーは元の位置に自動復元します。

写真 4.b.

2. シャッター速度で何が変わるのか ?

 シャッター速度(スピード)が、写真写りに大きく影響することは、ご存じのはずです。ここでは、まずシャッター速度とは何か ? そしてそれを変えることで、写真写りの何が変わるのか ? を簡単に整理します。

 [P] プログラムモードなど多くの人々が使う全自動モードでは、カメラが自動的にシャッター速度を設定します。自分でシャッター速度を選択するには、シャッター速度優先モード([S]モード(メーカーによっては[Tv]モード)か、[M]マニュアルモードで撮影します。

2.1. シャッター速度って何 ?

 カメラのシャッター(速度)ダイヤルや液晶ディスプレイに表示されている(機種によって異なります)数値がシャッター速度です。つまり、1 秒より速いシャッター速度では、(1 / 表示されている数値)秒だけシャッターが開き、フィルムに光が当たります。「500」の表示なら、1 / 500 秒だけシャッターが開いているわけです。
 シャッター速度が1秒以上の場合は、ダイヤル式なら一般に別色で表示され、液晶表示なら S(second =秒)の文字が出ます。
 一般的なカメラでは、シャッター速度は次のように設定できます(機種によって、これらの中間速度を設定できるものや、無段階に自動調整するものも)。

….4 – 2 – 1 -1/2 – 1/4 – 1/8 – 1/15 – 1/30 – 1/60 – 1/125 – 1/250 – 1/500 – 1/1000 – 1/2000 – 1/4000 – 1/8000(秒)……

 基本的に、半分に、そのまた半分に(逆に見れば倍々の “倍数系列” に)なっていることにお気づきでしょう。この半分半分(あるいは倍々)の一つのステップを「1 段」、二つ分なら「2 段」などといいます。写真の露出を考える上で大切なことなので、覚えておいてください(詳細は、6 月の 8 回目「「露出」の基礎知識」で紹介します)。

 シャッター速度表示(指標)には、こうした数字以外に T、B、X といった表示(指標)もあります。

  • T(タイム)
     シャッターレリーズボタンを押すと先幕が開きます(シャッターボタンを戻してもそのままの状態が続きます)。そして、もう一度ボタンを押すことで(機種によってはシャッターダイヤルを回転することでも)後幕が走って閉まります。
     数分といった長時間露光に便利です。
  • B(バルブ)
     シャッターレリーズボタンを押し込んでいる間だけ、シャッターが開きます。シャッターボタンを戻すとシャッターが閉まります。数秒といった長時間露光に便利です。
  • X あるいは “イナズマ” マーク(シンクロ同調シャッター速度 / X 接点)
     スピードライト(エレクトロニックフラッシュとも呼びます)で撮影する際に選択できる最も速いシャッター速度です。
     シャッターの構造によって同調(シンクロナイズ)できるシャッター速度の上限が異なります。スピードライト撮影は、この X 速度以下の遅いシャッター速度でおこないます。なぜ、これよりも速いシャッター速度ではスピードライト撮影が上手くできないのか ? 少し詳しく説明しましょう。

     フォーカルプレーンシャッターでは、先幕と後幕の2 枚 / 組の幕を時間をずらして走らせてシャッター速度を調整します。誤解しやすいのですが、現代のカメラではシャッター幕の走行速度(=幕速といいます)を変えて露出時間を調整することはまずやりません。幕は画面を千分の数秒(=数ミリセコンド)の、ほぼ均一な速度で横切ります。
     では何を変えるのか ? というと、先幕と後幕のスタートの時間差です。つまり、先幕が走りだしてから、設定したシャッター速度の時間だけ遅らして後幕を走らせるわけです。
     シャッター速度をより速く設定すると、前幕(先幕)の後端と後幕の先頭の間の空隙は24×36ミリ(=135判での数値)から徐々に狭まり、ついには細長いスリット状を形成してフィルムの前を走ることになります(イラスト1. 参照)。

     このような速すぎるシャッター速度でスピードライトを同調・発光して撮影するとどうなるでしょう ? スピードライト光は一瞬だけ光る閃光ですから、135判の場合だとその画面(24×36ミリ)の一部分(スリットの部分)しか露光できないのですね。ですから、シャッターが全開になっている瞬間に合わせてスピードライトを同調・発光しなければならないわけです。
     このようにシャッターが全開になる瞬間があるシャッター速度のなかで最も速い速度設定が X(シンクロ同調シャッター)速なのです。

     ここ二十年来のカメラと専用スピードライトの組み合わせでは、充電完了の電気信号をスピードライトから受け取ったカメラは、X 速を超えない範囲でシャッター速度を自動設定する機能が普及しています(機種によって異なります)。
     ですので、シャッター速度を撮影者が自分で決めてスピードライト撮影する場合には特に注意を要します。

図 1.

<イラスト1.> シャッター速度が「遅い」場合と「速い」場合の
シャッター幕の動き(図は横走りタイプ)。
「赤」が先幕、「青」が後幕の動き。
「赤」と「青」のあいだのスキマというか、空「白」に注目 !

2.2. シャッター速度と写真の明るさ

 シャッター速度を遅くすればするほど、光がフィルムに当たる時間(露光時間)は長くなります。つまり、フィルムに当たる光量が多くなり、明るい写真が仕上がるようになります。これが基本です。
 よく、「暗い場所では写真は撮れない」と思い込んでいる人がいますが、これはあまり正しくありません。いくら暗い場所でも(もっとも人の眼で見えるくらいの明るさは必要ですが)、シャッター速度を極端に遅くできれば、いくらでも明るい写真を撮ることができます。淡い月の光でもきれいな風景写真を撮ることができます。懐中電灯の光でも写真を撮ることができます。

 もちろんのことですが、このような場合には、被写体は動かないものでなければなりません。
 また、カメラは三脚などでしっかり固定し、リモートレリーズあるいはセルフタイマーなどでシャッターを操作しなければなりません。しかし、たったこれだけで、夜景など暗い被写体を非常に美しく撮影できます。一度試してみてください。
 街の明かりなどの人工光が画面の中に入っている場合には、カメラの露出機構の指示よりも露出をかなりオーバー目に(=シャッター速度を長く)して撮影するのがコツ。というよりも、見た目よりも明るく(=露出オーバーに)写った夜景は、意外なほど美しく見えます。
 余談ですが、フィルムは、長時間の露出をかければかけるほど、かけた時間の割合に応じては写らなくなってしまう(=実効感度が徐々に低下していく「相反則不軌」現象)ので、かなりオーバー目の露出時間をかけるのは、理にかなった “コツ” なのです。

<写真 5.a.〜c.> シャッター速度を遅く設定すれば、暗い夜景も明るく写せます。

写真 5.a.

オートで撮影

写真 5.b.

絞りは変えずに、シャッター速度を 2 倍(1段分)遅く

写真 5.c.

絞りは変えずに、シャッター速度を 4 倍(2段分)遅く

2.3. シャッター速度とブレ

 シャッター速度を遅くしていっても写真は写ります……。でもブレますね。
 被写体が動いていれば、被写体がブレて写ります。
 カメラが動いた場合には、画面全体がブレて写ります。
 これらのブレが見えない写真を撮影するには、被写体の動きを固定したり、カメラもしっかり固定する必要があります。
 特に撮影倍率が大きい撮影(ex. 望遠レンズを用いた撮影、接写撮影など)ほど、ブレが大きく目立ちます。カメラの保持にも注意し、一脚や三脚などを使うなど工夫したいところです。
 手持ち撮影でブレが目立たないとされるシャッター速度設定の一つの目安として、「(1 / 焦点距離mm)秒以上で撮る」というのがあります。例えば「200mm 望遠レンズでは、1 / 200 秒以上で撮影すれば、まあ大丈夫かな」というわけです。正直なところを言えば、私(久門 易)はこれよりも数段速いシャッター速度で撮らないとダメなようなのですが……。
 とにかく、できるだけ速いシャッター速度で撮影すれば、ブレのない、一瞬を止めたような写真を撮ることができます。

<写真 6.> シャッター速度によって、被写体の動きの描写は変わります。

写真 6.a.

1 /1000 秒

写真 6.b.

1 / 60 秒

写真 6.c.

1 / 4 秒

3. シャッター速度設定の応用技

 シャッター速度を調整することで撮影できる、ちょっとおかしな写真を紹介します。きっと「なんだコレ !」と思うでしょうが、ホンモノ(!?)ではありません。どのようにして撮ったのか考えてみてください…..。

 こうした写真を撮るには、露出を正しく合わせるにはフィルム感度や絞り値などにも注意する必要がありますが、まずはカメラを、[S] シャッター速度優先モード(メーカーによっては、Tv モードとも呼びます)にセットして、チャレンジしてみてください。はじめは上手く撮影できないことも多いでしょうが、失敗しても諦めないでほしいと思います。

3.1. 長時間露光

 2.2. で述べたように、夜景や暗い場所での撮影では、シャッター速度を遅くすればかなりのところまで明るい写真を撮ることができます。
 ただし、ある程度以上暗い場合には、露出計が機能しないことがあります。この場合には、露出(シャッター速度)を極端に変えてテスト撮影をしてください。前述したように、シャッター速度は倍々に変えるのが基本です。2 分の次は 4 分、その次は 8 分という具合です。もちろん、三脚とリモートレリーズ(あるいはセルフタイマー)の使用が基本です。

 被写体の動き(動感)の表現には、被写体の動きの速さに合わせてシャッター速度を遅くします。条件によってさまざまですが、車のスピードなら 1 / 125 秒、人が歩くスピードなら 1 /15 秒を一つの目安にしていいと思います。
 このような場合、ファインダーの中で被写体を追いかけるように撮影すれば、背景は流れて被写体だけは止まって写ります。この技法を「流し撮り」などといいます。

 川の流れなどを表現したい場合には、1 / 4 秒以下でいいでしょう。

 明るい場所で長時間露光をおこなう場合には、低感度のフィルムを用いたり、NDフィルターを用いるなどしないと露出オーバーになることがあります。注意を(APS(IX240)判カメラで、MRC機能搭載の機種ならば、撮影途中でもフィルムを交換できて便利です)。

写真 7.

<写真 7.> “ろくろ首”

写真 8.

<写真 8.> “エクトプラズム”

3.2. 多重露出(露光)

 多重露出(露光)機能搭載のカメラなら、簡単に画像を重ねて撮影することができます。こうした機能がついていないカメラでも、少し面倒ですが、多重露出をする方法がある場合もあります(詳しくは「使用説明書」で確認してください)。

 多重露出とはつまり、同じフィルムのコマ上に 2 回以上露出を与えるものです。いい方を変えれば、同じフィルムのコマ上でシャッターを 2 回以上開けるということです。操作自体はそんなに難しいものではありません。
 基本的に自動露出だけでは上手くいきませんが、単純にシャッター速度を足し算するような考え方で O.K.です。例えば、「1 / 250 秒で 2 回の多重露出」は、1 / 250 秒+ 1 / 250 秒=「1 / 125 秒の露出」(1 回)分と同じことになります。
 ネガフィルムを使うなら 1〜 2 段の露出オーバーはさして大きな問題ではありませんから、割と気軽におこなえます。自動露出で 2 回撮影する場合は1段の露出オーバー、4 回撮影して 2 段の露出オーバーになります。

 花火の撮影でも多重露出は極めて有効です。ISO 感度 100 のフィルムなら、絞りをf/8 程度にし(=絞りで花火の明るさが決まります)、シャッター速度は 1 秒程度(=シャッター速度で花火の流れの長さが決まります)で撮影します。これで多重露出すれば、いくつもの花火が同時に上がったような写真になります。背景はほぼ真っ黒の空ですから、B(バルブ)で長時間露光をしても O.K. です。
 多重露出で良い結果を得るには、構図のどの部分に何を写したのかをしっかり把握・記憶しておく必要があります。でも、まあ、いろいろ試しにやってみると意外な発見があるものです。
 気軽にチャレンジしてください。

写真 7.

<写真 9.> “千手観音”

写真 8.

<写真10.> “背後霊”

 ちょっと駆け足になってしまいましたが、今回はこれで終わり。とりあえず [S] シャッタースピード優先モード(あるいは [M] マニュアル露出)でいろいろ試してみてください。
 何にしても、いい結果を得るには「運」か「慣れ」が必要です。失敗しても諦めないで、何度でもチャレンジするのが一番の早道でしょう。というよりも、失敗から学ぶ経験によってのみ、自分でしか撮れない写真が撮れるようになるのです。
 「失敗せずに撮れる写真は、基本的に誰にでも撮れる写真だ」というような気もします。

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