第8 回目 「露出」の基礎知識

似顔絵 写真の技術の中で、もっともわかりにくいのが「露出」でしょう。
 なぜかというと「露出」には、1.)被写体の明るさ、2.)フィルム感度、3.)絞り(値)、4.)シャッタースピード、という全く異なる 4 つの要素が関係してくるからです。
 また、人によって「適正露出」という言葉の使い方が違うことすら稀ではありません。
 しかし、「『露出』によって写真の全体的な “白さ黒さ” が変わる」と考えれば、後の話は意外に簡単です。今回は、「露出」を理解しまくりましょう。

1. 被写体の明るさに対応する

 レンズ付フィルムは、カメラ自体で露出を調整することができません。でも、意外なほどきれいに写りますね。なぜでしょうか ?
 第一に言えるのは、明るい場所で撮るのが基本で、暗い場所ではフラッシュを光らせる(一般的なレンズ付フィルムでフラッシュ撮影可能な範囲は 1〜4 メートル 程度です)という簡単な約束事があり、これをみなさんが守っているからです。
 第二に、レンズ付フィルムに使われているのはカラーネガフィルムだからです。カラーネガフィルムでは、撮影時のプラス(オーバー)・マイナス(アンダー)2 段程度の露出の違い、とりわけ露出オーバーはプリント時に軽く補正できます(詳細は次回に説明します)。
 これら二つの理由から、レンズ付フィルムでは露出に失敗したプリントができあがることがほとんどないわけです。

 一眼レフカメラも、国産の現行機種のすべてが TTL 露出計を内蔵し、さらにAF一眼レフであればそのすべてが自動露出(AE)機構を搭載していますから、多くの場合、問題なく撮影ができます。
 しかし、失敗したり、思ったように撮れないことをよく経験するはずです。なぜでしょうか ?
 それは、一眼レフカメラの側で調整できる自由度が大きいからです。自由度が大きい分、レンズ付フィルムでは撮れない対象を撮影することができます。しかし、その分だけ約束事が煩雑になりますから、失敗したり、思いどおりに写らなかったりすることも多くなるわけなのです。

 ここで、露出の何たるかを知り、その妙を楽しむためには、第一にカメラのオート(自動露出)機能だけに頼らず自分の意思で調整すること、第二にフィルムはリバーサルフィルムを使うのが基本であること、を確認しておきます。
 なぜならば、自分の意思で写真の “白さ黒さ” を変えるのが露出調整の楽しさであり、その結果をより正しく反映するフィルムがリバーサルフィルムだからです。

1.1. 昔の露出の合わせ方

 大昔の人々はどのようにして露出を合わせていたのでしょうか ? それについて少し見てみましょう。意外なほど素朴な方法ですが、目的が被写体の明るさを正しく知ることであることは、現代の露出計内蔵カメラや単体露出計にも通じています。被写体の正しい明るささえ判れば、後はフィルム感度に合わせて、絞りとシャッタースピードを調整すればよいからです。

1.1.1. 感光紙光量計(アクチノメーター)

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 これはイギリス製のワトキンス・ビーメーター(1902年頃)です。
 懐中時計のようですが、時計のような複雑な装置ではありません。中には、POP(Printing Out Paper=光に当てるだけで黒くなる(印画)紙)と呼ばれる印画紙が入っています。
 印画紙を少しづつ回転して、まだ感光させていない部分を使っていくことで十数回分の測定ができます。使い切った印画紙は新しいものに交換します。
 時計でいうとちょうど 6 時にあたる部分に小さな円形の窓があり、左右二つに分割されています。右側のグレーの部分が標準濃度で、左側の窓から POP 印画紙を感光させ、その濃さがこの標準濃度の灰色になるまでの時間を計って、その場所の明るさを割り出す仕組みです。

1.1.2. 視覚式露出計

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 ドイツ製のディアフォト(1924年頃)です。下の部分に濃淡のグラデーションのついた窓があり、その中にさらに黒い小さな円形の窓が見えます。この窓から被写体を覗きながら、グラデーションを回転し、被写体が黒く見えなくなるところで止めます。そうすると左上の目盛りに適当な露出値が得られる仕組みです。
 普通に考えても判るように、人の目には「順応」というすぐれた機能がありますから、なかなか安定した測定ができません。あまり深く考えずにやっているうちはいいのですが、いざじっくり見つめてしまうとわけが判らなくなってしまいます。

1.1.3. 露出計算尺

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 日本製の関式サロン露出計(1940年頃)です。
 フィルム感度、季節、時刻、天候、あるいは電球のワット数などをダイヤルで合わせると、適正な露出値が得られる計算尺です。
 カメラのアクセサリーシューに取り付けられるモデルなどさまざまなタイプがあり、1980年頃まで製造されていました。現在でもフィルムの紙箱あるいは使用説明書にも、お天気マークごとに露出値の一例を示した表が載っているものがありますが、これを高度に発達させた回転式早見表といえるでしょう。
 現代の単体露出計にも、こうしたダイヤルがついた機種があります。意外なことに、デジタル表示のタイプよりも、こうしたアナログ形式のほうが、露出値の意味、そしてシャッタースピードと絞り(値)の組み合わせの関係が直観的によく判ります。

1.2. フィルム感度、絞り、シャッタースピード

 一般に、昼間の直射日光の明るさ(照度)は10万ルクス(lx)といわれます。これが闇夜になると、0.0003 ルクス程度になるそうです。
 私たちの眼は、10万ルクスと0.0003 ルクスのいずれにも「順応」し、モノを見ることができます。この照度差を単純に計算すると、約 3 億倍以上です。しかしこれを写真でいう段数(対数)に置き換えると、約28段分(約3億≒2の28乗)もの差となります。
 ここで、1.)フィルムの感度をISO 25〜3,200とすれば、この差は 7 段。また、2.)多くのレンズの絞りの調整範囲は、約 7 段分です。これら1.),2.)を合わせると計14段となって、目の順応の幅の約半分に相当します。
 更に、3.)シャッタースピードを 4〜1/4,000 秒の範囲で変化できるとすれば、この調整範囲は14段です。
 ですから、1.)フィルムの感度と、2.)絞り、3.)シャッタースピードの全てを端から端まで変化することで、やっと人の眼の「順応」のワイドレンジに対応できるわけです。
 もちろんの事ですが、4 秒などという長時間露光をした場合、動いている被写体は上手く写りません。ここに人の眼の凄さを感じます。しかし、これを逆に言えば、静止した被写体ならば、何分とか何時間といった長時間露光をおこなうことで、原理的にはいくらでも暗い被写体を撮影できるのが写真の凄さでもあるわけです。

 さて、フィルム感度(第3回目)、絞り(第4回目)、シャッタースピード(第5回目)のそれぞれについては、既に述べましたが、ここで今一度確認していただきたいのは、1)フィルム感度の一段分、2)絞り(値)の一段分、3)シャッタースピードの一段分、の変化は、基本的に露出に対して同じ効果をもつことです。
 例えば、
1. フィルム感度を一段高くする(ex. ISO100 を200 にする)ことと、
2. 絞りを一段開ける(ex. f16 を f11 にする)ことと、
3. シャッタースピードを一段遅くする(ex.1 / 125 秒を 1 / 60 秒にする)こと、
は、仕上がりの写真の濃さ(”白さ黒さ”)においては、同じ効果を持ちます。
 これを「相反則」といい、露出値を決める上での基本となっています。

相反則不規

 前回までにも時折出た用語ですが、フィルムに当たる光が非常に明るい場合や、逆にかなり暗い場合には、相反則が成立しないことがあります。
 これを「相反則不規」といいます。これは、明るさや暗さに対するフィルム固有の使用限界での特性です。
 一般的な撮影では、まず問題になることはありませんが、夜景の撮影や、厳密な色や階調再現を求める場合には、時折問題になります。露出や色フィルターによる補正によって、あるていど改善します。
 詳細は、フィルムのデータシートなどをご覧になってください。

2. 光を計る

 現在のカメラの内蔵露出計、単体露出計は、光の強さに比例して電気的な性質が変化する「受光素子」を使って被写体の明るさを測定しています。
 受光素子にはいくつかのタイプがありますが、現在の主流は SPD(シリコン・フォト・ダイオード)と呼ばれる半導体です。応答速度が速く、また光量に正しく比例した特性を示す、非常に優秀な素子です(人間の眼には見えない赤外線を感じやすいのが弱点といえば弱点でしょうか)。
 ここでは、カメラの露出計の基本的なつくりと、一眼レフの測光モードについて簡単に整理します。それぞれの特徴を理解することで、写真の露出を思いどおりに楽しめるようになるはずです。

2.1. 一眼レフカメラは反射式露出計

 光源から放射される光を、物体の表面が反射した、その光によって、私たちは物体を見ることができます(光源を見る場合には、放射された光を直接見ることになります)。
 これは、写真も同じです。物体が反射(放射)している光によって、写真は写るのです。ですから、物体が反射している光の強さ(量)を測定すれば、露出値が判ります。これが、反射式露出計の原理です。そして、カメラに内蔵された露出計は全てがこのタイプです。

入射式露出計

 反射式露出計以外に、物体に当たる光を直接測定する露出計があります。これを入射式露出計といいます。プロやハイアマチュアが、カメラとは別の単体の露出計を用いて光を測定するものとして、皆さんもご存じかもしれません。ただ、これはとりあえず必要ありませんので、説明を省きます。

 反射式露出計で測定した値を基に、絞りやシャッタースピードを自動的に調整するのがカメラの自動露出(AE)です。面白いことにこれは、人の眼が光に反応して瞳孔を大きくしたり小さくしたりしているのと同じです。人の眼は、物体が反射(放射)している光を見ることによってはじめて、条件反射的に、眼の絞りである瞳孔を調整して、網膜に適当な明るさの光を導入するようなシステムです。極端に眩しい時には、瞳孔を小さくするだけでは間に合いませんから、瞼を閉じて網膜を保護します。
 ただ、人の視覚のすごいというか、ややこしいのは、見ている物が本当に白い物体なのか、それとも物体に当たる光が強いせいで白っぽくみえるのかを、経験的に、無意識の内に瞬時に判断できること(=脳内過程)にあります。機械の露出計には、これがなかなかできません。
 つまり、カメラの自動露出に任せっきりでは、上手くないケースが必ず生じるわけです。
 では、どういう場面では上手くいき、どういう場面では上手くいかないのかを簡単に整理してみましょう。

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<写真 4.A.>
自動露出(AE)で
適正露出が得られるケース 1. 被写体が標準的なグレーの濃さの場合。
2. さまざまな濃さの被写体が混在している場合。

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<写真 5.A.>
AEでは露出アンダー
になるケース

1. 被写体が全体的に白い場合。
2. 被写体の背景が全体的に白い場合(画面に光源が入り込んでいる)場合。

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<写真 6.A.>
AEでは露出オーバー
になるケース

1. 被写体が全体的に黒い場合。
2. 被写体の背景が全体的に黒い場合。

 反射式露出計は、被写体の反射率を18 %(標準反射率といい、この反射率をもつ物体を標準反射体といいます)と仮定した時の露出値を示すように作られています。

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 左の写真は、市販されている標準反射体の標準反射板のセットです(購入する際には、1.)無彩色であり、2.)無光沢であり、3.)光の反射率が18 %であるという要素を満たした標準反射板を選びましょう)。

 反射率18 %の濃さとは、白と黒のちょうど中間のグレー(具体的には、少し日焼けした平均的日本人の肌、新緑、濃いめのコンクリート、古いアスファルト道路、土、などを想像してください)です。つまり、白でもない黒でもない、そこそこの濃さの被写体なら、自動露出が上手く働き、適正露出で撮影できるわけです。
 なぜでしょうか ?
 白い被写体は反射率が高く(100 % 弱)、多くの光を反射します。しかし反射式露出計は、被写体の反射率を一律に 18 % と仮定していますから、被写体が本当に白いせいなのにも関わらず、「強い光が当たっている」と見倣します。このため、絞りを絞ったり、シャッタースピードを速くしてしまい、結果として露出アンダーに見える写真が仕上がるわけです。
 被写体が黒い場合は、これとはまったく逆の考え方で「弱い光しか当たっていない」と見倣し、結果として露出オーバーになる露出値を示します。
 いずれにしても、機械の都合と人の都合に食い違いから生じる問題です。こうした食い違いは、機械が優秀になるか(=ひとは愚かでもよいか)、ひとが優秀になるか(=機械は愚かでもよいか)すれば、解決します。前者は、カメラメーカーなどの血の滲む(にじむ)ような開発努力に相当し、後者は、カメラを使う私たちの問題です。

2.2. 標準反射率 18 % の意味

 ここで “標準反射率が18 % である” 根拠を簡単に説明しておきましょう。

 白黒プリントの真っ白の部分の反射率は約 96 % 、真っ黒の部分の反射率は約 3 %です。これを、絞りやシャッタースピードの考え方になぞらえて、半分半分または倍々にしてみます。さらに、その中間値(対数)を求めると、次のようになります。

<図1.>

白黒プリントの濃さ≒被写体の濃さ
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グラデーション
Black == == == == == == == == == White
白黒プリントの反射率(%)≒ 被写体の反射率(%)
3% 6% 12% 24% 48% 96%
4.5% 9% 18% 36% 72%
絞りやシャッタースピードの段数(EV)
-2EV -1EV 0 +1EV +2EV
-2.5EV
-1.5EV -0.5EV +0.5EV +1.5EV +2.5EV

 反射率18 % が、白と黒のちょうど中間に位置していることに注目してください。
 白黒プリントの白から黒までの幅は、全部で 5 段。そして、真っ白は +2.5 段、真っ黒は -2.5 段に相当します。これらは、露出補正を考える上でとても大切なことなので、覚えておいてください(カラープリントやリバーサルフィルムでも、部分部分の濃さを考えれば同じです)。

2.3. 中央部重点平均測光、スポット測光、マルチパターン測光

 最近の一眼レフカメラには、さまざまな測光機能がついています。いずれも、基本的に反射式露出計であることに違いはありませんが、先に話した欠点をカバーするために、さまざまな機能が付加されているわけです。
 それぞれの特徴を簡単に整理しておきましょう。

2.3.1. 中央部重点平均測光(メーカーによって名称も内容も異なります)

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 古いカメラから、最新機種まで、ほとんどの一眼レフの内蔵露出計の基本となるものです。
 基本的に画面全体の明るさを測定しますが、特に中央部に比重をおいて(中央部:周辺部=3:1 程度)います。一般的な撮影では、撮りたい対象を画面の中央部にフレーミングしますから、ほとんどの場合、これで適正露出になります。また、露出補正を考える時にも、使いやすい特徴があります。

2.3.2. スポット測光

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 高級一眼レフなどに多く採用されている機能です。測光モードセレクトダイヤルで設定したり、スポット測光ボタンなどを押すことで、この機能を使えます。
 画面の周辺部の明るさを無視して、一般的には画面中央部(仮に36×24ミリ画面中の測光範囲が直径約 4 ミリの点(スポット)であれば、画面の面積比は約 1 パーセント相当)だけを測光するものです。
 ちなみに、ニコン F5、F100では、画面中央部とその周囲の 4 点の計 5 点のフォーカスエリアの選択とスポット測光の測光エリアの選択を連動することができます。
 スポット測光は、撮影対象が明確な場合、あるいはファインダー視野内にある標準反射率のモノを測光して適正露出を求める場合に大変有効な測光方式です。
 また、撮りたい被写体そのものの露出を、自分なりに調整したい場合にも、とても有効な機能です。

 その一方でスポット測光は、ファインダー視野内の何のどこを測光すれば適正露出を求めることができるのかが咄嗟(とっさ)にはわからない人には、使いこなすまでが難しい測光方式ともいえます。

 余談ですが、1992年にある国産メーカーから、”測光機能はスポット測光機能のみを搭載” という思い切った仕様のMF一眼レフが発売されました。
 で、はやくもその翌年には、「速写性に優れ、一般撮影に適した中央重点平均測光(=そのメーカーでの呼称)採用……」の姉妹モデルが後を追って発売されました(カギカッコ内の説明文は、そのMF一眼レフを紹介した当時の「カメラ総合カタログ」(日本写真機工業会発行:カメラショー(カメラエキスポ)会場でも販売されている冊子です)からの引用です)。
 そのメーカーの表現を裏返すと、スポット測光は「速写性に劣り、一般撮影に適さない」測光方式となってしまいますが、それくらい使いこなしが難しいのかも……)。

2.3.3. マルチパターン測光(メーカーによって名称も内容も異なります)

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 画面を中央部と上下左右など、いくつかに分割し、それぞれの測光データを基にして、一般的に最も適正と考えられる露出値を演算するものです。
 この基盤になっているのは、数万カットの写真を分析したデータベースで、これにより反射式露出計の欠点をかなりカバーできます。逆光撮影や画面の中に光源が入っている撮影など、従来では難しかったシーンでも、適正露出が得られるのが大きな特徴です。
 ただ、この測光モードで更に露出補正をおこなおうとなると、何を基準にしているのかが判りづらいのが、欠点といえば欠点です。
 カメラ任せで撮る場合に、特に威力を発揮する測光モードだと考えます。

3. 「適正露出」とは何か ?

 最後に、写真の露出の根本的な問題について触れておきましょう。
 単純に言えば、「『適正露出』とは何ぞや ?」ということです。これは、考え方を、大きく二つに分けると非常に判りやすくなります。
 一つは、記録や複写を目的とする場合です。この場合には、被写体の明るさや “白さ黒さ”、そして色調・階調などをできるだけ忠実に再現した写真が「適正露出」ということになります。
 そしてもう一つは、表現や創作を目的とする場合です。この場合には、一枚の写真として見た時に、「いいな!」とか「素敵!」とか思える気持ちになれるかどうかが問題になります。こちらでは、被写体を忠実に再現している必要は決してありません。

3.1. 基本的な露出補正の考え方

 記録や複写を目的とする場合の考え方です。これにより、被写体の “白さ黒さ” を正しく再現した結果が得られます。また、表現や創作でも、この基本を押さえておくことが、望み通りの結果を得るための近道です。
 単純にいうと、被写体の “白さ黒さ” を判断し、白い被写体なら + 方向、黒い被写体なら – 方向の露出補正をすればよいのです。どのていどの補正をするかは、<図 1.>を参考にしてください。


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<写真 5.b.> 白い被写体の場合には、+ 側に補正

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<写真 5.c.> 白いものが白く写る


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<写真 5.d.> 黒い被写体の場合には、- 側に補正

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<写真 5.e.> 黒いものが黒く写る

3.2. 意図的な露出補正の考え方

 表現や創作を目的とする場合の考え方ですが、まず、3.1.の基本を押さえておくことが先決です。被写体の “白さ黒さ” を忠実に再現するだけでなく、意図的に画面を “白く” したり、”黒く” したりすることで、写真の印象を大きく変えることができます。
 単純にいうと、写真の仕上がりの “白さ黒さ” を想定し、画面を “白っぽく” したいなら + 方向(オーバー)、”黒っぽく” したいなら – 方向(アンダー)の露出補正をおこないます。
 この補正幅も、<図 1.>を参考にしてください。


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<写真 7.a.> + 側に補正すると、

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<写真 7.b.> 明るい写真に


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<写真 7.c.> 補正しないと、

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<写真 7.d.> 普通の写真に


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<写真 7.e.>- 側に補正すると、

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<写真 7.f.>暗い写真に

 適正露出を得るための早道があります。それは、露出を違(たが)えた何枚かを撮影(段階露出=ブラケティング)をして、後で選ぶのです。
 これを自動的におこなえる機能を「オートブラケット」といいます。

ブラケティング

 余談ですが、ブラケティングとはもともと軍事用語で、夾叉射撃あるいは夾射と訳される、目標に正確に当てるための技術です。
 たとえば、高速航行する艦船を射撃すると仮定しましょう。まず、目標の未来位置を算出し、あえて直接には狙わずに、未来位置の手前と先を狙って交互にズラして射撃します。”近弾” と”遠弾” が目標をうまく挟み込んだら(=夾叉したら)、しめたもの。夾射した “近弾” と”遠弾” それぞれの誤差を観測しては修正射を繰り返すことで射撃解析値の精度を高めていき、最終的には連続的に目標に命中させてしまえる……のです。

 一方、写真の世界の一般的な「ブラケティング」は、適正と思える露出(値)がまずあって、その露出(値)を中心に、プラス(オーバー)またはマイナス(アンダー)の露出も念のために複数撮っておけばどれかは上手く撮れるでしょ=軍事用語でいえば散布界の広がり(バラつき)を見込んだ公算射撃(=「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」)に近い考え方といえます。

 さて、撮った結果をすぐその場で確認でき、次の撮影カットの露出に反映できるポラロイド(R)フィルムやデジタル(スチル)カメラを使えば、本来の意味でのブラケティング撮影、すなわち撮影者が望む適正露出を追い込んでいく撮影も可能です。

 手動でも自動でも構いません。一度だけでいいです。リバーサルフィルムを使って、+2、+1、プラスマイナス 0、-1、-2 段の 5 枚を段階露出で撮影して、ご自分の目で仕上がりを見比べて欲しいと思います。ちょっとした無駄ですが、得るものは大きいはずです。

 さて、今回はここまで。

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