番外篇 1. 写真を見て、見せて楽しむ

似顔絵 先月(10月)で全12回完結の筈だったのですが、日本語版も英語版も御好評をいただいているそうで、番外編 1., 2. を執筆する運びとなりました。これも毎月々々アクセスして視てくださったみなさまのおかげです。

 さて、写真は「撮る」だけでなく、「見る・見せる」楽しみがあってこそのもの。もちろん自分で見るだけではなく、知人、さらには赤の他人に見せた時にいい印象を持ってもらえるのとそうでないのとでは、楽しさがずいぶん違います。
 では、どうすれば「いい印象」を持ってもらえるのでしょうか ?
 とどのつまり、まずは自分自身で満足できるよう工夫を重ねるしかないのですが、これが本当に難しいのですね……。
 ここではまず、標準的な「見せる」技術や考え方を紹介します。これをとりあえずのスタート地点とし、後は、みなさんがそれぞれアレンジして、自分の理想に近づいていって欲しいとおもいます。

1.写真を飾る

 美術館や写真ギャラリーなどで観る作品は、どれもこれも素晴らしく感じてしまうもの。もちろん写真そのものが良いのは当然でしょうが、同時に写真の見せ方が優れていることにも注目しましょう。
 実際、どのような写真でも、飾る場所を選び、それなりの額装を施すことで、そのイメージは良い方向にかなり違って見えます。
 少し大げさな例えになりますが、こうしたイメージの違いは、一枚の写真をひとりの人物と考えれば理解しやすいでしょう。どのような人でも出掛ける時と場所と目的(T.P.O.)に合致した衣装を着る(着せる)ことで、その人の印象はずいぶん変わるのです。素敵な人でも衣装が悪くては艶消しです。逆に、そうでない人でも、衣装によっては見違えるようにもなります。
 せっかく一所懸命撮影し、自分自身では気に入った写真ですから、できるだけ “いい衣装を着せて” やりたいもの。ここでは、最も基本的な額装方法として知られる、「ブックマット」の作り方とその目的を整理し、次いでいくつかの応用を示します。

1.1. 額装の基本

Fig.1.

<イラスト 1.>「ブックマット」方式の額装

  1. ガラスやアクリル(光の反射を抑える “無反射” タイプもあります)、
  2. オーバーマット(窓の縁のエッジは45度にカット)、
  3. 作品(余白を大きく作成した方が良いです)、
  4. バックマット(省略も可能)、
  5. 裏板(ベニア板や厚紙、プラスチック製 etc.)

 写真を自分なりに額装して楽しんでいる方は多いはず。もちろん、写真は自分なりに楽しむのが一番です。
 ただ、こうした自己流のやり方では問題が生じることが……。代表的なトラブルは、1.)額のガラスに写真が貼りつく、2.)写真が退色したり劣化する、3.)写真がきれいに見えない、等々です。
 こうしたトラブルをできるだけ防ぎ、写真を長期保存し、より美しくみせる方法の一つが<イラスト 1.>の「ブックマット」方式の額装です。
 写真ギャラリーや美術館などでも採用の標準的なマウント法ですから、知識として覚えておくと損はないでしょう。絵やイラストや版画の額装にも応用できます。

 また、ここでは紹介しませんが、プリントを無酸性(=酸性紙ではない)のボード紙やアルミ板、プラスチック板で裏打ちする方法などもあります。

 もちろん、ブックマット方式が唯一の解ではありません。この方式が使えない額も多くあります。ですから、これを基本にバリエーションを楽しめば良いのです。

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<写真 1.>写真用のテープや接着剤
大手文具店、写真用品店、画材店、写真ギャラリーなどで入手できます

 注意しておきたいのは、「写真の画像は化学物質」ということ。プリント保存に適しない物質を含んだ素材を使用した場合、プリント画像の退色や劣化が著しく早く生じることがあります。デジタルカメラのプリントアウトも同様です。
 プリントに直接テープを貼ったり、接着剤を使用する際は、是非とも「写真用」と銘打たれたものを使用しましょう。数年ないし十年後にがっかりすることが格段に少なくなるはずです。

1.2. ブックマットとは何か ?

Fig.2.

<イラスト 2.>ブックマットの構造

  1. オーバーマット、
  2. バックマット、
  3. 作品、
  4. コーナーとテープ
    (市販のものを使用するか、短冊状の紙で自作)

 「ブックマット」とは<イラスト 2.>に示すように、写真を 2 枚のマットの間に挟んでマウントする技法で、写真の額装そして保存に大変便利です。表の窓を開けたマットを「オーバーマット」、裏側に接するマットを「バックマット」と呼びます。
 マットは、一般に単なる約 1 〜 3 mm 厚の白色ボード紙(厚紙)製ですが、写真の保存性を最優先する場合には、高価でも中性紙などの無酸性タイプ(基本的に酸性紙である洋紙は、経年変化に脆いものです。和紙とは大違い)を選びます。
 マットは写真ギャラリーの他、画材店や大型写真用品店などで入手できます。特に画材店では、さまざまな色をしたボードが販売されていますから、写真に合った色のマットを選ぶのもいいでしょう。

 オーバーマットの窓の縁(ふち)は45度の角度に斜めにカットするのが基本です。こうすれば額装した時に写真が直接ガラスに触れません。また、額を壁などに飾った時に、オーバーマットの窓の縁の厚みが写真イメージの上に影を落とさない利点も。さらに、そこはかとない高級感を演出できることも見逃せません。
 なお、「窓でつくる余白部分は、下部をほんの少し長めした方が落ち着いた感じに見える」と言われています。

Table 1.

<イラスト 3.>ブックマットの作成方法

  1. オーバーマットの裏側に窓の大きさ、位置を鉛筆で記す、
  2. マットカッターで裏側からカット(窓の縁のエッジは 45 度にカット)、
  3. オーバーマットとバックマットをテープで貼り合わせる

 こうしたブックマットの加工は、画材店や写真ギャラリーなどで代行して貰えます。額や写真の実物を持ち込むか、額の大きさ(ガラスの寸法)と写真の大きさを指定すれば、満足できるものを仕上げてもらえるはずです。

 また、少し慣れが必要ですが、専用のマットカッターを使って割合簡単に自作できます。マットカッターには 1,000 円程度の安価なものから高級品まで、さまざまなタイプがあります。刃物ですから使用説明書に従って正しく使用してください。

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<写真 2.>
マットカッター

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<写真 3.>
より高機能なマットカッター

 ブックマットは、写真を 2 枚のマットにはさむのが基本ですが、簡易的にはバックマットを省略してもいいでしょう。この場合には、オーバーマットの裏側や、額の裏板に写真を固定するなどします。

1.3. 額装の応用

 額装のアイデアをいくつか示します。短期的に楽しむだけなら、かなりいい加減なことをやっても大丈夫(!?)。いろいろ試してみてください。

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<写真 4.>
余白を十分にとったプリントをそのまま額装した例。
艶消しの印画紙を使うのも効果的

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<写真 5.>
色付きのオーバーマット
の額装例

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<写真 6.>
もとは白いオーバーマットに、
マーブリング(墨流しの技法の一種)にて色と模様を付けた例

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<写真 7.>
窓を 6 つ開けたオーバーマットに
写真を 6 点収めた例

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<写真 8.>
オーバーマットを二重にし、小さな写真を少し浮かしてマウントした例。
自作した鶏卵紙(塩化物を卵白と混合して紙に塗布した印画紙。1850〜20世紀はじめまで実用)に焼いたので、これにちなんでトリの絵なぞ描いてみました……

2. 写真をまとめる

 写真を撮り続けると、写真の量が増えてきます。あたりまえですね。
 特に意識して作品づくりをしていなくても、サービスサイズのプリントが山のようにたまっている方も少なくないはず。
 写真の面白さの一つに、長い年月(=数年から数十年)を経ることで、そのイメージの見え方が変わることがあります。退色などの像の経年劣化といった話ではありませんで、イメージを見る人の意識が変わるから生じるものです。写真は長持ちさせることによって、その意味や価値が変わってきます。風景や街角と街角を行き交う人々などの “定点観測” 写真だけの話ではありません。

 写真を “長持ち” させる方法のひとつに、「写真をまとめる」があります。アルバムに貼ったり、写真集にすれば、写真の散逸は防げます。また、手間をかけて写真をまとめることで、写真への思いが増すことも……。さらにいえば、数多くの写真をまとめることで、一枚一枚の写真がそれまでとは別の意味を持つようにもなります。
 「写真をまとめる」とは、対象やテーマや方法論などを一つに決め、それにそったものだけを選び抜き、余分なものを捨て、見やすい形に整えることを指します。
 面倒ですし余分なお金もかかりますが、撮り続けた写真をまとめて、一つの作品集を作ってみてください。写真の楽しさをここにも発見できるはずです。

2.1. 「写真集」を作る

Photo17.

ニコンオリジナルアルバム「イア マリエ」

結婚式のオリジナル写真集をデジタル技術を用いてつくるサービス

 現在、日本の印刷会社の多くでは、3〜40点ほどの作品を一冊の「写真集」にまとめてくれる小部数出版を受けつけています。判型(サイズ)とページ数、レイアウトやデザインなどに制約はありますが、かなり安価にオリジナルの写真集を作成できます。写真関係の雑誌などに掲載の広告を参考に、印刷会社に相談してみてください。

 いきなり「写真集」を作る、というのも肩の荷が重いでしょうから、始めはポストカードの印刷などから始めるのもいいでしょう。印刷会社によっては、数十枚といった数量からできるポストカード印刷もあるようです。
 また、より小部数でよいのであれば、カラーコピーを駆使するのもひとつの作戦です。現在のカラーコピーは大変に優秀ですから、色を変えたり、デザインに変化をもたせたりなど、さまざまな工夫ができます。数十枚のカラーコピーを製本するだけで、立派な「写真集」の完成です。製本のための道具類は大型文具店などで販売されています。

Fig.2.

<写真 9.>
クリアファイルに写真を挿入しただけの簡単な写真集

 そこまで凝る自信のない方なら、普通のアルバムに写真をまとめるだけでも構いません。アルバムさえ高価だ面倒だと思われるなら、クリアファイルに写真を整理するのでも十分です。というよりも、これは多くのプロ写真家も実践しています。プロ写真家が営業活動をする際に携行する作品集= “ポートフォリオ” といえば特別なものに聞こえますが、要は大判のクリアファイルに写真や掲載誌の切り抜きをまとめただけ(投げ込んだだけ)だったりします。

 かっこいい「写真集」、見栄えの良い「写真集」を作るコツはいろいろあるでしょうが、基本的には工夫とアイデア、センスですね。「このようにしなければならない」ことは原則としてありませんから、自由に遊ぶつもりで作成すれば良いでしょう。
私見としていくつかのコツを整理しておきます。

  1. 「写真集」のテーマを明確に決める
     対象を統一するのでもいいし、気分のいいものだけといったテーマでも構いませんが、全ての写真を通して、一つのイメージが浮かび上がるようにします。
  2. 写真を入念に選ぶ
    「あれもこれも捨てられない」のが、写真を撮った人の気持ちです。が、心を鬼にして、重複を避け、テーマ外の写真を落とします。本当にいい写真だけを残すつもりで。
  3. 写真を編集する
     写真集は基本的に 1 ページ目から見ていくもの。写真の順番はよく考えます。並び方が変わるだけで、印象ががらりと変わることもよく経験します。また、キャプションの付け方も工夫します。
  4. デザインする
     写真の大きさを変えたり、余白のとり方を変えたり、色地に載せたりなどして、写真がより楽しく見えるようにします。ただ、あまりやりすぎても、写真よりもデザインの方がよく見えるようになることも……。

 とりあえずは、あまり気負わずに、小さなものから始めるといいでしょう。「写真集は印刷でないとね」といった思い込みさえ捨てれば、かなり自由に楽しめるはずです。いくつかの例を示します。基本は自分自身で満足できることですが、他人に見せることも目的なら、多少のサービス精神は必要かと思います。

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<写真10.>
薄手の印画紙へのプリントを製本した写真集(表紙 / 開いたところ)

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<写真11.>
オーバーマットを施した
アルバム

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<写真12.>
台紙に貼った写真を、
まとめて箱に収めたもの

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<写真13.>
1 〜 3 枚だけなら、
市販の台紙に収めるのもきれい

2.2. 写真展を開く

 「写真展」もまた、先に述べた「写真集」のように、写真をまとめるのが基本です。ですから、「写真集」の作り方が上手な人は「写真展」もいい感じに構成することができます。
 写真ギャラリーなどの公募に応募する際にも、写真集のように写真をまとめたものが必要です。
 「写真展」と一口にいっても、いろいろあります。しかし基本の基本は、ある程度まとまった数の写真を展示し、多くの人に見せることです。ですから、場所は公園や路上(無許可は違法です)でも、自宅でも、近所の喫茶店やうどん店でもいいわけです。そうした場所で、個展を開催した経験を経てプロになった方も多くいます。
 ちゃんとした写真ギャラリーは、次のように大きく分類できます。それぞれの特徴を理解して、上手く活用してください。

  1. メーカー系写真ギャラリー
     「ニコンサロン」など、カメラそして感材メーカーなどが運営しているスペース。
     プロ、アマチュアを問わず、誰にでも門戸が開かれていますが、審査を通る必要があります。それぞれのギャラリーに問い合わせて、必要な書類、作品(たいてい30〜40点)を揃えて応募してください。
     運営の目的に、「写真文化の向上」、「写真文化への支援」などを掲げているところが多く、私には基本的に “お行儀の良い” 作品が望まれているようにもおもえます。
  2. 写真を販売する写真ギャラリー
     作品としての写真を展示、販売するためのギャラリーです。プロ、アマチュアを問いませんが、売れる写真であることが前提です。
     写真が売れる要素には、作品の善し悪しだけでなく、作家としての活動(生き方)までも問われることも。写真作家として身を立てたい方は、ここを経由する必要があります。
     しかし、どのような有名作家でも、最初は普通の人だったわけですから、こうしたギャラリーの方に「売れる作品」について相談するだけでも実りは多いはずです。何度も何度も、作品を持ち込んで見せ続けている内に「光が見えてくる」かもしれません。
  3. 貸し画廊
     1. と 2. では、基本的に会場の費用などは徴収されません。しかし、これらのギャラリーを使わして貰えないとなると、自分で会場を借りて写真展を開催します。この会場の一つが、貸し画廊です。
     会場の費用を借り手が負担しますので、かなり自由に作品発表ができるメリットもあります。意外に料金が高価な所が多いですから、グループ展などを開催して費用を分担することから始めるといいでしょう。
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<写真14.>
路上でおこなった写真展(1983(昭和58)年)。
違法です(時効です)

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<写真15-1.>
ちゃんとした会場での写真展 -1.
(渋谷ドイフォトプラザ:1996(平成8)年)

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<写真15-2.>
ちゃんとした会場での写真展 -2.
(銀座ニコンサロン:1999(平成11)年)

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 また、近年急速に発展しているいわゆる “ホームページ” もまた、「写真展」であり「写真集」でありうるといえます。

3. 写真を通じたコミュニケーション

 「写真撮影の醍醐味は、見知らぬ人との出会いにあり」と思っている方も少なくないはずです。被写体との出会い、同じ写真趣味の人との出会い。写真の出来の善し悪しよりも、こうした出会いは何より愉快です。もちろん、まれには不愉快になることもありますが、それらを含めた上で、やはり人との出会いはいいものです。
こうした出会いを、「写真を見せる」ことによって広げてみませんか。

3.1. 「写真コンテスト」に応募する

 写真を本格的に始めた人のほとんど全てが、「写真コンテストに入賞したい」と夢見るはずです。私自身、十数年前は随分応募しました。入賞回数は 2、3 回止まりでしたが。
 そして今、私自身は審査員をしていませんが、何人かの先輩が審査員をしていたりします。こうした審査員の肉声を参考に、コンテスト入賞のコツを紹介しましょう。

3.1.1. コンテストの傾向と対策を考える

 「写真コンテスト」といっても、さまざま。写真雑誌の月例コンテスト、観光地の写真コンテスト、若手作家発掘のための公募などなど、ほんとうにいろいろあります。こうしたコンテストが何を目的におこなわれているかを理解すれば、「どのようなイメージの写真が入賞しやすいか」が判ります。例えば、観光地のコンテストにそれ以外の場所で撮影した写真はまず入賞できませんし、観光地のイメージを悪くするようなものも絶対的にダメでしょう。あたりまえですよね。
 また、メーカー系のコンテストでは、そのメーカーさんの機材や感光材料を使うのが礼儀です(私が思うに、度量の広いメーカーさんばかりではありません……)。

 また、審査員がどなたかによって、選ばれる写真の傾向がある程度決まってきます。審査員名が公表されているなら、まずは審査員が撮影した作品集を見るなどして、作品の傾向を理解しておきます。というよりも、「これもまた写真の勉強だ」と思えばいいのです。
 もちろん、審査員そっくりの作品を撮影しても、入賞するとは限りません。逆に入賞しにくいのが現実かと思います。むしろ審査員に意外性を感じさせるようなイメージの方が入賞の確率は高いでしょう。

3.1.2. 丁寧に応募する

 同じレベルの 2 枚の写真が並んだときにどちらを審査員が選ぶかというと、より丁寧に応募された方の作品です。これが人情というものでしょう。
 応募規程を守っていないのは論外としても、写真表面に指紋がべたべたついていたり、応募票の字が読めなかったり、必要記載事項に漏れがあったりときては、やはり印象がよくありません。
 「そんなことはあたりまえでしょう」とお思いになる方は多いでしょうが、こうした応募作が意外に多いそうです。
 また、誤解を恐れずにいえば「撮影データなどの記憶が多少不確かであっても、応募書類の記入欄はとにかく埋めたほうが……」と私は思うこともあります(夏休みの宿題の絵日記や作文もそうですが、記入すべき欄が空白のままの不備な書類を提出するよりはなにかしら書き込んでおいた方が……)。もちろん公的性格の強いコンテストほど別です。虚偽があっては主催者にたいへんな迷惑をかけることになります。

3.1.3. 堅苦しく考えない

 「写真コンテスト」は基本的に、ルールの枠組みの中で競いあうゲームのようなもの。入賞するかしないかで、応募者の人格が計られるようなものではありません。また、長く数多く入賞し続けたからといってプロになれる保証が得られるわけでもないのです。
 さらにいうなら、特賞などの優秀作を除けば、入賞するかしないかは半ば運次第(もちろん、運だけではありません)。ですから、気軽に楽しむ感覚で応募するのが一番です。
 そして、他の応募者の作品をよく見て、自分のアイデアをさらに練るようにすると、いつかは入賞できるはずです。自分の考え、思い込みだけに固執すると、なかなか入賞はできません。

3.2. 写真を売る

 ”由緒正しい” 写真ギャラリーを通して写真を売ったり、あるいは広告や雑誌などの媒体(メディア)に写真の使用を許諾することでお金を稼いだりするのは、プロの仕事です。
 だからなのか、「写真を売ることはアマチュアには関係ない」と思われる方も多いでしょう。
 でも、いい作品ができたらそれを「お金に換えてみたい」と思う気持ちは、おそらく誰にでもあるはずです。なぜかというと、言葉でただ褒められるだけよりも、実際に身銭を切ってくれた方が、「作品の価値を本当に認めてもらった」という感動が大きいからではないでしょうか ?
 自分の作品を売るコミュニケーションは、かなり緊張度の高いものです。誰にでもおすすめというのではありませんが、最近、フリーマーケット(蚤の市)や、路上あるいは公園などで、自分で撮った写真(ポストカードや拡大カラーコピーなども)を売る行為が、日本の若い人たちの一部で広がっています。これを少し紹介します。

 まず、一番たいせつなこと。フリーマーケットに参加してであれば問題はありませんが、路上や公園などを占有し、その所有者や監督官庁などの許認可なしにこうした商売をおこなうのは違法行為(公道の場合、道路交通法違反)です。
 ではなぜ、公益に反して法を犯してまで、彼らは写真を売るのでしょうか ? 「生活のため」だけではなさそうです。結局は「楽しい」からです。お客さんとの出会いがあり、同業者との出会いがあるからだとおもいます。
 しかも、そこにお金が絡むことで、この出会いには普通の何倍もの緊張感が強いられます。これは快感です。一度やったらやめられないほどの快感です。
 一方で、写真が一枚も売れないとしたら絶望の淵に立たされることにもなるでしょう。また、法令や地方自治体の条例違反で警察などの御厄介になったり、最悪の場合とんでもないトラブルに巻き込まれることもあるかもしれません。だからこそ、快感がほどよく増幅されて感じられるのです。

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<写真16.>渋谷区表参道などで白黒写真(オリジナルプリント)を販売している K., T. さん。
なんとか生活できる程度に売れているそうです。

 逆にこう問いかけることもできます「人はなぜ、こうした写真を買うのでしょう ?」。写真のイメージがよいから ? 売っている人がかっこいいから ? 口上(セールストーク)が巧みだから ? こうした商売自体が洒落ているから ? いろいろあるでしょうが、結局は皆、写真に託された夢を買っているのではないでしょうか ? 写真を買うことで、路上で繰り広げられている最先端のアートに自分も参加しているような気分を味わっているのかもしれません。
 しかしよくよく考えてみれば、画廊で有名作家の作品を購入したり、アイドルの生写真を手に入れたり、掲載写真に惹かれてカレンダーを買ったりするのと根本は同じなのですが。

 路上などで写真を売るというのは、誰にでもできそうでいて、その実、大変な度胸や根気が必要です。でもこうした度胸や根気は、プロとして(人としても)生きていくのに絶対必要なものだともおもいます。フリーマーケットや路上などで、こうした人を見かけたら声をかけたり、作品を購入してみてはいかがですか ?

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