第 2 回目・初歩の初歩 (2) 「マニュアル操作に挑戦 !」
デジタルカメラには、大変多くの機能が搭載されています。この機能の豊富さは、通常の銀塩カメラをはるかに凌(しの)ぎます。例えば、銀塩カメラでいうフィルムやフィルターの選択すら、デジタルカメラではボタンやダイヤルの操作で設定できるのですから。
こうした機能はとても便利な反面、写真技術の知識の少ない方にとっては恐ろしく煩雑な仕組みにしか思えないはずです。ですから結果的に、[AUTO] (フル)オートモードしか使わない(使えない)という方が少なくありません。
今回は、「代表的な機能が、なぜ搭載されているのか ?」そして、「どんな特徴があって、どのように使えばよいのか ?」を簡単に紹介します。
デジタルカメラでは、もし失敗しても、設定を変えてすぐにやり直せます。まずは、[AUTO] モード以外に設定することからスタートです(各種機能は、他の設定条件によっては作動しないことがあります。詳細は使用説明書で確認してください)。
2.1. ピントを合わせる
「デジタルカメラの液晶モニタで見た時には、ピントが合っているように見えたのに、パソコンのモニタで大きくしてみるとピンボケだった……」なんてことを、よく経験します。
逆に、ポートレート撮影で「背景を大きくボカして撮影したいのに、デジタルカメラではなかなか上手くいかない……」なんてこともあります。
ピントとはいったい何なのでしょう ? そして、ピントばっちりで写したり、背景を大きくボカして写すにはどうすればいいのでしょう(マクロや風景などのフォーカスモードについては、第一回目の 1.2.3. を参照してください)。
2.1.1. ピントって何なの ?
「ピント」を日本語では「焦点」、英語では「フォーカス」と呼ぶことをご存じのはずです。では、「”ピント” って何語 ?」と聞かれると、「あれれっ」て思いますね。この語源はオランダ語です。ちょっとした教養の一つにしてください(詳しくは、一眼レフ入門「一眼レフなんてこわくない」4回目「ピント」ってなんだろう ? を参照してください)。
さて、”ピントが合った写真” とは、主要な被写体がシャープに写ったものを指します。逆に、”ピントが合っていない写真” とは、主要な被写体がボケて写ったものです。
ただ、「主要な被写体とは何か ?」という問題になると、少し話がややこしくなります。なぜなら、最終的にこれは、写す人がそれぞれ決めなければならない問題だからです。
しかし、難しく考える必要はありません。単純に、「自分は画面の中のどの対象を見たい(他者に見せたい)のか ?」と考えてください。

イラスト 1.
ここで、カメラの世界でいう「ピント」の技術的な意味を確認しておきましょう。イラスト1.を見てください。
デジタルカメラのファインダーの中や、液晶モニタの中央部分に、[ ] マークが表示されています(クールピクス 880 の液晶モニタには、通常では表示されません。画面中央部と考えてください)。これを、”AFエリア(AFフレーム)” と呼びます。
これは何か ? というと、「カメラのAF(オートフォーカス)機能は、この部分にある被写体にピントを合わせますよ」ということを示したマークです。つまり、写したい被写体をこの部分に位置させて撮影することが、基本中の基本となるわけです。
ただし、イラスト 1. を少し注意して見ていただきたいのですが、カメラのピントは、カメラから一定の距離にある平面(ピント面あるいは焦点面といいます)全てに合います。つまり、イラストの猫や千鳥にもピントが合います。そして、この平面から離れれば離れるほど被写体は大きくボケて写ります。
カメラの AF 機能は、このピント面を AF エリアにある被写体の位置に自動的に調整するものです。
注):デジタルカメラの液晶モニタはあまり大きくありません(=撮像素子よりも画素数が足りません)。ですから、撮影直後にこの画面で確認しただけでは、微妙なピントの合否を確認することは困難です。
液晶モニタの画面の中でピントが合った部分の輪郭だけを強調する「ピーキング機能」を活用したり、再生モードでズームボタン( [T] )を押して「拡大表示」にして確認してください。
拡大画面の位置は、マルチセレクターボタンで調整できます。

写真 1 a.
[T] ボタンを押せば「拡大表示」できます

写真 1 b.
4 倍まで拡大できます

写真 1 c.
マルチセレクターボタンで拡大位置を変えて確認します

写真 1 d.
「ピーキング」を ON にすれば、ピントが合った部分の輪郭が強調されます
(以上に述べた機能の有無、操作方法などは、メーカーや機種によって異なります)
2.1.2. フォーカスロック機能を使う
多くのデジタルカメラでは、AFエリアは、画面の中央部にひとつあります。ですからこのままでは、少し離れた二人の記念写真を撮影したり、被写体を画面の端に写す構図にすることができません。
そこでまず覚えて欲しい操作は、シャッター(レリーズ)ボタンの「半押し」操作です。
半押しとは、シャッターボタンを軽く押し込んだ状態で保持することをいいます。カメラはシャッターボタンを半押しにした時点のAFエリアにピントを合わせ、ピント位置を固定(フォーカスロック)します。つまり、半押しにしたまま構図を変えても、ピント位置は変わりませんから、構図に変化をもたせることができるわけです。
デジタルカメラに限らず、通常のAFコンパクトカメラでも、この「半押し」で同様の機能が働きますので、ぜひマスターしてください。

写真 3.a.
画面中央部でピントを合わせて……

写真 3.b.
シャッターボタンを半押しにしながら、構図を変えて……

写真 3.c.
シャッターボタンを全押しにすると、画面の端の被写体にピントを合わせることができます
注) :シャッターボタンを半押しにすると、ピントだけでなく露出も固定される機種もあります。適切な露出モードの選択については、使用説明書で確認してください。
なお、前回(第一回)の 1.3.3. に紹介したよう、画面の明るさ / 暗さについては、”露出補正機能” を使っても補正できます。
また、厳密に考えるなら、半押ししたままで構図を変えた場合、被写体はピント面からズレます。しかし、デジタルカメラの場合、レンズの焦点距離が短いものが多く、被写界深度が割合深いため、このズレが問題になることはほとんどありません。
2.1.3. AFエリアを選択する
先に触れたように クールピクス 880 では、画面中央部の AF エリアは通常では、液晶モニタには表示されません。透視ファインダーには、この AF エリアが表示されています。
しかし、次のように設定した場合には、画面中央部を含め天地左右の 5 点のAFエリアを使うことができるようになります。
- シーンモードの「ポートレート」および「マクロ」に設定した場合。
(この場合の、AF エリア選択は「MANUAL」になります。) - 露出モードを、[P]、[A]、[M]、[CSM] に設定した場合。
(AF エリア選択は、「AUTO」、「MANUAL」、「OFF」を選択できます。)
- 「AUTO」:5 点の AF エリアにある被写体のなかから、最も近い被写体にピントを自動で合わせます。
- 「MANUAL」:5 点の内、ピントを合わせる AF エリアを、マルチセレクターで自由に選択できます。
- 「OFF」:画面中央部のAFエリアだけを使います。
このように、5 点のAFエリアを使うことで、ピント合わせはよりスピーディになり、構図の変化をより自由に楽しむことができます。>

写真 4.a.
AFエリア選択の切り換え

写真 4.b.
5 点のAFエリアの表示(ここでは中央のエリアを選択しています)

写真 4.c.
画面右側の AF エリアを選択すると、右側の人物にピントが合います

写真 4.d.
画面左側の AF エリアを選択すると、左側の背景にピントが合います
注) :この他、シャッターボタンを半押しにしなくても連続的(コンテティニュアス)にピントを合わせ続けるAFモード(「C-AF」:動く被写体を撮影するのに便利)、そして、被写体までの距離で調整するマニュアルフォーカス(MF)モードなども、クールピクス 880 には搭載されています。必要に応じて使いこなせるようになってください。
2.2. 露出モードで、絵づくりを楽しむ
露出は、写真の明るさ暗さ(白さ〜黒さ)を変える重要な要素です。そして、写真の明るさ暗さは、露出補正によって自由に調整できることを第一回目の 1.3.3. に紹介しました。
ところが、明るさ暗さ(白さ〜黒さ)だけではなく、露出によって、被写体の動きや、背景のボケ方をも変えることができます。
まずは、「絞りとシャッタースピードとは何か ?」そしてそれらによって、「何がどう変わるのか ?」をしっかり理解しましょう。
2.2.1. 絞りとシャッタースピード

イラスト 2.
絞りとシャッタースピードと光量の関係
一般的なAE(自動露出)カメラでは、撮像素子やフィルムに当てる光の量の多寡によって、仕上がる写真の明るさ暗さが変わります。単純にいえば、光が多く当たれば仕上がりは明るくなり、光が少なければ暗くなります。
この光の量を調整するのが、カメラの「絞り」と「シャッタースピード」です。
絞りは、眼の瞳孔のようなもので、レンズの内部にあります。直感的にわかるよう、絞り(孔)の大きさが大きければ大きいほど、多くの光が撮像素子に当たります。ただ、ちょっと注意が必要なのは、絞りの数値(F 値)が小さいほど、孔が大きくなる(明るくなる)ということです。勘違いしないよう覚えてください。
シャッタースピードは、撮像素子やフィルムに光を当てる時間の長さのことです。これまた直感的に判るよう、シャッタースピードが長ければ長いほど、多くの光が当たることになります。
このあたりの事情をイラストに示しました。
絞りの大小による変化は、円柱の円の面積(円柱の断面積)の違いに相当します。
シャッタースピードによる露光時間の変化は、円柱の長さの違いに相当します。
二つの円柱の体積が、撮像素子やフィルムに当たる光の量というわけです。
上下二本の円柱を見比べていただければ判るように、絞りの大〜小とシャッタースピードの速い〜遅いを巧い具合に調整すれば、光量(露光量)を同じに揃えることができます。要するに、同じ明るさの写真を仕上げることができるわけです。
さて、上の二つの場合では、光の量(露光量)は同じままです。ですから、同じ明るさの写真に仕上がります。ところが、写真のイメージががらりと変わることがあります。
● 絞りによる違い。


写真 5.a.
絞りを絞った場合(孔が小さくなっています)

写真 5.b.
絞りを絞って撮影した例(背景のボケが小さいです)


写真 5.c.
絞りを開けた場合(写真 5.a. よりも孔が大きいです)

写真 5.d.
絞りを開けて撮影した例(写真 5.b. よりも背景のボケがやや大きくなりました)
絞りを絞る(孔を小さくする)ほどと、背景や前景のボケが小さくなります。このため、手前も奥もピントが合っているように見倣(みな)せる写真になります。これを「被写界深度が深い」写真といいます。
逆に、絞りを開ける(孔を大きくする)と、背景や前景のボケが大きくなります。このため手前や奥が大きくボケて写るようになります。これを「被写界深度が浅い」写真といいます。
被写界深度とは、ピントが合っているように見倣せる(主要被写体の前後の)範囲のことです。
ただ、コンパクトタイプのデジタルカメラの場合には、通常の35ミリ判やAPS判のフィルムよりも撮像素子が小さいため、たとえ画角は同じようでも焦点距離の短いレンズが使用されていますので、通常の35ミリ判やAPS判のフィルムカメラのようには背景を大きくボカした写真は、なかなか撮影できないことを覚えておいてください。
そのかわりといっては何ですが、35ミリ判やAPS判のフィルムカメラでは難しいマクロ撮影が、被写界深度の深さを活かしてより簡単にできるのです。
● シャッタースピードによる違い。

写真 6.a.
遅いシャッタースピードで撮影した例(背景を大きくブラしました)

写真 6.b.
速いシャッタースピードで撮影した例(背景はあまりブレていません)
室内や夜間でスピードライトを使わない撮影を行った時、被写体が動くと被写体がブレて写り、またカメラを持つ手が動くと画面全体がブレて写ることをよく経験します。
これは、シャッタースピードが長いために生じるものです。
ブレというのは、一般的には写真の失敗の代表格といっていいものですが、逆に考えると、被写体の動きを表現するのになくてはならない要素でも(写真 6.a.)あります。
逆に、シャッタースピードをとても速くすれば、動いている被写体の一瞬をまるで静止画のように撮影することも可能(写真 6.b.)です。
2.2.2. シーンモードと[P]、[A]、[S]、[CSM] モード ????
クールピクス 880 には、ほとんど全ての機能が自動調整される [AUTO] モードの他に、11種類のシーンモード(ニコンの一眼レフカメラの「イメージプログラムのようなもの)と、[P] (プログラム)モード、[A](絞り優先)モード、CSM(カスタム設定)モードが搭載されています。
クールピクス 995 などでは、シーンモードはなく、[S](シャッタースピード優先)モードがあり、さらに [CSM](カスタム設定)を 3 種類使い分けることができます。

写真 7.a.
シーン [SCENE] モードを選択
▼ステップ 1. シーン [SCENE] モードを使い分ける。
[AUTO] モードの次のステップは、”シーンモード” の使い分けです。
シーンモードには、「ポートレート」、「パーティ」、「夜景」、「風景」、「打ち上げ花火」、「クローズアップ」、「逆光」……といった具合に、撮影シーンを選択するだけで、より理想的な写りになるよう、カメラがさまざまな機能の設定をおこなうものです。

写真 7.b.
メニューでそれぞれのシーンを選択
もちろんですが、撮影条件によっては必ずしも上手くいくとは限りません。ただ、カメラは最善の努力を行っていますから、理想的な写りになる可能性が [AUTO] よりも格段に高いと考えていいです。
ここにはその一部しか紹介しませんので、カタログに掲載された写真のイメージと注意事項を参考にしてください。特に、暗い場所での撮影では、できるだけ(打ち上げ花火では必ず)三脚を使用してカメラを固定してください。

写真 8.
プログラム [P] モードを選択
▼ステップ 2. プログラム [P] モードを使いこなす。
ある程度慣れてきたら [P] モードにして、AFモードや後述のホワイトバランスを自分で設定してみましょう。
このモードは、撮影時の露出の失敗(主にブレやピンボケ)を最小限に抑えるよう設計されたものです。
これまた当然のことですが、失敗がなくなるわけではありません。

写真 9.
絞り優先 [A] モードを選択
▼ステップ 3. 絞り優先 [A] ないしシャッタースピード優先 [S] モードに挑戦
さらに、絞りやシャッタースピードによる違いを試してみたい時には、[A] ないし [S]モードを使ってみます。
[A] ないし [S]モードのいずれかがないカメラでも、前述したように、絞りとシャッタースピードは相関していますから、[A] モードをあたかも [S] モードのように使うことができます。
例えば、シャッタースピードを速くしたい場合には、[A] モードで絞りを開けるよう( F 値を小さく)設定すればよいのです。

写真 9.
絞り優先 [A] モードを選択

写真 10.
カスタム[CSM] モード。
▼カスタム[CSM] モードでお好みのカメラ設定に
[CSM] モードは、各種の設定を記憶しておける機能です。
撮影条件がほぼ同じだったり、毎回同じような設定にする場合に活用すると、再設定の手間が省けます。
2.2.3. 内蔵スピードライトを使う
デジタルカメラに内蔵されているスピードライトは、暗い場所での撮影にとても重宝します。非常にコンパクトながら、そこそこの光量を発しますし、一瞬の閃光ですから手ブレや被写体ブレのない写真を撮影できます。
ただ、内蔵スピードライトの光量(ガイドナンバー)は、決して大きくはないことを覚えておいてください。クールピクス 880 の場合ですと、感度をISO100 相当に設定している場合、望遠側では 2.5 メートル、広角側では 3.7 メートルあたりまでしか適当な明るさを得られません。これらより遠い被写体を撮影した場合、被写体が予想以上に暗く写ります。特に夜間の屋外での撮影には注意が必要です。内蔵スピードライトの光量が足りないことを確認した場合には、感度設定を高くしてみるのもよいでしょう。
さて、スピードライトモードには 5 種類あり、それぞれかなり写り方が異なります。それぞれのモードについて説明します。
▼「AUTO(自動発光)」モード
「被写体が暗い」とカメラが判断した場合にのみ、自動的に発光します。
スピードライトの使用、不使用を意識しないで済みます。

写真 11.a.
「AUTO(自動発光)」モード(液晶モニタには表示されません。機種とメーカーによって異なります)

写真 11.b.
「AUTO(自動発光)」モードでの撮影例
▼「発光禁止」モード
被写体が暗くても、発光しないようにするモードです。
遠い夜景や打ち上げ花火の撮影時など、主要被写体が非常に遠く、十分な光が届かないときには、この設定を使います。
夜景や室内撮影では、露出オーバー(+ 側)に補正すれば、見た目以上に明るく写すこともできます。
ただいずれの場合も、シャッタースピードがかなり長くなりますから、手ブレ対策が必要です。できるだけ三脚を使用してください。

写真 12.a.
「発光禁止」モード

写真 12.b.
「発光禁止」モードでの撮影例(写真 11.b. と人物と背景をそれぞれ見比べてみてください)
▼「[SLOW] スローシンクロ」モード
とりわけ夜景を背景にした人物撮影に威力を発揮するモードです。人物はスピードライトによって確実に照明し、スピードライトの届かない背景をスローシャッター(シャッタースピードを長く/遅くする)で明るく撮影します。
このモードでも、できるだけ三脚などでしっかりカメラを固定するのがコツです。

写真 13.a.
「[SLOW] スローシンクロ」モード。

写真 13.b.
「[SLOW] スローシンクロ」モードでの撮影例(写真 11.b. と 12.b. と、人物と背景をそれぞれ見比べてみてください)
▼「強制発光」モード
撮影している場所が明るくても、必ず発光する(発光させる)モードです。
逆光撮影で、陰になった部分を明るく撮影する際などに使います。

写真 14.a.
「強制発光」モード

写真 14.b.
「[AUTO] オート」モードでの撮影例

写真 14.c.
「強制発光」モードでの撮影例
▼「赤目軽減」モード
コンパクトなデジタルカメラでは内蔵スピードライトは、撮影レンズに極めて近い位置にありがちです。このため、スピードライトの光が眼の網膜上に結像し、この部分の光が強く反射することで、眼の瞳孔部分が赤く写る現象を「赤目」といいます。
この「赤目軽減」モードでは、撮影のための本発光の直前に、被写体が眩しいと感じる程度の予備的なプリ発光(予備発光、先行発光)をおこないます。プリ発光の眩しさで瞳孔が収縮した直後に、本発光で撮影するため、赤目現象をかなり軽減できます。
犬や猫を撮影した際に、瞳孔が 緑色 や 青色 に写るのも同じ現象ですから、このモードが使えます。ただし、犬や猫がプリ発光直後に眼を背(そむ)けてしまうかもしれませんが……。もちろん人物撮影でも、プリ発光があることを予め知らせておいたほうがいいでしょう。

写真 15.a.
「赤目軽減」モードを選択

写真 15.b.
「[AUTO] オート」モードでの撮影例:赤目現象

写真 15.c.
「赤目軽減」モードでの撮影例
2.3. ホワイトバランス機能で色を遊ぶ
デジタルカメラでは、どのような光源下で撮影しても、たいていの場合、ほぼ見た目どおりで雰囲気のある色調の写真が撮影できます(銀塩フィルムカメラでは、フィルムやフィルターの適切な選択が必要ですが……)。
「なぜ、そんなことができるのか ?」というと、デジタル画像は電子的な情報ですから、元の (オリジナルの) 色調がどのようなものであれ、それを記録する際に適切な補正を行うことができるのです。このような色調補正を担う(になう)のが、オートホワイトバランス(AWB)機能です。
しかし、もちろん、これは完璧なものではありません。必要に応じて、ホワイトバランスをマニュアルで設定したり、ホワイトバランスのプリセット機能を使ってみましょう。
2.3.1. ホワイトバランス機能って何だろう ?
「光に色がある」と聞くと一瞬戸惑う方も少なくないはずです。しかし、色は光でできているわけですから、光に色があるといっても大きな間違いではないように思います。厳密にいうなら、人の眼と脳による認識の問題ですが……。
ともあれ、日昼の太陽光は白色であって、デジタル・銀塩を問わず、写真や映像の基準となる光です。そして、特に銀塩フィルムで撮影した写真では、白熱電球下で撮影すると橙色が強くなり、また、一般的な蛍光灯下で撮影すると緑色が濃い写真になることは、よく知られています。
人の眼は、よほど特殊な光源下でない限り、自らの記憶を頼りに「白い物は白」、「肌色は肌色」、「青い物は青」として認識します。これを「順応」といいますが、銀塩フィルムにはこれがありません。ですから、見た目とは異なる色調の写真に仕上がることがあるわけです(詳しくは、一眼レフ入門「一眼レフなんてこわくない!」11回目を参照してください)。

写真 16.a.
太陽光のもとでホワイトバランスを「太陽光」にマニュアル設定して撮影

写真 16.b.
白熱電球のもとでホワイトバランスを「太陽光」にマニュアル設定して撮影

写真 16.c.
蛍光灯(昼光色)のもとでホワイトバランスを「太陽光」にマニュアル設定して撮影
上の写真 16.a.〜16.c. は、クールピクス 880 のホワイトバランス機能をマニュアルで「太陽光」に設定して(デーライトタイプのカラーフィルムを使った場合にほぼ相当します)、左から太陽光、白熱電球、蛍光灯(昼光色)のもとで撮影したものです。それぞれの光源のもとでの被写体の色の違いを比べてください。
さて、冒頭に述べたように、デジタル画像は電子的な情報です。ですから、光源の光そのものに色がついていた場合でも、人の眼で見て記憶に残っている色調に自動的に補正することが割合簡単にできます。
こうした色(一眼レフ入門「一眼レフなんてこわくない!」11回目の1.3) の補正を受け持つのが、オートホワイトバランス(AWB)機能です。

写真 17.a.
太陽光のもとでオートホワイトバランスで撮影

写真 17.b.
白熱電球のもとでオートホワイトバランスで撮影

写真 17.c.
蛍光灯(昼光色)のもとでオートホワイトバランスで撮影
上の写真は、クールピクス 880 のオートホワイトバランス機能で、太陽光、白熱電球、蛍光灯(昼白色)のもとで撮影したものです。
太陽光のもとではもちろん、意外なことに蛍光灯のもとでも、ほぼ正しい色調が再現されています。
ちょっと気になるのは白熱電球で、少しだけ橙色が残っています。ただ、白熱電球の橙色は、家庭内などでの実際の照明でもわかるよう、温かみのある色調で、割合好ましく見えます。ですからこれは、わざと橙色を少し残すような設計にしているのだろうと思います。
2.3.2. 設定を変えて比較してみよう
オートホワイトバランス機能は、かなり優れたものですが、それでも被写体の色が正しく再現されないことも少なくありません。こうした場合には迷わず、ホワイトバランス機能をマニュアル設定してみましょう。
操作は一度やるだけで覚えられます。まずメニューボタンを押して、ホワイトバランスの項目を選択し、使用している光源の種類を選ぶだけです。
クールピクス 880 のメニュー項目とそれぞれの補正の効果は下記の通りです。
- 太陽光:写真や映像の基準となる昼光の色にホワイトバランスを固定します。
銀塩フィルムでいうデーライトタイプのリバーサルフィルムを使った場合とほとんど同じ色調再現になります。
以下の説明は、この「太陽光」モードを基準としたものです。 - 電球:青いフィルターをかけたような効果になります。
- 蛍光灯:明るい赤紫(マゼンタ)のフィルターをかけたような効果があります。
- 曇天:淡い青のフィルターをかけたような効果があります。
- スピードライト:淡い青のフィルターをかけたような効果があります。
(この項の詳細は、一眼レフ入門11回目の1章及び2章をご参照ください)

写真 18.
ホワイトバランスのマニュアル設定。
クールピクス 880 には、それぞれの項目ごとに少しだけ青味を強くしたり赤味を強くできる微調整機能も備わっていますので、照明器具の特性に合わせることもできます(クールピクス 880 では、ホワイトバランスのブラケティング撮影機能が搭載されました)。
また、蛍光灯の種類も、白色・昼白色・昼光色を選択できます。
ここで大切なのは、色調を正しく再現したい場合には、原則として光源は一種類に統一することです。例えば、白熱電球と蛍光灯など、異なる種類の光源を用いる(ミックスする)と、なかなか上手くいきません。
このホワイトバランスのマニュアル設定で、わざと間違った光源を選択すると、さまざまな色調の変化を楽しむこともできます。

写真 19.a.
太陽光に設定(光源は外部スピードライト)

写真 19.b.
スピードライトに設定(光源は外部スピードライト)

写真 19.c.
白熱電球に設定(光源は外部スピードライト)
上の写真(写真 19.a.〜19.c.)は、太陽光と同じ白色光の外部スピードライトを使用し、ホワイトバランス機能をマニュアルでそれぞれ設定したものです。色が変な写真も、それなりの味わいがあったりします。
とりあえずは、お手許のカメラでマニュアル設定の変更を試して、その違いを確認してください。
2.3.3. “伝家の宝刀”、プリセット機能

写真 20.a.
ホワイトバランスのプリセットを選択…。
ホワイトバランスのマニュアル設定を使っても色の再現がうまくいかない場合や、室内照明などでどうしても光源を一つに統一できない場合には、ホワイトバランスのプリセット機能を使うとよいでしょう。
これは、白紙など(純白のものが望ましいです)を試しに撮影し、その色(つまり光源の色)を白の基準に強制的に設定する機能です。この試し撮りの結果は記録メディアには記録されません。
この機能を使えば、よほど特殊な光源下でない限り、まず問題なく正しい色調再現が可能になります。ただし、デジタルカメラやモニタの特性の限界があって、特に渋い色(赤・緑・青といった原色の中間の色)は正しく再現するのが難しいようです。
さて、さまざまな機能を一気に紹介しました。ちょっと頭がパニックになっている方も少なくないかもしれませんね。あせらずに、ひとつずつ理解し、ひとつずつ操作を覚え、使いこなせるようになってください。

写真 20.b.
プリセットは白紙などをその光源のもとでテスト撮影するだけです

写真 20.c.
プリセットの表示
次回は、「パソコンで画像をいじる」です。お楽しみに。