第 3 回目・初歩の初歩 (3) 「パソコンで画像をいじる」

似顔絵 デジタルカメラで撮影した画像は、カメラの液晶モニタで見るだけでもずいぶん楽しいものです。なんと言っても、撮ってすぐに見られますし、気に入らなければすぐに消去することもできるのですから。
 でも、それ以上に楽しいのは、電子メールで送ったり、プリンタで印刷したり、あるいは加工(編集)したりなど、さまざまなことがパソコンを使って自分でできることでしょう。銀塩写真のように、現像処理や引き伸ばしのために暗室に入る必要もありません。

 今回は、このようにパソコンで画像を加工する際に、もっとも基本となる事項を簡単に紹介します。この記事を一通りお読みになれば、お手持ちのデジタルカメラやパソコン、そしてソフトウェアの仕組みが、少し深く理解できるはずです。
 とりあえず、画像を加工してみたい方は、3.2. からお読みください。

 なお、ここではクールピクス(COOLPIX 995 / 880 など)のパソコン接続キット(別売)に同梱されている Adobe Photoshop 5.0 LE 版(以下、Adobe Photoshop に略。5.0 LE は、画像レタッチソフトウェア(グラフィックソフトウェア)Adobe Photoshop 5.0 の諸機能から、よく使われている機能を選り抜いて価格を下げたバージョン(LE = リミテッドエディション)で、その後継・最新版は Adobe Photoshop Elements です)を使います。

 ウィンドウやキーボードは、Windows の操作で示しています。Mac OS での操作は( )内を参照してください。

3.1. デジタル画像の基礎知識

 デジタルデータは、例えば、”10111000110…….”といった具合に 2 進数で表示されますね。この “1” は、電源スイッチを “ON(IN)” にした状態に、”0″ は スイッチを “OFF(OUT)” にした状態にたとえられます。しかしなぜ、こんなもので、目に見える画像が記録できるのか、不思議でしょうがないのですが、ここではあまり深く追求しないことにします。
 ただ、「デジタル写真の画像は情報(データ)であり、数字の羅列で表示することもできる」とだけ覚えておきましょう。数字というのは、機械的な計算の格好の対象です。つまり、複雑な計算を繰り返すことで、画像そのものを調整したり組み合わせたりすることが、機械的に可能になります。これこそが、デジタル画像の最大の特徴といっていいでしょう。

 ここではまず、被写体の像が、どのようにして数字の羅列に変換されるのか? を紹介します。そして、この数字の羅列の仕方には、いろいろな方式があり、目的によって使い分ける必要があることまでを簡単に説明します。

3.1.1. 画像が電気信号になる ?

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図 1. 画像が電気信号(RAWデータ)になるまで。実際には、電気信号をデジタルカメラ内部でA/D(アナログ/デジタル)変換してRAWデータをつくる

 最初に、銀塩カメラやデジタルカメラ、あるいはビデオカメラなど、ほとんど全てのカメラは、光学レンズを使って、被写体の光の像を平面に映し、それを記録する(写す)装置だということを確認しておきます(詳しくは、「一眼レフ入門 一眼レフなんてこわくない」第 1 回目を参照)。

 デジタルカメラでは、投影された光の像を、撮像素子(CCD など)によって、電気の信号に置き換えます。ただ、銀塩写真のように、一枚の写真をフィルム上にそのまま記録するのではありませんで、画面を細かく細かく縦・横に切り刻んで、その部分部分に当たる光の量の多寡(強弱)を電気の信号に置き換えています。
 この切り刻んだ一つ一つの部分が、いわゆる画素(ピクセル)です。つまり、画素数が多いということは、画面をより細かく切り刻んで記録し、後で再現できるわけですから、単純に言えば、きめ細かな画質を得られやすいというわけですね。
 ただし、最終的に記録する画素数(ピクセル数)は、カメラの記録サイズの設定で変えることができます。
 ニコン クールピクス 880 の場合、記録画素数は、次のようになっています。

フルサイズ(SUXGA) 2,048×1,536=約310万画素(ピクセル)
XGA サイズ 1,024×768=約78万画素(ピクセル)
VGA サイズ 640×480=約30万画素(ピクセル)
3:2 サイズ 2,048×1,360=約280万画素(ピクセル)

 つまり、記録サイズの設定によって、同じ画質で出力できるイメージの大きさが変わるというわけです。記録サイズを少し無理して例えるなら、銀塩フィルムのフォーマットのサイズと考えることもできます。

– ここで一言 –
 [FULL] フルサイズモードは、カメラの撮像素子や画像処理の方法による記録画素数が上限の最高画質といえます。
 これに対し、XGAサイズモードあるいは、[1024]モードは、一般的なパソコンモニタの表示画素数(1,024×768ピクセル)に等しいものです。つまり、このサイズで記録した画像は、パソコンモニタのフル画面表示でちょうど納まる大きさというわけです。ですから、パソコンモニタで写真を見るだけなら、このサイズで記録するのが合理的です。
 VGAサイズモードあるいは、[640] モードは、テレビ(ビデオ)モニタの画素数(640×480ピクセル)に等しいものです。小さなノートパソコン(サブノートパソコンではお馴染みですね。
 さらに、QVGAサイズ<<モードあるいは、[320] モード)は、VGAの1/4サイズで、ポケットサイズのパソコンや PDA などでお馴染みですね。

 ここで、お手持ちのテレビモニタやパソコンのモニタ、あるいはデジタルカメラの液晶モニタをルーペで拡大して見てください。不思議なことに、写真や映像のイメージは、赤(R)・緑(G)・青(B)の、たった 3 色(加色法の3原色)の粒々だけで構成されていることがわかります。
 詳しくは3.3.1.に触れますが、人の眼に見える像は、これら赤・緑・青の 3 つの明るさの組み合わせの羅列として表現できるのです(詳しくは、「一眼レフ入門 一眼レフなんてこわくない」第 11 回を参照)。
 このため、撮像素子には、それぞれの色の光の量の情報を得るために、これらの 3 原色のフィルタ(原色系フィルタ)あるいは、補色系フィルタである黄(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)の 3 色(減色法の 3 原色)を採用しているものがあります。

3.1.2. 電気信号が画像データになるまで

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図 2. 電気信号が画像データ(TIFFデータ)になるまで

 撮像素子から取り出された電気信号は、それぞれの画素に当たっている光の量の情報だけが記録されたものです。この信号を、RAW(ロー)データと呼びます。ちなみに、raw は、”料理していない”とか、”加工していない”、”生の”、といった意味の形容詞です。
 RAW データを少し無理を承知で例えるなら、撮影直後のフィルムに写っている目に見えない潜像のようなものだと考えることができます。つまり、このままでは画像として見ることができません。
 ですから RAW データは、目に見える画像データに変換する必要があります。このために必要なのが、1 回目および 2 回目に紹介したようなデジタルカメラのさまざまな設定の情報です。デジタルカメラの内部にある演算装置(フィルム現像機に譬え(たとえ)られます)では、RAW データを各種設定情報と照らし合わせながら、画像データに変換します。カメラの露出補正やホワイトバランスなどを正しく設定しておかないと、思い通りの濃さや色調の写真にならない理由はここにあります。
 たとえば、デジタル一眼レフカメラ Nikon D1 シリーズでは、この RAW データでも撮影・記録することができますが、コントロールソフトウェア ニコン キャプチャー 2 などの専用ソフトウェアを使って、自分でパソコン上で画像データに変換(フィルムの現像処理に譬えられます)しなければなりません。

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図 3. 画像データを圧縮してJPEGデータになる

 さて、こうして画像として目に見えるように変換された電気信号の代表的な記録方式が、TIFF(ティフ)データと呼ばれるものです。ニコン クールピクス 880 などで、画質モードを [HI] (非圧縮)モードにした時に記録されるデータです。ただ、この TIFF データは非常に情報量が多い(ファイルサイズが大きい)のが欠点でして、撮影枚数が限られたり、記録に要する時間が多くかかるといった難点があります。

 多くのデジタルカメラでは、画像データをより実用的にするために、TIFF データを圧縮して、情報量(ファイルサイズ)を減らします。クールピクス 880 など、多くのデジタルカメラで採用されている圧縮の方式は、JPEG(ジェーペグ)方式(形式)と呼ばれるもので、できるだけ画質の低下がわからないように、情報量を減らすことができる特徴があります。
 この圧縮の比率を変えるのが、画質モードの設定です。クールピクス 880 の場合は、次のような比率になっています。圧縮率に “約” とあるのは、被写体の細かさや色調などによって、圧縮率が若干変わるためです。


FINE 約 1/4
NORMAL 約 1/8
BASIC 約 1/16

 注意しておきたいのは、JPEG 方式では、圧縮率を高くすればするほど、画像データの細部が失われることです。また、一度圧縮して保存したデータから、元の全てのデータに復元することはできません。つまり、保存を繰り返すたびに、少しずつ画質が低下することを忘れないでください。
 こうした元に戻らない圧縮を「非可逆圧縮」と呼びます。圧縮の方式には、これ以外にもさまざまな種類がありますが、写真・画像に関しては JPEG 方式がもっとも一般的かつ合理的なようです。

 さてさて、少し頭がクラクラしてきた読者も多いはずですが、ここまで来てやっと、私たちが普通に使っている画像(JPEG)データにまでたどり着きました。

3.1.3. 解像度を調整する

 カメラの記録サイズ、および画質モードの設定によって、写真の大きさや画質が変わることが、なんとなく理解できたでしょうか ?
 もし、実用性を考慮しないならば、できるだけ大きな記録サイズで、圧縮率の低い画質モードで撮影するのが一番です。良い画質で撮影した画像データなら、サイズを小さくしたり、画質を低下させたりすることは、いくらでもできますが、この逆はかなり困難ですからね。
 ただ、実用的に考えるなら、クールピクス 995 / 880 の場合であれば、記録サイズは フル(SUXGA) サイズ、画質モードは [FINE] が上限でしょう。私自身は、画質モードを [HI] にした場合、撮影枚数や記録時間などに不都合を感じます。
 もし、プリンタで印刷することはなく、Web 用(電子メールやホームページ上に掲載する)に使用するだけなら、記録サイズは XGA(1,024×768 ピクセル)サイズ、クールピクス 995 / 880 の場合であれば、画質モードは [NORMAL] にしておけば、撮影後の画像加工による劣化を考えても十分なはずです。

 さて、ここで、Web 用に使用するために、十分な画質を確保しながら、ファイルサイズを小さくするの方法を紹介します(ダウンサンプルといいます)。ファイルサイズを小さくすることで、通信に必要な時間を大幅に短縮できます。
 まずは、Adobe Photoshop を起動し、画像を開いてください。

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ダウンサンプルのための「画像解像度コマンド」の使い方

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ダウンサンプルのための「JPEGオプション」の使い方

【操作】

  1. ステータスバーで表示倍率を「100%」にするか、ツールボックスの「ズームツール」アイコン ズーム をダブルクリックします。こうすることで、画面上で表示される実際の大きさになります。
  2. 「イメージ」→「画像解像度…」を選択します。
  3. 画像解像度コマンドで、「縦横比を固定」と「画像の再サンプル」にチェックが入っていること、「解像度」がモニタで見る時に適した解像度である 72 dpi(ドット・パー・インチ=1 インチ(約 25.4 mm)あたりのドット数)になっていることを確認します。
  4. ピクセル寸法の「幅」ないし「高さ」を入力しなおして、「OK」をクリックし、適当な大きさになるよう調整します。
    Web で使用するなら、最大でも VGA サイズ(640×480ピクセル)を上限としたほうがいいでしょう。そうしないと、画面をスクロールしないと全体が見えないことがあります。
  5. 「ファイル」→「別名で保存」をクリックすると、「JPEG オプションコマンド」が表示されます。
  6. 「画質」を、「標準」or「低画質(高圧縮率)」に設定して保存します。ファイルの大きさと画質の兼ね合いを考えて調整します。

 次に、写真を家庭用プリンタを使って印刷する際に必要な解像度の調整を説明しましょう。
 Web での使用とは異なり、ファイルサイズは気にせず、画質を優先します。

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印刷のための「画像解像度コマンド」の使い方

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印刷のための「JPEG オプション」の使い方

【操作】

  1. 「画像の再サンプル」のチェックを外します。こうすると、「プリントサイズ」の「幅」、「高さ」、「解像度」の 3 つがチェーンで結ばれます
  2. 「解像度」の数値に、200〜360 dpi を入力します。「プリントサイズ」が変化しますが、とりあえず無視します。
    「解像度」の数値は大きいほど高精細なプリントになりますが、プリントサイズが小さくなります。また、プリンタ自体の性能よりも高い数値にすることは合理的ではありません
  3. 次に、必要なプリントサイズにします。
    まず、「画像の再サンプル」をチェックし、「プリントサイズ」の数値を入力します。大きなプリントにする場合には、画素と画素の隙間をソフトウェアが計算し、適当な濃さや色の画素を補間します(再サンプルアップといいます。写真のディテールを追加するものではありません)
  4. 「ファイル」→「別名で保存」をクリックし、「JPEG オプション」で、「最高画質」を選択して保存します

3.2. 画像を調整する

 ここでは、グラフィックソフトウェア Adobe Photoshop を使った、デジタル写真の基礎的な修正(レタッチ)の方法を紹介します。
 画像加工ソフトウェアを使うとなると、どうしても合成とか、特殊効果の技を使ってみたくなるのが人情ですが、ここで紹介する修正の作業をまず、マスターしていただきたいと思います。結構地道な技術ですが、これらを応用するだけで、一枚一枚のデジタル写真のイメージがずいぶん良くなることを実感できるはずです。

3.2.1. 画像を切り抜く

 写真は、画面に入っている全ての被写体を、光学的に記録します。このため、撮影時には全く気づいていない対象が画面内のあちこちに散見し、一枚の写真(絵)として見た時に、何が写っているのか ? あるいは、何を写したかったのか ? がさっぱりわからないことが往々にしてあります。
 画面の中にあまり多くの要素を入れないことが、見やすい写真を撮影するためのコツです。古くより「写真は引き算だ」と言われることがあるのは、こうした意味です。
 しかし、本当にこれが難しいですね。特に、写真撮影に慣れないうちは、何を撮影したいのかさえわからないのが実態ではないでしょうか。
 そこで、Adobe Photoshop を使って、画面を切り抜く(写真ではトリミングといいますね)方法を試してみましょう。
 画面を切り抜く目的は、画面周辺に写っている余分な対象をカットし、主要な被写体だけがよりよく見える画面にすることです。おそらく、多くの方は、「あれもこれも画面の中に入れておきたい」と思われることでしょう。でも、パソコン内では何度でもやりなおすことができますから、思い切って、バッサリと切り抜いてみます。
 上手く切り抜くだけで、一枚の写真の中で、主要な被写体だけがよりよく見えるようになるはずです。そして、この操作に慣れるほどに、実際の撮影の際のフレーミングも格段と上達しているに違いありません。

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「切り抜きツール」(左上)とオプションパレット(右上)の位置

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「切り抜きツール」を使って、画面左側の不必要な(?)人をトリミング

【操作】

  1. 切り抜きツール 切り抜き を選択します。ツールボックス内の矩形選択ツール 矩形 の右下の小さな三角形をプレスする(マウスボタンを押し続ける)と、隠れた関連ツールが表示されます。その中から、切り抜きツールを選択します(マウスボタンを離します)。
  2. 画像のサイズ(縦横の比率)を同じまま切り抜きたい場合には、オプションパレットの中の「固定画像サイズ」にチェックを入れ、「前景」をクリックします。
  3. 次に、画像の切り抜きたい部分をドラッグして指定すると、境界線でその範囲が囲まれます。
  4. 切り抜きたい領域の位置を変更するには、境界線の内部をクリック&ドラッグします。
  5. 切り抜きたい領域のサイズを変更するには、境界線のコーナー□(コントロールハンドル)をドラッグします。
  6. 領域を回転するには、境界線線の外側にポインタを合わせ、ポインタがカーブした矢印(○)に変わったことを確認してからドラッグします。
  7. 境界線が希望どおりに指定できたら、「enter」(Mac OS 機では、「return」)キーを押せば、切り抜きが実行されます。切り抜きを中止したい場合は、「Esc」(Mac OS では「esc」)キーを押します。

3.2.2. スタンプツールで修正する

 銀塩写真でよく使われる「修正」という言葉の意味を、そのままデジタル写真に置き換えたような効果があるのが、スタンプツールです。
 このツールは、画面の一部分をサンプリングし、他の場所にコピー(移植)します。このため、例えば、肌のニキビやシミなどを消したり、商品のキズを消したりなどが、いとも簡単にできます。
 ただ、修正したことがわからないようにするには、各種のオプション機能を使ったり、ある程度熟練することも必要でしょう。

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「スタンプツール」(左やや上)と、オプションパレット(右上)、ブラシパレット(右やや上)の位置

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「スタンプツール」を使って、修正を施したもの

【操作】

  1. 細かな修正を施したい場合には、修正したい部分を拡大して表示しておきます
  2. スタンプツール スタンプ を選択します
  3. ブラシパレットで、エッジの柔らかい(周辺がボケた)ブラシを選択します
  4. 「Alt」(「option」)キーを押しながら、コピー元を指定します
    この時、スタンプツールのアイコンの黒い三角(▼)が白く(▽)なることを確認してください。
    なお、コピー元は修正したい部分に近い場所で指定する方がよいでしょう
  5. カーソルを修正したい部分に合わせ、マウスボタンを押します。サンプリング位置が十字で示されていることを確認してください
  6. そのままドラッグすると、連続した修正ができます。シングルクリックをすれば、一カ所だけが修正されます
  7. サンプリング位置を変えて、修正のあとがわからなくなるように繰り返します

3.2.3. 部分的に調整するための各種ツール

 Adobe Photoshop には、さまざまなツールが準備されていますが、その中から銀塩写真での修正作業に近いいくつかを簡単に紹介しておきます。それぞれ、ツールを選択し、オプションパレットやブラシパレットで度合いや範囲の大きさを指定して、修正部分をクリック&ドラッグするだけです。
 操作自体は簡単ですが、より効果的に使用するには、ある程度の経験が必要でしょう。

▼ 3 つのフォーカスツール

 ツールボックスの初期状態では「ぼかしツール」になっている箇所をプレスすると他に「シャープツール」と「指先ツール」を選択できます。それぞれの効果は次のようなものです。

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「ぼかしツール」の位置とその効果。背景のジーンズをボカしています

  1. ぼかしツール ぼかし
     画像の中の鮮明すぎる部分や、コントラストが高すぎる部分を微妙に修正し、ぼかします。クリックを繰り返すことで、修正の度合いがある程度強くなります。
     ブラシパレットの選択によって修正する範囲を、またオプションパレットの「強さ」の数字によって、その補正の度合いを変えることができます。
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「シャープツール」の位置とその効果。時計の文字盤をシャープにしました

  1. シャープツール シャープ
     ぼかしツールと逆の効果があります。画像のぼけた部分を、ある程度シャープに見せることができます
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「指先ツール」の位置とその効果。
ジーンズをグニグニと延ばしてみました

  1. 指先ツール 指先
     修正したい部分をクリック&ドラッグすれば、その部分の色彩を指先で延ばすような効果を得られます。オプションパレットの「フィンガーペイント」にチェックを入れると、他の色を使うこともできます。

▼ 3 つの暗室ツール

 初期状態では、「覆い焼きツール」になっている箇所をプレスすると、「焼き込みツール」と「スポンジツール」を選択できます。
 銀塩写真で暗室作業をおこなった経験のある人には、非常になじみ深い効果を得ることができます。これらも、オプションパレットとブラシパレットを併用して、効果的に使用してください。

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「覆い焼きツール」の位置とその効果。画面上部を少し明るくしています

  1. 覆い焼きツール 覆い焼き
     画像の一部分を明るくします。画面の中で影になっている部分のディテールを補いたい場合や、白い被写体をより白くすることができます。
     オプションパレットの「露光量」で度合いを調整し、ブラシパレットで修正範囲の大きさを設定することができます。
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「焼き込みツール」の位置とその効果。画面上部を少し暗くしました

  1. 焼き込みツール 焼き込み
     画像の一部分を暗くします。画面のハイライト部分のディテールを見やすくしたり、シャドー部をより深い黒にしたりできます。
     オプションパレットおよびブラシパレットの使い方は、覆い焼きツールと同様です。
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「スポンジツール」の位置とその効果。饅頭の焦げ目の彩度を少し上げました

  1. スポンジツール スポンジ
     画像の一部分の彩度を変化し、色味を目立たせなくしたり、逆に鮮やかにできます。
     オプションパレットで、「彩度を上げる」または「彩度を下げる」を選択し、その「強さ」を指定して使います。

3.3. 階調や色調を調整する

 例えば、銀塩写真のリバーサル(スライド、ポジ)フィルムでは、一旦仕上がった写真の濃さ(白さ黒さ)や色調を変えることはできません。カラーネガフィルムでも、仕上がったプリントの濃さや色調を、自らの意思で調整しなおすことはまれでしょう。なぜなら、とても手間がかかるからです。
 しかしながら、写真の濃さや色調を上手く調整するだけで、ほとんどの写真は「美しい」とか「いい感じね」といった印象のイメージになることは事実です。

 デジタル写真では、こうした調整を、パソコン上で簡単にできます。ただし、念をいれておきますが、「撮影はいい加減にでもおこなって、後でパソコンで調整しよう」と考えることは、間違っています。そのために必要な時間と手間を考えると、最初からカメラの設定(特に、露出補正とホワイトバランス)を正しくおこなっておく(第一回参照)方が、はるかに合理的です。

 パソコンによる階調や色調の後調整は、一つに非常手段であり、二つ目に特殊な効果を得るためであり、三つ目には撮影のシミュレーションのため、と割り切っていただきたいと思います。

3.3.1. 色の仕組み

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図4. 簡略化した人の目のつくり。1. 角膜、2. 水晶体、3. ガラス体、4. 網膜、5. 錐体、6. 幹体。

 さて、ここまでデジタル画像についての説明ばかりでしたので、少し肩の荷を下ろすつもりで、人の眼の話をしておきましょう。
 冒頭に、デジタル画像は 3 原色でできているといった話をしました。デジタル画像だけでなく、銀塩写真や印刷を含むアナログ画像でも、基本的には 3 原色でできています。
 それはなぜでしょう?
 単刀直入に述べるなら、「人の眼が 3 原色の光をそれぞれ感じて、さまざまな色調を脳の中に描くようにできているから」です。
 図4.は、おそらく多くの読者がお馴染みの、目の断面図です。角膜と水晶体がカメラでいうレンズの役割を果たし、網膜が撮像素子(あるいはフィルム)の役割をしていることは、ご承知のことと思います。
 この網膜には、光を感じる視細胞があります。そして、視細胞には、大きく二つの種類があります。
 
 一つは、かなり暗い(弱い)光に感じる幹体(かんたい)細胞です。これは、暗闇のような環境で機能するもので、”色” を感じません。いわゆる “夜目” に色がないのはこのためです。

 そしてもう一つ。通常の視覚で機能している錐体(すいたい)細胞があります。ある程度の明るさ(強さ)のある光でしか機能しませんが、”色” を感じることができます。そして、まことに興味深いことに、人間の眼のこの錐体には、赤(R)、緑(G)、青(B)の 3 原色を、それぞれ感じる 3 種類があります。つまり、3 種類の錐体細胞が、それぞれどの程度の光を感じているか? によって、われわれはさまざまな色彩を脳の中に描いているのです。
 つまり、赤(R)、緑(G)、青(B)の 3 原色を使えば、人が認識するほとんど全ての色彩を再現できることになります。これが、パソコンのモニタやデジタルカメラ、あるいは銀塩写真の原理です。それぞれの色光を加えることで、さまざまな色が作り出せるため、「加色法の 3 原色」と呼びます。

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図 5. 三原色のリング(カラーホイール)。それぞれの色の配置を覚えると、色の仕組みが理解しやすいです

 そしてもう一つ、白色の光から、「加色光の 3 原色」の色を差し引いた “色” を想定することができます(考え方を変えれば、「加色法の 3 原色」を打ち消す効果のある “色” とも言えます)。白色の光から赤(R)を差し引くとシアン(C)になります。緑(G)を差し引くとマゼンタ(M)に、青(B)を差し引くと黄(Y)になります。
 これら、黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)は、「減色法の 3 原色」と呼ばれます。インクや絵の具など、白色光から特定の色光の成分を吸収してさまざまな色を再現する、印刷や絵画などでよく使われています。
 なんだか、言葉で説明するとややこしくなりますが、図 5. にあるようなリング(カラーホイール)に譬えると、非常にわかりやすく覚えやすいものになります。

 ( 3 原色の詳細については、「一眼レフ入門 一眼レフなんてこわくない」第 11 回を参照してください。)

▼蛇足

 補色の関係を数式で示すなら、次のようになります。

 R(赤)=−C(シアン)、G(緑)=−M(マゼンタ)、B(青)=−Y(黄)

 ここで、白色など色がない状態を “0” と表記し、これまでの話を総合するなら、次のようになります。

 R+C=0、G+M=0、B+Y=0、R+G+B=0

 こうして、”色” すらも、機械的に計算可能な対象となるのです。

3.3.2. バリエーションコマンドを使う

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「バリエーションコマンド」。それぞれの数字は、操作の手順に対応しています

 先に、「加色法の 3 原色(R,G,B)」、あるいは「減色法の 3 原色(Y,M,C)」で、さまざまな色を再現できることを説明しました。ただし厳密には、写真やモニタや印刷で再現できる範囲よりは、人の眼で見ることのできる色の範囲の方がかなり広いです。
 しかし、少なくとも、写真やモニターや印刷上で再現できる色の範囲は、これらの 3 原色で規定されます。つまり、これらの 3 原色を使うことで、写真の全体的な色調は自由に調整できるのです。

 Adobe Photoshop の「バリエーションコマンド」を使えば、初心者でも、3 原色を使った色調調整が、視覚的にわかりやすくおこなうことができます。さらに、イメージの明るさ/暗さ、そして彩度(鮮やかさ)も、このコマンドで調整できます。
 
「イメージ」→「色調補正」→「バリエーション」で、このコマンドを呼び出すことができます。

【操作】

  1. 左上に並んでいる写真の左側が「原画」、その右側が補正過程の「現在」の状態です。
    途中で何をやっているのかわからなくなったら「原画」の写真をクリックすれば、元に戻ります。
  2. 「シャドー」「中間調」「ハイライト」を選択して、カラーバランスを調整する階調を決めます。
    始めに「中間調」を選択し、後から「シャドー」ないし「ハイライト」を選択するのがいいかと思います。
  3. 「小←→大」のスライダにより、バリエーションの調整幅を変えることができます。
     1ステップで、2倍(1/2倍)の変化量になります。慣れないうちは調整幅を大きくしたほうが分かりやすいはずです。
  4. 左下に並んでいるのが、カラーバランスのバリエーションで、加色法と減色法の3 原色のリング(カラーホイール)状に整列しています。希望する色調に近い写真をクリックすれば、それがリング中央の「現在」に配置され、新しいバリエーションで整列しなおします。
  5. 右側の縦に 3 枚並んでいる写真は、明るさ/暗さのバリエーションです。希望する濃さに近い写真をクリックすれば、それが「現在」になります。
  6. 「彩度」を選択すると、カラーバランスのバリエーションが消え、彩度の異なる3枚の写真が並びます。
    希望に近い写真をクリックします。
  7. 「現在」の写真が希望どおりの色調になったら、「OK」をクリックします。

 画面にあるいくつもの写真を見ながら、色調や明るさ/暗さ、あるいは彩度を調整していると、何がなんだかわからなくなることもあるでしょう。常に”「原画」や身の回りにある実物と比較してみること”、を心がけてください。

 それから、はじめのうちは、”とにかく大幅に変えてみる” ことをおすすめします。一度、やりすぎまで調整してから、希望する状態に少しだけ戻すといった手続きは、よい結果に至るための早道となるでしょう。

3.3.3. 階調と色調の調整コマンド

 「バリエーションコマンド」では、非常に分かりやすい視覚的操作で、カラーバランスや明るさ/暗さ、そして彩度を調整できます。
 でも、これで満足できないケースも少なからずあるはずです。こうした際には、もっと微妙なコントロールができるさまざまなコマンドを使ってみてください。デジタル画像に関する正しい知識を身につけた後で、これらのコマンドを使えば、大変合理的に希望どおりの結果を得ることができます。しかし、なんとなく使ってみながら、経験的にそれぞれの使い方を熟知していくのも、作戦の一つでもあります。
 「結果よければ全てよし」は、私の信念でもあります。ま、気負わずに、気楽にいろいろ試してみることをおすすめします。 

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「レベル補正コマンド」。山のようなグラフが、ヒストグラムです

  1. 「レベル補正コマンド」と「自動レベル補正コマンド」
    「イメージ」→「色調補正」→「レベル補正」あるいは「自動レベル補正」で呼び出します。
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「自動レベル補正コマンド」。このメニューを選択・クリックするだけで、写真の濃さや色調などが自動的に補正されます

 「自動レベル補正コマンド」は、レベル補正を Adobe Photoshop が自動でおこなうもので、カメラでいうオート(露出およびホワイトバランス)のようなものです。かなり優秀ですから、まずは一度試してみてください。それで満足できなければ、手動で「レベル補正コマンド」を操作すればいいのです。

 「レベル補正コマンド」では、画像の濃さとコントラスト(明暗差)などを調整できます。
 波うつようなグラフを「ヒストグラム」といい、画面の中の画素(ピクセル)の数を、その濃さの順に並べたものです。
 山が左側にあれば、全体的に黒い画素(ピクセル)が多い画面であることを示します。
 逆に、山が右側にあれば、全体的に白い画素(ピクセル)が多い画面だという意味です。
 ヒストグラムの見方がわかれば、画像の濃さやコントラストを調整する際の目安として、非常に有効です。

 画像の濃さやコントラストの調整は、「スポイトツール」スポイト および「スライダ」でおこないます。
 また、「チャンネル」を切り換えることで、3 原色それぞれの色を単独で調整することもできます。

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「トーンカーブコマンド」。トーンカーブの意味を理解しましょう

  1. 「トーンカーブコマンド」
     「イメージ」→「色調補正」→「トーンカーブ」で呼び出します。
     トーンカーブとは何か? をここで説明する余裕がないので恐縮ですが、例えば、銀塩写真でいうフィルムの特性を自由に設定できる機能と考えていいでしょう。
  1. 「カラーバランスコマンド」、「明るさ・コントラストコマンド」、「色相・彩度コマンド」
     それぞれ「イメージ」→「色調補正」から呼び出せます。
     「バリエーションコマンド」では段階的にしかできなかった調整を、連続的に素早くおこなえます。
     「バリエーションコマンド」に慣れてから使うことをおすすめします。

     ちなみに、Adobe Photoshop 5.0 LE の後継・最新版である Adobe Photoshop Elements には「トーンカーブ」コマンドはありません。かわりに「ハイライトを暗く」(ハイライト部の “白飛び” を抑制)とか「シャドウを明るく」(シャドウ部の “黒つぶれ” を救済)といったコマンドを新たに設けています
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「カラーバランスコマンド」。色調を連続的かつ素早く調整できます

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「明るさ・コントラストコマンド」。写真の濃さやコントラストを手早く調整できます

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「色相・彩度コマンド」。マンセル色票系に慣れている方は、「カラーバランス」よりもこの方が使いやすいかもしれません

 さてと、今回も長々と説明してきましたが、前回同様、頭の中がこんがらがっていませんか ? 私自身もまだまだ勉強中でして、「画像調整に王道はない」ことは確かな事実のようです。
 とにかくは、慣れること。時間をかけてじっくりいろいろ試してください。

 一番大切なのは、調整した画像データの保存に注意することです。極力「上書き保存」は避け、「別名で保存」し、オリジナルの画像は残しておきましょう。

「Adobe Photoshop」は、Adobe Systems Inc.(アドビシステムズ社)の商標です。
「Windows」は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。
「Mac OS」は、米国およびその他の国で登録された米国アップルコンピュータ社の商標です。
文中の会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です。

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