目的別撮影テクニック集

2.春を撮る

1. ごあいさつ

ごあいさつ

 春の写真の代表として、「桜」「入園入学」「ID写真」を撮る方法を紹介します。いずれも日本の春をイメージする風物ですが、ちょっとしたポイントを覚えておけば、意外なほど簡単にちゃんとした写真を撮影できます。ぜひお役立てください。桜の撮り方は花や風景に、入園入学は子供写真全般に、ID用の顔写真は室内での人物撮影の基本としても、それぞれ応用可能です。

2.桜を撮る

似顔絵 日本の春といえば、何をさておいても桜です。そして私たちが桜という言葉からイメージする色は薄いピンクです。このため桜を写した写真といえば、そこに写っている花びらがどんな色でも、薄いピンクをした桜として伝わります。しかしできれば、見た目に近い、あるいは見た目よりもきれいな色で写したいものです。

ありがちな失敗写真の原因を考えましょう。

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<01>ありがちな失敗写真ですね。何が悪かったのでしょう。
<02>雰囲気のよい写真になりました。何を変えたのでしょう? <01>と<02>と比べて、何が違うのかを考えてみましょう。
 まず、明るさの印象と花びらの色が違います。よくよく見ると、<01>は、風のために花が動き、ブレて写っています。これらを解決するだけで、十分きれいな桜の写真になります。明るさの印象は「露出補正」、色の印象は「ホワイトバランス」(※)、ブレはISO感度の設定で対処します。操作自体は簡単です。しっかり使えるようになりましょう。 ※ネガフィルムで撮影する場合はプリント時の色調整で、リバーサルプリントで撮影する場合には撮影時に色フィルターを使って補正します。

カメラの設定でこれだけ変わる!

 露出モードを、P(プログラム)に設定します。そして露出補正で写真の明るさを、ホワイトバランスで写真の色を調整すれば、ほぼ見た目どおりの写りにすることができます。さらに、三脚などにカメラを固定すればカメラブレはなくなります。ただ、風などのために花自体が動く場合や、手持ちで撮影したい場合には、ISO感度を高く設定して、速いシャッタースピードで撮影するようにします。

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<03>ずいぶん暗く、桜らしくない色で写っています。しかも風で花が動いたために、ブレも大きくなりました。
<04>薄曇りの影で撮影していましたので、ホワイトバランスを「曇り」モードにしました。ブレを防止するために、ISO感度は500に。だいぶんいい感じです。
<05>露出補正を+1に設定したら、とても明るい印象になりました。写真写りの明るさ暗さは、露出補正機能で自由自在に調整できることを覚えておきましょう。

晴れた場所で撮る。

 直射日光が当たっている場所では十分な光量がありますからブレの失敗も少なく、色もきれいに写ります。問題になりやすいのは、キツイ影。これによって、花の柔らかい印象が失われがちになりますので、こんな物を使ってみるのはどうでしょうか。
 もちろんですが明るい場所で撮影しても、白い(明るい)色の花は、濃く写りがちです。このような場合にも、露出補正をプラス(+)方向に調整すればOKです。

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針金(針金ハンガー)を丸くしたものに、レジ袋(乳白のビニールやトレーシングペーパー)を、セロハンテープで張っただけです。写す範囲を覆うくらいのサイズが必要です。

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直射日光が当たっているために、影ができ影によって花びらのシワが目だちます。これはこれできれいです。露出補正は+0.7に設定しています。

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撮影する花を影にするように覆います。影で暗くなっても、カメラの自動露出(AE)機能が働き、写真の全体的な明るさは変わりません。

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白い覆いによって、影の境界が柔らかくなりました。また、ほんのり赤みが増し、桜のピンク色が際立ちました。

青空を際立たせるには?

 桜の薄いピンクは、晴天の青空を背景にすると、さらにその美しさが際立ちます。しかし青空を写真に撮ると、意外なほど白っぽく写りがちです。このように空の青を際立たせたい時には、偏光(C−PL)フィルターと呼ばれるアクセサリーを使います。
 偏光(C−PL)フィルターは、青空の光に含まれる特定の偏光成分をカットすることで、青を際立たせるものです。

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偏光(C−PL)フィルターは、濃いグレーで色はありません。シャッタースピードが遅くなりますのでブレに注意します。

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<11>フィルター枠の回転の角度が悪いと、効果がありません。また、太陽の位置とカメラアングルによっても効果が異なります。
<12>ファインダー像を観察しながら最も効果の強く見える角度に調整すると、青空だけが濃くなり、桜とのコントラストが際立ちました。

3.入園記念を撮る

似顔絵 春と言えば、入園入学。お子さんよりも親御さんにとってこその一生の記念日。できればちゃんとした写真を残しておきたいものですが、入園入学式当日だけに集中するのではなく、毎日が入園入学式と考えて、気長に写真を撮り続けて欲しいと思います。いい表情を撮るには、新しい服で写真に撮られることに慣れることも大切です。シャッターチャンスを狙ったり、背景をボカしたりするには、デジタル一眼レフカメラがオススメです。

ありがちな失敗写真の原因を考えましょう。


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<13>ありがちな失敗写真ですね。何が悪かったのでしょう。
<14>雰囲気のよい写真になりました。何を変えたのでしょう? <13>と<14>と比べて、何が違うのかを考えてみましょう。
 一番目につくのは、背景ではありませんか? 子供はどのように写っていてもかわいいものですが、駐輪場が背景になっているのはちょっといただけませんね。背景に桜が写っているだけで、春や入園式を連想させていい感じに見えます。でも、自宅や学校には、こんな上手い具合に桜が咲いていないかもしれません。天候もあります。ところがところが、いつでもどこでも桜を咲かせる作戦があるのです。

ズームとカメラポジションに気をつける。

 子供は小さく、大人は大きいですから、普通に写真を撮ろうとすると、どうしても俯瞰気味になります。また、普通にお話ができる距離感、つまり1メートル前後の間隔で撮影しようとするとズームを広角側にしてしまいがちです。  人物をきれいに写すには、ズームを望遠にして、できるだけ遠く離れた位置から撮影すること。さらに子供の目の高さで撮るようにすることも忘れないようにしましょう。

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普通に構えるとAからになりがちですが、ズームを望遠にして遠く離れ、子供の目の高さのBで撮ってみましょう。

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<16>Aの位置から撮ると、頭でっかちに写ります。これはこれでかわいいのですけれど・・。
<17>Bの位置から撮ると、全身のプロポーションがきれいに写ります。ちょっとだけ大人っぽく見えるかもしれません。

背景に桜を写す、隠し技?

 入園入学式のイメージには、桜がつきものです。しかし撮影に適した本物の桜が近くにあるとはかぎりません。こんな時には、造花を使ってみてはいかがでしょう。最近の造花は安価で、おどろくほど実物どおりにできていることもあり、写真にはまるで本物のように写ります。冗談みたいですが、ぜひ家族で楽しんでください。

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造花の桜をママが持って、背景に入れます。高さや位置も思いのまま。ファインダーを見ながら調整しましょう。

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<19>ズームを望遠にして撮影すれば、背景に写る範囲が狭くなるため、背景がすっきりします。
<20>嘘だとわかっていても、春らしく感じてしまうのです。写真って本当に不思議ですね。

背景をボカして撮影するには?

 人物だけピントばっちりで、背景が大きくボケたイメージは、レンズの小さいコンパクトカメラではなかなか撮れません。背景を大きくボカすためには、(1)一眼レフカメラを使う、(2)ズームを望遠にする、(3)背景と人物をできるだけ離す、(4)露出モードをAモードにしてレンズの絞り値(F値)の数字を小さく設定します。露出モードをポートレートモードに設定しても、同様の効果を得られます。

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Aモードで絞り値(F値)を小さく設定することで、背景を大きくボカして写すことができます。

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<22>絞り値(F値)を大きくすると、背景がボケず、ブレ(桜に注目)が大きくなります。
<23>絞り値(F値)を小さくすると、背景が大きくボケ、ブレは少なくなります。

4.ID写真を撮る

似顔絵 春には、会社やクラブなどに新しいメンバーが増えます。そこで必要になるのが、ID写真です。もちろんプロフェッショナルにおまかせするのが確実ですが、デジタルカメラやプリンターもお持ちなら、自分たちで撮ってみましょう。意外なことに、普通の事務所でも白壁さえあれば、十分きれいなID写真が撮影できます。仲間で気楽に撮れば、いい表情をゲットできるかもしれません。

ありがちな失敗写真の原因を考えましょう。

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<24>ありがちな失敗写真ですね。何が悪かったのでしょう。
<25>雰囲気のよい写真になりました。何を変えたのでしょう? <24>と<25>と比べて、何が違うのかを考えてみましょう。
 パッと見た目に<24>はアマチュア、<25>はプロフェッショナルな感じがするはずですが、<25>はプロ用の照明機材を使ったわけではありません。室内の天井にある蛍光灯照明だけで撮影しています。  まさか? とお思いになられたかもしれませんが、各種の設定を正しく行えば、このレベルの顔写真はかなり手軽に撮れるのです。

ブレ対策と露出補正がポイント。

 室内の蛍光灯照明は暗くて、写真撮影には適さないと信じられています。なぜかというと、光が十分でないためにシャッタースピードが遅くなり、カメラブレや被写体ブレになりやすいのです。このために内蔵ストロボが発光するのですが、これはあまりきれいには写りません。ただし、ブレ対策をしっかり行うこと、そして露出補正で肌を明るく写すことがポイントです。

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カメラを三脚などに固定し、必要に応じてISO感度を400や800などの高感度に設定するだけで、ブレは防げます。白画用紙を壁に貼って背景にしました。

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<27>内蔵ストロボを「発光禁止モード」に設定すると、光は自然ですがブレた写真になります。露出補正をしていないために、暗い感じになりました。
<28>露出補正を+1に設定すると、色白の顔写真になりました。日焼けした顔を強調したい場合には、少しマイナスにしてもOKです。

肌をさらにきれいに写すには?

 肌は、人によって大小はありますが、凸凹があります。このため、光の当たり方によっては影が強調され、見た目よりも凸凹した肌に写ってしまいます。こうした写りを弱めるためには、影を弱めればよいわけです。つまり、光源の反対側に光を反射する白板などを置けばよいのです。実際には、新聞紙大の白紙や白布などを膝上か胸元に置いて撮影するだけです。

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<29>白板は、写される人が手で持ちます。実物の光の当たり具合を見ながら高さや向きを調整してみましょう。白い物であれば、紙や布以外でも使えます。

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<30><31>と同じ条件で撮影しています。肌の凸凹はこの写真では見えませんが、髪の毛や鼻、あご下の影に注目してください。
<31>間違い探しのように、<30>との違いを比べてみましょう。影に大きな違いがあります。

外付けストロボでプロ並みに挑戦!

 外付けストロボを使った撮影は、光と影の写り方を調整するのがとても難しいものですが、デジタルカメラなら撮ったらすぐに結果がわかります。何度かテスト撮影を行えば、プロっぽいイメージの顔写真も撮影できます。ポイントは、ストロボの光を白壁などにいったん反射させてから被写体に当てることです。いわゆる間接照明を使って、柔らかい光と影を演出するわけです。

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クリップオンタイプのストロボの発光部を動かし、白壁などに光を反射させてから被写体を照明します。バウンス撮影などといいます。

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<33>(1)(2)は白壁や白板で、光を反射させます。背景に被写体の影が落ちないよう、壁との距離(3)を80センチ以上離すのがコツです。
<34>陰影の感じを<29>と比べてください。光が画面左方向から当たっているため、顔の立体感が美しく感じられるはずです。

最後に

似顔絵 春を撮るというテーマですが、花と子供、顔写真の基礎という具合に考えていただければ幸いです。いい写真を撮るには、ちょっとした手間を惜しまず、数多く撮影することが大切です。一枚で諦めないでくださいね。

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