目的別撮影テクニック集

3.料理を撮る

1. ごあいさつ

ごあいさつ

 和食、和菓子、洋菓子(ケーキ)を例にして、料理の撮り方を紹介します。写真は、平面の画像に過ぎませんから、当然のことながら味も匂いも写りません。しかし、美味しそうに感じる写真とそうでない写真があることも確かです。これらの違いの原因を考えれば、美味しそうに撮るための秘訣がわかるはずです。答えは意外なところにありました。料理撮影のテクニックをご紹介しましょう。

2.和食を撮る

似顔絵

 料理は、いくら高価でも美味でも、食べてしまえばなくなります。だからでしょうか、「写真として残したい」「ブログなどで人に伝えたい」といった欲求がつのります。かといって料理写真のプロのような手間はなかなか掛けられません。例えば天ぷらをサクサクっと美味しそうに撮るための方法とはどんなものでしょう。実をいうとその秘訣は、写真のテクニックというより、盛りつけのテクニックに近いのです。

ありがちな失敗の原因を考えましょう。

01

<01>
カメラオートで撮影。カメラ内蔵スピードライトが発光しています。

02

<02>
構図を工夫し、ストロボも使わずに撮影。

<01>と<02>を比較した時、大きな違いは画面内の配置と光の加減です。<02>は料理を密集させ、かなりアップで撮影しています。画面からはみ出ていてもお構いなし!だからこそ、ボリュームを感じるのですね。もちろん、食べることを考えるなら、整然と並んでいる<01>が良いかもしれません。つまり、写真で美味しそうに見せるためだけの並べ方があるのです。まずは、ファインダーを覗きながら、料理を並べ変え、できるだけアップで撮影してみましょう。

料理を並べ替えてみます。

03

<03>
ファインダーを覗きながら、全ての料理を密集させます。メインの天ぷらを一番手前に。

 実際に料理を食べる場合は、箸を持つ手や食べる順番などから、それぞれの配置が決まります。しかし、写真に写った料理は、決して食べられません。ですから四角い画面の中で、メインの料理を一番大きく、その他は、画面の隙間を埋めるように配置するのが基本です。この場合は、天ぷらがメインですから、天つゆやご飯、味噌汁、漬け物は、画面の端にちょっと写っているだけで良いのです。これだけでも、日本人なら、それとわかってしまうでしょう。もちろんこの料理を知らない人に対しても、メインは何かがはっきりわかるよう画面の中に大きく写すのが、基本なのです。

04

<04>
ズームアップして撮影。料理のボリューム感がアップします。(天井の蛍光灯だけで撮影)

05

<05>
さらにズームアップ。画面からはみ出ていても、想像力をかき立てられるのです。

逆光で撮ってみましょう。

06

<06>
<05>の撮影状況と同じまま、奥の窓から光が当たるような状況にしました。

 お店で撮影したり、自宅の食卓で実践するには、ちょっと大変かもしれませんが、光に注目することです。料理の向こう(奥)から光が入ってくるような状況で撮影すればさらに美味しそうに撮影することができます。対象の向こう側に光源がある状態を、逆光といいますが、まさにこの逆光で撮れば良いのです。
 ここではまず、もっとも簡単な方法として窓際で撮影した場合の違いについて紹介します。卓上ランプで実践する方法は、4. 洋菓子を撮る、で紹介しますが、いずれも考え方は同じです。

07

<07>
光の当たり方によっては、全体的に暗い印象の仕上がりになります。この場合には、露出補正を+(プラス)方向に調整します。

08

<08>
露出補正を行い明るくなりました。

<08>は、<05>と比較すると、陰影の出方がきれいで、立体感(天ぷらのサクサク感や、ご飯の一粒一粒)が際立っています。

ブレ対策を考えましょう。

09

<09>
カメラブレが大きいとボケたような写真になります。ピンボケではありません。

 料理を撮影するのは多くの場合、室内ですから、光の強さは十分ではありません。このためカメラオートで撮影した場合には、カメラ内蔵スピードライトが発光し、光が正面から直接料理に当たるため、あまり美味しそうには写りません。
 だからといって、カメラ内蔵スピードライトをOFF(発光禁止)にすると、カメラブレが生じやすくなります。このような場合には、カメラのISO感度設定を高感度にしたり、三脚などを使ってカメラを固定する工夫をしてください。そうすることで相当暗い場所でも、美味しそうな料理写真を撮影できます。

10

<10>
ISO感度設定を800など、高感度に設定するだけで、カメラブレは軽減します。

11

<11>
カメラを固定することでも、カメラブレが軽減します。三脚を使えばもっとも確実です。

3.和菓子を撮る

似顔絵

 透明パックに入った和菓子を撮ってみます。透明パックは、予期し得ない光を反射し、撮影するのが難しいものです。失敗なく確実に撮影するには、透明パックを外して撮影することですが、ちょっとした工夫で、反射を無くすことができます。
 お料理作りに似て、ちょっとしたひと手間でプロの写真のようなイメージにする秘訣は、ここにあるのです。

ありがちな失敗の原因を考えましょう。

12

<12>
透明パック入りを、そのままカメラオートで撮影。

13

<13>
天井の蛍光灯だけで撮影しました。

 なにげなく撮影すると、<12>のような撮り方になりがちです。問題は、画面中央下の影。これは、レンズ本体の影です。カメラ内蔵スピードライトは、カメラの近くに発光部がありますから、レンズ自体の影がでることがあるのです。画面周辺が暗くなっているのも、スピードライトの光が十分に届いていないことが考えられます。いずれも、ズームを広角側にしていることが原因ですので、望遠にして、少し離れた位置から撮影するだけで解決します。<13>は天井の蛍光灯だけで撮影していますが、ずいぶんと印象が良くなっているとは思いませんか。このように写すにはいったいどんなテクニックが必要なのでしょう。

透明パックの反射を無くすには ?

14

<14>
透明パックの表面が真っ白に。天井の蛍光灯を反射しているのです。

 食品に限らず、中身の見える透明パックが使われているものは少なくありません。ところが、これらの表面には光沢があり、光を反射します。この反射が、写真では真っ白に写ることがあり、中身を見えなくさせてしまうのです。
 しかしこれは、天井などの光源の光を反射したものにすぎません。つまり、被写体の置き方や角度、カメラ位置、あるいは天井の光源の位置を変えれば、反射は写らなくなるのです。ただし、全ての反射を消してしまうと、逆に透明パックらしさが失われてしまいます。ちょっとした一手間ですから、ぜひ試してください。

15

<15>
和菓子の置き方を変え、消しゴムを使って少し斜めにしました。

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<16>
角度を付けたことによってほとんどの反射が消えました。

下地(背景)で変わる和菓子のニュアンス。

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<17>
ピンクの紙。優しそうな、春っぽい雰囲気になりました。

 料理写真だけでなく、小物の撮影には、その背景となる下地の選び方がたいへん重要になります。というのも、下地の色や雰囲気により、被写体そのもののニュアンスが大きく左右されるからです。
 なんとなく締まらない感じだなとか、もうちょっとなんとかしたいといった場合には、まず撮りたい被写体をより引き立てるような下地に変えてみましょう。

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<18>
模様のある和紙。高級和菓子の印象です。

19

<19>
濃い色の和紙。形がくっきり見えます。

食べるシーンを想像してみましょう。

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<20>
お茶を組み合わせて撮影。これだとどっちがメインだかわかりません。

 和菓子を食べる時、多くの人はお茶を連想するはずです。つまり、画面の中にお茶が写っていることで、写真を見る人は、和菓子を食べるシーンをより直接的に連想するのです。イメージによる味覚は、単品をきれいに写すよりも、他の食べ物との組み合わせによってこそ、強く印象づけられるのです。
 料理や食品の広告写真を見る時、メインの食材の背景に写っている食材に注目してみると、面白い発見がありますよ。

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<21>
エリアの大半をメインの被写体に構成。

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<22>
背景を工夫。花や緑をあしらうことで、新鮮さや季節感を強く連想します。

4.洋菓子を撮る

似顔絵

 和食の撮り方で画面の中の配置を、和菓子の撮り方で背景による演出を学んできました。最後にショートケーキを例に、光の当て方について紹介します。ショートケーキなど、あまり大きくない食べ物であれば、卓上ランプなどを用いるだけでかなり高度な撮影が可能です。
 これらは、それぞれの食材に特有な撮影方法というのではなく、全ての料理撮影の基本といっていいものですから、それぞれの食材に応じて応用していただきたいと思います。

ありがちな失敗の原因を考えましょう。

23

<23>
卓上ランプ(白熱電球)を使って、カメラオートで撮影。

24

<24>
ホワイトバランス機能を使用して撮影。

 <23>と<24>では、ショートケーキの置き方や背景も同じです。撮影環境は同じなのに、なぜこんなに見違えたのでしょう。目につく違いは、色と濃さですね。その場の光源や明るさを変えるのではなく、デジタルカメラで撮影する時の写真の色はホワイトバランス機能で、写真の濃さは露出補正機能で、かなり自在に調整できます。
 また、<24>の方が、質感が美しく再現できています。これは光の位置によって、影の出方が変わったためです。

ホワイトバランスと露出補正を調整しましょう。

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<25>
ホワイトバランスを「電球」に設定すると、色の偏りはなくなりましたが、暗い感じのままです。

 デジタルカメラでは、撮影した写真の色が違うとか、見た目よりも暗いといった場合に、すぐに撮り直すことができます。色が違う場合にはホワイトバランス機能を、明るさが違う場合には露出補正機能を使います。
 この場合では、卓上ランプが白熱電球タイプでしたのでホワイトバランスを「電球」に、また見た目よりも暗い写りでしたので露出補正を「+1.3」に設定しました。

26

<26>
露出補正を「+1.3」に設定すると、色の偏りはありますが、画面が明るくなりました。

27

<27>
ホワイトバランスと露出補正の両方共調整すると、色も濃さも見た目に近い感じになりました。

光の当て方を変えてみましょう。

 卓上ランプを用いた撮影などでは、光源の位置をある程度自在に調整できます。光の当て方を変えながら撮影してみると、写真の印象ががらりと変わることに、きっと驚かれるはずです。
 料理をおいしそうに写すには、逆光気味に光を当てるのが基本です。つまり、料理などの被写体の向こう側に光源を位置させるわけです。

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<28>
カメラ側から光が当たる状態を、「順光」といいます。

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<29>
カメラ内蔵スピードライトで撮影したのと、あまり変わらない印象です。

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<30>
料理などの真上から照明を当ててみます。

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<31>
真上から光を当てると、わりあい見た目に近い自然な写りになります。

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<32>
被写体の向こう側から光が当たる状態を、「逆光」といいます。

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<33>
手前に影が落ちて、苺やクリーム、ケーキの立体感が際立ち、ドラマチックな印象です。

白紙などで影を明るくします。

 料理撮影を行うプロフェッショナルが使う道具に、レフ板(レフばん)という道具があります。レフは、反射を意味するレフレックスの略ですから、単純に光の反射板と考えて良いでしょう。反射というと、鏡のような素材を思い浮かべますが、多くの場合の写真撮影では白紙などで自作した板が使われます。料理を撮るなら、A4コピー用紙やノートでも十分用が足ります。
 たとえば、<33>で気になる手前の影を、小さなレフ板を使って明るくしてみましょう。たったこれだけで、料理のパンフレットになりそうな写真のできあがりです。

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<34>
白紙で作ったレフ板を使って、光源の光を反射し、被写体の影の部分を明るくします。

35

<35>
<33>と比べると、全体的な雰囲気はそのまま、手前の影が明るくなっています。とてもおいしそうな写真になりました。

最後に

似顔絵

 料理を美味しそうに撮るための方法をお伝えしてきましたが、撮影技術もさることながら料理を美味しそうする演出も大変重要なポイントです。盛りつけ方、背景、器、他の食材との組み合わせ、そして配置。その上で、カメラの設定や光の当て方を調整してみましょう。まるで料理本のような写真が、わりあい簡単に撮影できますよ。

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