目的別撮影テクニック集

5.小さな物を撮る

1. ごあいさつ

ごあいさつ

小さな物を画面一杯に撮影する事を、接写とかマクロ撮影といいます。通常の撮影に比べると、ピントが合いにくく、ブレ易く、形や質感がきれいに写らないなど、意外に難しいのが特徴です。だからこそ、ちゃんと写せるようになるだけで、写真の面白さがグンと広がります。今回は、小さな物をきれいに撮影するための基本を一通り紹介します。

2.ピントを合わせる。

似顔絵

小さな物に近づいて写真を撮影しようとすると、ピントが合わないことをよく経験します。コンパクトデジカメであれば「花のアイコン」で表示されているマクロ撮影モードに切り換えるだけで、さらに近づいてピントを合わせることができますが、それでも限界があります。一眼レフカメラでも、使用しているレンズによって、ピントを合わせられる距離の限界が決まります。

ありがちな失敗の原因を考えましょう。

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ピントが合っていません。

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ピントが合っています。

どのようなカメラ(レンズ)にも、ある程度以上近づくとピントが合わない限界があります。これを「最短撮影距離」といいます。つまり、最短撮影距離よりも近づいて撮影した場合、決してピントは合いません。オートフォーカスの場合には、シャッターボタンを押しても写真は撮れません。
さらに近づいてもピントを合わせるための方法を次に紹介します。目的や予算に合わせて、試してください。

クローズアップレンズを使う。

通常のレンズの先端にねじ込むだけで、さらに近づいてピントを合わせられるアクセサリーをクローズアップレンズといいます。
これは単純な凸レンズで、要は、カメラにつける老眼鏡のような物です。つまり、近くにピントの合わない老眼(カメラ)を矯正するために、凸レンズでできた老眼鏡(クローズアップレンズ)をかけるのです。
老眼鏡と同様、度数の異なるタイプが各種市販されています。老眼と同様、一時的に使いたい場合には、虫眼鏡でも代用できます。

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レンズ先端にクローズアップレンズをねじ込むだけです。

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さらに近づいてもピントが合うようになります。

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ピントが合いました。

マクロレンズを使う。

小さな物を撮影するために設計されたレンズを、マクロレンズとか、接写専用レンズなどといいます。ニコンの場合には、マイクロニッコールと名付けられています。 専用の設計なので、画質や使用感などの性能も抜群です。通常のレンズと同様に、焦点距離の異なるタイプがあります。焦点距離で何が変わるかは、「3.形をきれいに写す」で紹介します。

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マクロレンズは、同じ焦点距離のレンズより長くなります。

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<04>に比べるとかなり離れているのですが。

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さらに大きくピントばっちりで写せます。

接写リングを使う。

マクロレンズを使っても、近づける限界があります。もっと近づいて、小さな部分を大きく写すには、接写リング(中間リング)と呼ばれるアクセサリーを使います。
接写リングとは、カメラとレンズの間に挿入する中空の筒です。この筒によって、レンズをさらに前に繰り出すことで、小さな物にピントを合わせられるのです。
機種によっても異なりますが、オートフォーカス(AF)や自動露出(AE)などが使えなくなりますので、マニュアル操作で撮影します。でも、デジタルカメラなら撮影結果がすぐにわかりますので、設定を調整しながら試行錯誤するだけです。

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ボディとレンズの間に接写リングを入れます。

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さらに近づいて撮影できます。

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接写というより拡大撮影の楽しさを味わえます。

3.形をきれいに写す。

似顔絵

小さな物に近づいて撮影すると、なんとなく形がゆがんだように写ることがあります。実は、望遠レンズを使って遠くから小さな物を大きく写せば、形がきれいに写るのです。
マクロ撮影=近づけばよい、というのではないのです。ちょっとわかりにくいかもしれませんが大切なことですので、しっかり理解してください。

違いをしっかり見比べてください。

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形が少し歪んで、ちょっと大きな感じに見えます。

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平行線がほぼ平行に写って、形がきれいに見えます。

同じ物を、画面の中に同じくらいの大きさで写した2枚の写真です。何が違うか、間違い探しのように見比べてください。
まずビンの形が違います。そして背景のバラの写り方も違います。形はどちらがきれいですか? どちらの方が大きなビンに見えますか?

広角レンズで近づいて写す。

コンパクトデジタルカメラや、マクロ機能付きのズームレンズでは、被写体にかなり近づくことで、マクロ撮影ができるようになります。この時、レンズの焦点距離は割合に短く広角レンズになっていることが多いのです。
被写体に近づいて撮影するため、遠近感が強調され、形が歪んだように写ります。結果として、ボリューム感のある印象になります。

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広角レンズで近づいて写しています。(35ミリ)

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形が歪んだようになり、背景に広い範囲が写ります。

望遠レンズで遠くから写す。

焦点距離の長い望遠レンズを使えば、被写体から離れていても、小さな部分を大きく写せます。また、遠くから写すため、遠近感が抑えられ、形がきれいに写ります。
マクロ撮影=近づいて写す、といったイメージがありますが、実は、望遠レンズで遠くから小さな物を写した方が、印象のよい写真になりやすいのです。
焦点距離」と「最短撮影距離」は、まったく別モノですので注意してください。

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望遠レンズで遠くから写しています。(105ミリ)

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形がきれいで、背景のバラも大きく写っています。

望遠レンズを使う時はブレに注意しましょう。

マクロ撮影は、被写体の小さな部分を大きく写していますから、カメラの少しの動きが大きなブレになって写ります。このため、マクロ撮影では、ISO感度を高くしたり、カメラを三脚などにしっかり固定したりなど、ブレを防止するための工夫が必要です。
カメラの動きに合わせてレンズを微動させ、ブレを軽減するVR(バイブレーション リダクション)機能付きのレンズを用いれば、手持ち撮影可能な範囲が広がります。
ピンボケ?と思う写真の多くが、こうしたブレですから、注意しましょう。

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ピンボケではありません。カメラブレです。

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VR105ミリ マイクロニッコールレンズ。

4.質感を表現する。

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ゴールドらしくない写りです。

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表面のなめらかな光沢がきれいです。

光沢がある被写体は特に、その質感をきれいに写すことが難しいものです。
質感を見た目の感じで写すには、光の当て方を工夫します。光の当て方などというと、専用の機材が必要な気がするかもしれませんが、光の種類は何でもよいのです。
要は、発光面の大きさです。ここでは、レジ袋で作成したディフューザーを使うことで、光沢感がどのように変わるかをお見せしましょう。ちょっとしたことで、質感の描写が驚くほど変わります。

カメラ内蔵ストロボで撮影する。

カメラ内蔵ストロボは、一瞬の強い光を発しますので、カメラブレのない撮影が簡単にできます。ただ、発光部が小さいために、被写体の光沢面に小さく強い反射ができたり、背景に強い影が落ちます。このため、質感をきれいに写すことが難しいのです。
でも、ディフューザーで発光面を大きくするだけで、目を見張るほどきれいな写りになります。

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カメラ内蔵ストロボで撮影しました。

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表面にストロボ光の反射ができ、背景に強い影が落ちています。

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ストロボの光をディフューザーで拡散し、大きな面光源のようにします。

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表面の光沢がなめらかに写り、背景の影もなくなりました。

室内蛍光灯で撮影する。

室内蛍光灯の光は、写真撮影に適した明るさではありません。しかし、カメラを三脚などにしっかり固定しさえすれば、見た目に近い自然な写りで撮影できるのです。
暗い=きれいに写らない、という考え方は間違っています。ブレにさえ注意すれば、十分きれいな写真が撮れるのです。

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室内蛍光灯の光だけで撮影。

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十分きれいですが、蛍光灯の光の反射がうるさい感じがします。

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ディフューザーで覆うだけで。

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表面の光沢がなめらかになり、形も見やすくなりました。

卓上ランプで撮影する。

自由に動かせる卓上ランプを使えば、光の当て方をさらに自由に調整できます。電球や蛍光灯など、使用している光源に合わせてホワイトバランスを設定しましょう。それだけで被写体の色調も正しく写すことができます。

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卓上ランプで撮影します。室内照明は消しておきましょう。

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卓上ランプの位置を変えることで、反射の位置を変えることができます。

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ディフューザーを使うと。

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表面の光沢が非常にきれいになり、立体感も強く感じられます。

最後に

似顔絵

小さな物を大きく写すマクロ撮影は、それだけで非日常的な写真の楽しさを味わえるジャンルです。ただ写ればよいというのではなく、できるだけきれいに写るよう、いろいろな工夫をしてみましょう。そのための基本が、ここに紹介したピント、形、質感なのです。

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