88) 写真を学ぶ 15

 写真学校に入るために上京して半年くらいは「おのぼりさん」気分で、写真撮影をかねて浅草、上野、銀座、新宿、渋谷をいわば観光していました。少し慣れてきて1年くらいすると、映画、演劇、洋書など、文化方面の勉強とばかりに歩き始めます。  「ぴあ」を片手に、演劇は、下北沢は本田劇場、ザ・スズナリ、澁谷はジャンジャン。映画は、六本木WAVEのシネ・ヴィヴァン。洋書は、渋谷のカンカンポア、詩集に強かったパロールなどなど・・。ま、もともとが技術系の田舎育ちなので、こうした文化方面にはまったく疎く、見るもの触るもの、あらゆるものが、「ワケがわからない状態」でした。  かなり時代に遅れてはいるけれど、ゴダールとか唐十郎とかもこのころ始めて知りました。なので、だいたいは付け焼き刃であるし、心で触れて感動するというより、知識として身につけたといった方がいいでしょう。このあたりは、10代頃から親しむ...
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87) 写真を学ぶ 14

 3年くらい前だったか、某有名カメラマン(若手)のアシスタントという女性が、額装のマットカットについて教えてほしいとやってきたことがありました。多少のコツは必要だけど、やり方がわかって少し練習すればよいくらいの作業なので、一通り教えてあげたのです。それで話が終わればよかったのですが、彼女がいったん外にでて、誰かに電話を始めた時から、雲行きが怪しくなりました。  なんだか、電話の相手に罵倒されているような感じで、もうほんと泣きだしそうになっているのです。  事情を聞けば、そのカメラマンが写真展をするので、アシスタントの彼女が額装を担当することに。当のカメラマンも彼女もマットカットの知識は皆無。額装屋に頼めばする話を、どうやら安く仕あげようとして、彼女に一任したみたい。ネット情報を探し探しして、写真道場のマットカット・ワークショップにたどり着き、そして連絡をくれたのだそう。 ...
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86) 写真を学ぶ 13

「写真を学ぶ」といった時に、これは大きく「技術」と「思想」に分けられます。話をややこしくするなら、思想は技術を制約するし、技術の進展によって思想は変わります。卑近なところでいうと、たとえば「ピント」があった写真とそうでない写真の違いは、写真に関心のない人にとっては、ほとんど区別がつきません。極端にボケている写真でも、それがピンボケによるものなのか、ブレなのか、あるいはレンズの曇りによるのか、はたまた霧などの気象条件によるものなのか、区別はつきません。カメラを実際にピントを合せて撮影し、光学的な知識も身につければ、ピントの概念はより明確にわかるようになるでしょう。さらには、廉価なレンズで手持ちで撮影するよりも、性能のよいレンズを使って三脚にカメラを固定するなどして撮影するのでは、微細なピントの善し悪しに違いがでます。ここから先は、ABテスト的な比較をしないと区別はつかないレベルになっていく...
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85) 写真を学ぶ 12

 写真を本格的に始めた頃は写真雑誌などから土門拳、木村伊兵衛を知り、当時の青年向け雑誌からは篠山紀信、荒木経惟を知り 、写真学校にはいってからカメラ毎日のバックナンバーに目を通してVIVOやPROVOKEらの写真家(時代的には荒木・篠山の少し前)を知り、卒業当時はバブルのアート流行りの中でオリジナルプリントにうつつを抜かし、そうこうする内にガーリーフォトが流行しだしたあたりで、自分の居場所はなくなったように感じて、私は「芸術写真」からなんなとくフェードアウトしたのです。写真雑誌などの仕事もそれなりに順調だったし、写真道場という写真館を始めた、というのもこうした大きな流れの中のこと。  土門拳VS木村伊兵衛、篠山紀信VS荒木経惟の対立軸、VIVOやPROVOKE VS 広告などのメジャー写真 といった対立軸があるからわかりやすく見えるといこともあったし、写真界隈を賑やかにし、活気もで...
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84) 写真を学ぶ 11

 写真学校に入った1980年中盤はデジタルカメラのデの字も見たことがありませんでした。パソコンの導入も当時知り合いだった編集者やカメラマンよりも遅く、1999年頃になってやっと富士通のFMVを買ったのです。OSはWindows1998 Second Edition。  パソコンの導入が遅れた理由の一つは、親指シフトキーボードのワープロを使っていたせいで、親指シフトが使えるパソコンが見当たらなかったのです。当時はインターネットもなく、パソコン通信とかいう時代でしたから、こういうマニアな情報はそういう接点がないと入手困難だったのです。ところが仕事で秋葉原を撮影しに行った時、たまたま入ったPCショップに親指シフトキーボードと富士通FMVのセットがありまして、それでやっと導入に踏み切った次第。この店に入っていなかったら、パソコン導入もかなり遅れていたでしょう。本体とプリンター一式で20万円...
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84) 写真を学ぶ 10

 前回の更新が1月だったので、8カ月ぶり。ある程度目標地点が見えてきたと思ったら、そこと現在地の落差というか距離の長さに負けて、頓挫しておりました。  そんなわけでまだ十分な整理もできていなのですが、続けます。  写真学校に入った1984年は、ニューアカデミズム・ブーム前夜(浅田彰『構造と力』は1983年刊行)であって、同級生や先輩の一部の影響もあり、ずいぶんこの系統の本を読みました。ロラン・バルトの記号論、ソシュールの現象論、デリダの脱構築・・あれこれ。ぜんぜんわかっちゃいなかったのですけれど、読むだけは読みました。  そんな時代ということもあったでしょうし、アサヒカメラや日本カメラ、カメラ毎日などしか情報源のない四国から上京して、重森校長がまだ健在であった写真学校で学ぶようになって、「写真」のとらえかたが大きく変わっていったのでしょう。四国の友人知人に、自分が学んで...
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(番外)中古カメラ市・弥次喜多珍道中

寝付きの悪い夜にうつらうつらと考えていて、どうした加減か、この記事を思い出しました。バブル経済終盤、中古カメラ市場がおおいに盛り上がっていたのです。銀座の松阪屋で毎年のように「中古カメラ市」が開催されていて、日本カメラの記事のために取材に行った時の記事です。日本カメラの編集者と一緒に、吉祥寺の前田さんにも同行してもらって、あれこれ物色しながら会場を歩いたのです。前田さんには、ずいぶんお世話になりました。お友達だった、米屋の鈴木さん。佐渡の田村さん。紅一点だった田村さん。いろいろ、芋づる式に思い出しました。皆さん元気にしているかなぁ。 こんな次第で記憶をたどりたどり、そういえば当時はワープロ(OASYS)を使って記事を書いていたなぁというところまでは覚えていたけれど、つい先日、そのワープロソフト「OASYS V10」のCDを廃棄してしまったのでした・・・。 なんたる不覚。 昔々のディ...
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ポラロイド

1986年頃。「日本ポラロイド」があった時代。もともとはデビッド・ホックニーの作品に感化された写真学校の学生たちが、ポラロイドを使って作品を作っていたのです。四角い画面はSX-70、横長(縦長)は、4×5のTYPE59です。日本ポラロイドのギャラリーが虎ノ門にあって、写真学校にフィルムを提供して作品展を開催したこともあり、これでずいぶんフィルムを使わせていただきました。下地に布を使ったものは、このときの展示に使ったそのままの状態です。そうそう、この布は、インドに行った時に現地で買って履いていた腰巻きの布だったのです。 それぞれの写真をクリックすると大画面で見られます。ブラウザで戻ってください。
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テレビ出演ページを整理しなおしました。

さる8月5日に『有吉くんの正直さんぽ』で写真道場が紹介されたところ、各方面から絶賛の嵐(?)が届きました。で、調子に乗ってというか、これまで見直しもしなかったDVDを整理しなおしました。実はデジタル対応のDVDプレーヤーを持っていなかったので、見ようと思っても見れなかったのです。 スクリーンショットを撮りつつ、ぜんぶ整理。やり残したことが一つ解決して、ちょっと気分も晴々。ついでに、WEBサイトにもスクリーンショットを掲載しました。いやはや、画像があるのとないのとでは、本当らしさが全然ちがいますな。 一番古い録画は1997年(もちろん当時はVHS)。思い返すに、今回『有吉くんの正直散歩』で紹介していただいた鶏卵紙は、この頃からやっていたわけで、これはある意味、たいして進歩のない私の四半世紀の記録にもなっていますですね。しかしまあ、こんなにテレビに出る人生になるとは思っておりませんでし...
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番外) ながいながい 40 年、あっというまの 40 年

  「関東ひうち会」という、国立新居浜高等専門学校の卒業生のうち関東周辺に居を構えた人たちの集いがあります。「ひうち」とは、瀬戸内海全域のうち愛媛県新居浜市あたりを中心とした四国側を指す「燧灘(ひうちなだ)」からとったものです。この会のWEBサイトにOBからのメッセージを寄せる文章を書いてみろ、と、かつての同級生にいわれたのが、かれこれ1年以上前。先日、重い腰をやっと持ち上げて、つらつら気分に任せて書いたのが以下の文です。  まあ、筆というかキーボード任せに書いてみて、会社を辞めた理由を「人生をリセットするため」としてみたら、これがまあ実にいい得て妙であって、たいへんに気に入りました。このように、腑に落ちる、ツボを押さえた言葉には、なかなか出会えないものですから、これだけでも十分我が意を得たりとかなんとか、本人はいたって満足なのであります。  以下に転記しま...
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