写真館周辺事情を調べていたら、facebookに上のような広告がガンガン出てくるようになりまして、めんどくさいなーと思う心を抑えながら探りをいれてみると、なかなかに興味深いのでありまして、なので、ちょっと整理してみます。資料は公開されていますが、転載するのもアレなんで、もしご用命とあらばご自身でお探しくださいな。

1)商店街の中にあるような昔ながらの写真館を1世代目とすれば、アリスに代表されるショッピングモールに出店したこども写真館は2世代目。現在は3世代目であって、一軒家をリフォームししたハウススタジオ型になっています。

2)集客の方法は、人通りのある商店街→ショッピングモール→webと変わりました。

3)商品は、台紙→写真集→データになりました。

 こういう環境の中で、今、成長しているハウススタジオ型写真館は、フランチャイズ方式をとっていて、絶賛、出店者募集中だそう。

 初期投資1000~1600万、月あたりのコスト110万程度だが、平均客単価は5万円程度なので、1年ちょっとで初期投資回収が可能(ホントかな?)。集客は、本部のネット広告が強いので安心。もちろん店舗ごとに行うことも可能(でもやっちゃいけないことも多いんだろうなぁ)。

 初期投資の内訳は、加盟料300万(追加で200万の保証金が必要なケースあり)、内装工事600~1100万、撮影機材・衣装・小物100~200万、店舗契約関連50万。・・機材・衣装・小物で100万円なんて、かなり安っぽくないかなぁ? というところから推測するに、いろいろ加算されてもっとお高くなりそうな気配。

 月あたりコストの内訳は、人件費3人分80万、家賃・駐車場28万、雑費25万。

 本部への集客手数料は1件あたり6000円、オプション制作費は原価+利益の70%、ロイヤリティは利益の20%。・・・・怖い。

 加盟して安心して儲かるポイントは下記。

1)協力なweb集客、2)舞台セットのチームが家を傷つけないよう内装工事、3)撮影研修おまかせ(接客・撮影・編集の3人が1チームをくむ方式)、4)オプション商品制作・発送はおまかせ。

 自宅の空き部屋や空き家を使って営業するなら道はあるかもしれませんが、さて・・・。私は絶対おすすめはしませんし、自分もやる気はありません。前にも書きましたが、コンビニ経営と一緒で、考えよう、運次第では超ブラックな壺にはまりそうです。ちなみに、写真好き・カメラ好きの人は絶対やってはだめ。自分の趣味嗜好との狭間で心を痛めることになりますから。なので子供好きで、わがままな親のいうことも、子供のためなら許せる、というキャラクターが一番かと思います。

 しかし、これを本部の側からみれば、出店者に全コスト負担をしてもらって、リスクも負ってもらって、客を集めて押しつければ儲かる仕組みです。もちろん、お客さんの子供が増えればね。という条件付きですが、「都内では少子化とはいえ、子供の数は増えています。向こう10年は大丈夫」とか書かれていて、いやいや、どんなデータなんでしょうねぇ。(運営会社の一つは近年、ブライダル・貸衣装系の会社の傘下にはいったとかで、本当のことはわかりませんが、こういう業態もそろそろ限界に近づいているのかもしれません。)

 ところで我がfacebookには、他にもネット集客して、学校や保育園、家族向けの出張写真撮影のカメラマンを募集中! とかいうのもよく出てくるようになりました。こちらは初期投資がカメラ・レンズくらいなので、比較的安心。もちろん、初心者ok。と、これは完全にエッセンシャルワーカー的。誰でも参入できるというのは、それだけ競争も多くなりますから、なかなかたいへんなことになりそう。

 いずれにしても、写真の技術なんてなくてもカメラを買ってちょっと勉強すれば仕事ができますよ。的な業務形態であることに違いはありません。フォトグラファーはピンキリでしょうが、こういうのにお願いするお客さんはほぼ全て、自分たちで写真を撮る習慣がない方でしょうから、そこそこの写真を撮れば満足してくださるでしょう。というか、お客さんと同世代で、駆け出し感があって、丁寧な仕事をするほうが、年配の偉そうな写真家気取りの人に撮影されるよりは気持ちがいいし、笑顔にもなれます。運営者側からすれば、問題のあるフォトグラファーは首にすれば、代わりはいくらでも登録してくるだろうし・・・。

 カメラがデジタルになって、誰でも撮影できるようになったこと。人物写真は、背景と衣装で8割くらい決まってしまうこと。こうした「写真の本質」をビジネス的に展開すると、必然的に上のようなモデルになるのでしょう。要は、仕上がりのイメージ(分ランディング)と集客。これらはいずれも、その方面に強い人たちがやるほうがはるかに合理的。個人写真館には太刀打ちできないジャンルです。

 実をいうと、雑誌や広告の分野で仕事をするフォトグラファーにとっても、これらは同じこと。思えば、アマナなどの登録制フォトグラファーは、これらの先駆け立ったのでしょう。

 という具合に書きながら、なぜか奥歯に物が挟まったような気分が抜けきりません。いや、写真ってそんなんじゃないんだよ。目指しているのは「芸術」なんだよ。とかいう、若気の至り的な理想が今でも心の奥底にあって、ビジネス、ビジネス、写真はビジネスという具合に考えれば考えるほど、もぞもぞと動き始めるのです。

 多分これは、私および私の世代が若いころに共有していた「写真」への思いが、いまだに抜けきれないこと、そしてこれは写真学校によって大きく強化されたことが強く影を落しているに違いないと、ここに思いが至りました。そう。このように思える程度には、写真学校から距離を置いて、多少なりとも相対的に見ることができるようになった、のかもしれません。

 思えば、写真学校に入学したのは、今の去ること40年前の春の出来事なのです。