第 1 回目「撮影を遊ぼう !」
デジタルカメラのほとんどの機種は、割合簡単な操作で十分な画質が得られるよう設計されています。 しかし「なぜか上手く撮れない」、「いつもヘンな顔で写る」などとお思いになられている方は少なくないはずです。 多くの方々はこれらの原因を、撮影技術やデジタル技術に求めるはずです。もちろん、技術的な問題を解決することによって、満足のいく結果を得られることが多いのは確かです。 しかし、決してそれだけではありませんね。例えば、撮影技術やデジタル技術と、いい笑顔やいい表情で撮影できるかどうかは、全く異なる問題です。 連載の初回である今回は、技術的な内容は最小限に抑え、「いかに撮影を楽しむか」についてのいくつかの提案をおこないます。 一通りお読みになって作例をご覧になったら、それだけで肩の力がずいぶん抜け、もっと撮影を楽しめるようになっているでしょう(たぶん)。
1.1. 基本はこれ
- 「露出補正」、
- 「ホワイトバランス」
の二つの設定を手動(マニュアル)で変更するだけで、ほとんどの問題が解決します。つまり、これら二つの設定変更の仕方を理解しておくことは、とても大切です。 もちろん、これらを操作する以前に、自分の眼で、実物の被写体の見え方と液晶モニタ上に映るイメージとの違いをしっかり観察することが肝要です。デジタルカメラでは、仕上がりを液晶モニタですぐに確認できますから、少し面倒でも、満足できる結果を得られるまで、何度も設定を変更して撮影しなおすといいでしょう。少し慣れた頃には、写真の腕も数段上達していること請け合いです。
1.1.1. 明るさ・暗さは自由自在
まずは露出補正機能を使って、同じ被写体を白っぽくしたり、黒っぽくしたりして、印象の違いを比べてみてください。 露出補正ボタン(やダイヤル)を操作して、仕上がりを白っぽくしたい場合には +(プラス)側(+ 2 EV で画面全体がほぼ真っ白になります)に、露出オーバーめに調整(補正)します。 逆に黒っぽくしたい場合には -(マイナス)側(- 2 EV で画面全体がほぼ真っ黒になります)に、露出アンダーめに調整(補正)します。
+ 2 EV〜 – 2 EV の補正で、ほぼ “真っ白” からほぼ “まっ黒” まで自由に調整できます。 5 枚をこうして見比べると、”画面全体の濃さがただ変わっているだけ” のようにも思えますが、この中からどれか一枚だけを提示された時に受ける印象を想像してみてください。 つまり、明るい被写体を黒っぽく写したり、逆に暗い被写体を白っぽく写すこともできるのです。もちろん、画面全体の濃さが変わるだけですが、意外にも画面全体の濃さを調整するだけで、写真の見栄えはずいぶん変わるものです。 どうですか ? これができるようになっただけで、ちょっとだけプロフェッショナルになったような感じがしませんか ? ちなみに、フィルムを使った銀塩カメラの場合、撮影したフィルムは現像を終えるまで結果を確認できません。ですから、この「露出補正」こそが難しい技術の一つとされていました。でも、デジタルカメラでは結果をすぐに液晶モニタで確認できますから、ちっとも難しくありませんね。 大事なことはただ一つ。どの程度の濃さにするのがいいかを、自分の眼で見て確認することだけです。 なお、操作方法や調整(補正)できる範囲は、デジタルカメラの機種やメーカーによってかなり異なります。
★この項の詳細は、「一眼レフ入門 一眼レフなんかこわくない !」の 8 回目「「露出」の基礎知識」 を参照してください。
1.1.2. 色も自由自在
オート(AWB)の他に、「太陽光」、「曇天」、「電球」、「蛍光灯」、「スピードライト」などのマニュアル設定モードがあり、光源の種類を指定するだけです。 「プリセット」を使うと、かなり正確なホワイトバランスが得られます。 機種やメーカーによってメニューも機能も大きく異なりますが、これらを操作すれば、写真の色調をより正確にしたり、逆に変化のある色調を楽しめます。
しかし、この機能は完璧ではありませんので、「色調がヘンだ」と思った場合には、手動(マニュアル)でホワイトバランスを設定するといいでしょう。 これまたデジタルカメラの機種によってかなり異なりますが、光源の種類を選択するだけです。 いくつかの光源がミックスされている場合には、かえって「オートホワイトバランス (AWB)」まかせの方がいい結果になることだってあります。 また、わざと光源の種類とは異なるホワイトバランスのマニュアル設定を選べば、まるで銀塩カメラのレンズに色温度の変換フィルターをセットしたかのような色調の画像を得ることもできます。 正しい色を再現するだけでなく、ちょっと変わった色調の写真も積極的に楽しんでいただきたいと思います。
★この項の詳細は、「一眼レフ入門 一眼レフなんかこわくない !」の 11回目「写真の「色」を楽しもう」 を参照してください。
1.1.3. 光と影を見つめよう
★この項目の詳細は、「一眼レフ入門 一眼レフなんかこわくない !」の 12回目「摩訶(まか)不思議な写真の世界」の「3.2. 光を操る」 を参照してください。
1.2. 友達と遊ぶ
1.2.1. ポーズとカメラ位置の基本
たいていの場合、人は立った眼の位置でカメラを構えます。ズームを望遠側にした場合にはあまり気になりませんが、広角側にすればするほど<A.>のように意外に頭デッカチに写ります。 カメラ位置を下げて、被写体の腰くらいの位置から撮影すると、<B.>のように身体のプロポーションが、ほぼ見た目どおりに写ります。 もっとカメラを下げてローアングル(ローポジション)で撮影すると、<C.>のように “威風堂々” になります。 デジタルカメラには、レンズ部を液晶モニタつきボディに対して回転できる(スイバルできる)(ニコンでは、「COOLPIX 3500」「COOLPIX 2500」、「COOLPIX 995」、「COOLPIX 990」、「COOLPIX 950」など)機種や、液晶モニタの角度を変化できる(ニコンでは「COOLPIX 5700」、「COOLPIX 5000」など)機種があり、これだと、ローアングル(ローポジション)撮影も(その反対も)簡単ですね。また、こういった機構は、銀塩カメラではなかなか真似できないことです。 屋外で撮影する場合には、カメラ位置(アングル/ポジション)の高〜低(ハイ〜ロー)で、背景の写り方もずいぶん変わっていくことに驚くはずです。
1.2.2. 動きながら撮ってみよう
セルフタイマーなどを使用した記念写真などでも、ただ普通に立って写るだけでは味気ありませんね。皆、違うポーズにしてみるとか、逆に揃えてみるとかするだけでも撮影は楽しくなります。
1.2.3. 冗談を楽しもう
先に登場した三人の女性です。で、誰が誰か判りますか ?「えっ、この人がこの人 ?」ってな驚きを感じてくだされば、それでいいのです。”写真なんて、冗談の一つ” だと思って遊んでしまいましょう。
1.3. 家族で遊ぶ
1.3.1. 数撮って当てよう !
デジタルカメラには、30コマ / 秒のスピード(! !)で連続70コマ(! !)撮れる「ウルトラハイスピード(UH)連写」機能なんてのを搭載したモデルもあります(機種によって異なります。連続40コマ撮れるモデルも)。 この機能を使いこなせば、小さな子供などの一瞬の表情の変化も逃しませんね。 とにかく撮って撮って撮りまくる。数多くのカットから、良いものだけを後でセレクトするのが、写真上手への早道です。プロの基本も、ここにこそあるのです。技術的に未開発の初心者はプロよりも数多く撮ってしかるべきなのです。
1.3.2. 役割を分担してみよう
お父さんがカメラを担当、お母さんがレフ板を持ってアシスタント役をしています。 屋外(それも道路 !)に毛足の長い敷物を広げての撮影ですが、まさかこれでこのような写真(<右>)が撮れるとは……、信じきれないかもしれませんが、本当の事です。
1.3.3. 気楽に行こう !
<A.>は、子供をでんぐり返ししているところ。 こういうことをすると、たいていの子供はとても喜びますね。 リモートコードやセルフタイマーを上手く使ってください。 <B.>は、まあ、一見普通といってもいい家族写真ですが、お父さんとお母さんが少し離れてそれぞれがポーズを決めているのが、かっこいいですね。 <C.>は海釣りの好きなお父さんの趣味を活かした(!?)イメージ……。 ……あまり深くは考えないで楽しみたいものです。
コラム「自分自身を撮る」
“自分で撮りたいと思う自分自身の写真” といえば、すぐ思いあたるのが、パスポートや免許証、社員証などの証明写真です。 「こんなのは、ほんとうの私じゃない !」と証明写真の写りに納得できなくて、次の更新のときまで “本当の自分捜し” をしている方も少なくありません。 この写真は私の最近の自慢。運転免許証の写真ですが、和服を着てます。身体も少し横を向けて気取ってます。 「えっ ? 免許センターに和服着て行ったの ?」とよく聞かれますが、実はこれは自分で撮影した写真。 私の住む神奈川県では、無事故・無違反のドライバーが免許更新を近くの警察署に行って手続きするときには、本人が持参した写真が新しい免許証にも使われることになるのです(全国どこでもそうなのかは不明ですが……)。 というわけで、証明写真に不満を抱いている方は、写真館で撮って貰ってもいいし、下手なプロに頼むくらいなら自分で撮っても、友人や家族に撮ってもらってもいいのです。 そのかわり、各々の証明写真としての要件を満たすための約束事はちゃんと守ってくださいね。悪ふざけはもちろんいけませんが、証明写真だって楽しんでしまいたいものです。 それから、証明写真の撮り方の流儀は、国によっても結構違うようです。興味のある方は調べてみては如何でしょう。