
6.ポートレートを撮る
1. ごあいさつ
家族や友人などの身近な人を、雑誌や広告などに見るポートレートのようなイメージで撮影するためのコツを紹介しましょう。撮影時にほんのちょっとしたことを意識するだけで、ずいぶん印象のよいポートレートが撮影できます。ぜひ、恥ずかしがらずに、モデルやカメラマンを演じてみてください。
2.背景を選ぶ
人物を撮影する時、どこで撮影するか? は大切なことです。都会のど真ん中で撮るのと、緑豊かな公園で撮影するのとでは、気分が違うという以上に、背景に写るものによって、人物の印象ががらりと変わるのです。背景に何が写っているかということをしっかり見ながら撮影するのが第一のコツです。
ありがちな失敗の原因を考えましょう。
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ありがちな人物写真。なぜ、きれいに見えないのでしょう。
<02>
いわゆるポートレートっぽい仕上がりになりました。
<01>がなんとなく普通の写真に見えてしまう原因は、人物が画面に小さく、しかも顔が画面中央に写っているせいです。写したい顔を画面中央部に位置させるのが写真撮影の基本ですが、カメラを横位置で構えていることもあって、人物以外の要素の方が大きな面積を占めてしまいました。このため、なんとなく下手な印象に見えるわけです。
人物は縦長ですから、カメラを縦位置にし、人物を大きく写してみましょう。それだけで、背景もすっきりして印象のよいポートレートになります。
とにかく人物を大きく写します。
写真は、実際に見える風景の一部を切り取るようにして、四角い画面に写します。当たり前の話ですが、四角い画面からはみ出てている部分は写りません。ここが写真の善し悪しを決める境目です。
つまり、画面の中に、必要な要素だけが写るように撮影することを心がけましょう。ポートレートでは、人物がきれいに見えることが大切ですから、人物以外の要素はできるだけ写さないようにするのがコツです。
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古めかしい日本家屋の前ですが、このように撮影すると、人物主体ではなく家屋主体の写真になります。
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人物を大きく写すようにすると、人物が引き立ちました。
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さらに大きく写すと、人物がさらに引き立ちます。背景に壁が写っているだけで日本家屋であることも想像でき、イメージが膨らみます。
背景だけで、人となりが変わって見えます。
人物の立ち位置やカメラ位置を変えるだけでも、写真に写る背景が変わります。時間に余裕があったら、背景を変えて撮影してみましょう。
背景に写る要素によって、写っている人物の人となりさえ変わって見える写真になることに、きっと驚かれるはずです。
カメラのさまざまなテクニックもさることながら、その人らしく見える背景で撮影することも大切なのです。
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緑を背景にすると、さわやかな春〜夏の印象に。(撮影したのは冬ですが)
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公園にある木製遊具です。スポーツの秋といった、健康的な印象がします。
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近代的な建築物。都会的な印象に。
3.ズームと絞りを調整する。
露出補正で明るさを調整し、ホワイトバランスで色を補正するといったことは、すべての撮影に共通した基本操作ですが、これら以外に、ポートレートではズームと絞りの調整がポイントになります。
ズームをうまく使うことで、プロポーションをきれいに写せます。
さらに、絞りを開放ぎみに調整することで、背景を大きくボカすことができます。
それぞれの操作と効果をしっかり理解しておきましょう。
ズームの一般的な使い方。
ズームレンズのズーム操作を行うと、画面に写る範囲が変わります。ズームを広角(ワイド/W)側にすると広い範囲が写り、望遠(テレ/T)側にすると狭い範囲が写ります。言い方を変えると、被写体の大きさは、広角にすると小さく、望遠にすると大きく写ります。カメラ位置が同じなら、ズームを望遠にするということは、画面の一部をトリミングしているのとほぼ同じ効果になることを確認しておきましょう。
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同じ場所で撮影すると、
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広角では広い範囲が写りますので、被写体が小さく写ります。
<11>
望遠では狭い範囲だけが写りますので、被写体が大きく写ります。<10>の中央部分をトリミングしたのと似たような写りです。
望遠で遠くから写すのがポートレートの基本!
ごく普通の感覚で、友人や家族を撮影すると、被写体とカメラの間隔はだいたい1〜2メール程度になるように思います。普通に会話を交わせる距離感ということです。しかし、この距離で人物を撮影すると、頭でっかちに写ってしまうことをご存知ですか。一度試しに、ズームを望遠にして、被写体からずっと離れた位置から撮影してみてください。たったこれだけでプロポーションのいい写真になることに驚かれるはずです。
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被写体に近寄って、広角側で撮影します。
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遠くから、ズームを望遠にして撮影します。
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被写体に近寄って、広角側で撮影すると、意外なほど頭でっかちに写ります。背景に広い範囲が写っているので、ちょっとうるさい感じがするのもデメリットです。
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遠くから、ズームを望遠にして撮影すると、これだけで本格的なポートレートになりました。背景がすっきりしているのも特徴です。
絞りを開けると、背景が大きくボケます。
露出モードダイヤルをA(絞り優先)モードに設定し、F値を小さい数字に設定すると、背景が大きくボケます。背景がボケることで、人物がさらに引き立って見えるため、ポートレート撮影では、よく使われる設定です。イメージプログラムモードの「ポートレート」は、こうした設定をカメラが自動的に行うものです。P(プログラム)モードで、プログラムシフトを使うことでも同様の設定が可能になります。さらに背景を大きくボカすには、被写体と背景の距離差を大きくし、望遠側で撮影することが大切です。
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AモードにしてF値を小さい値に設定します。
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AUTOモードでは、背景にもピントが合っているように写る場合でも、
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F値を小さい値に設定するだけで、背景が大きくボケて写ります。
4.カメラアングルの考え方。
ポートレート撮影では、カメラを縦位置にして、人物の顔だけでなく、身体も写すようにするのが基本です。
この基本をマスターしたら、次に、カメラの位置や構図のとり方をいろいろ工夫してみましょう。ここでは、カメラアングルとトリミングのコツを簡単に紹介します。
全身を撮る時のカメラアングル
人物を写す時、普通に立ったまま撮影することが多いですね。しかし、このように撮影した場合、カメラ位置が高いため、かなり頭でっかちに写ります。特に、被写体に近づいて撮影した時はそうです。全身写真で、プロポーションを良く写すには、胸からおへそくらいの高さにカメラを構えるのが基本です。逆に、低い位置から撮影すると、頭が小さく、足が長く写ります。
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少し高めから撮影しました。頭でっかちで短足に写ります。
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胸からおへそくらいの高さで写しました。
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低い位置から撮影。頭が小さく、足が長く写っています。
顔を写す時のカメラアングル
顔や表情を写す場合には、見下ろすか、見上げるか? といった位置関係だけで、写真のイメージから受ける印象が変わります。
高い位置から撮影すると、被写体がカメラを見上げるような視線になります。このため、被写体が「かわいい」とか「弱々しい」といったニュアンスを強く受け易くなります。逆に、低い位置から撮影すると、被写体はカメラを見下げるような視線になります。このため、写真を見る人は、被写体から見下げられる印象を受けるわけです。単純には、カメラの高さだけの違いなのですが、これによって写真のニュアンスが大きく変わることを覚えておきましょう。
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高い位置から撮影。かわいい印象が強くなります。
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口元くらいの高さで撮影。フレンドリーな関係をイメージしやすくなります。
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低い位置から撮影。力強い印象になります。
画面からはみ出るように撮影するとイメージが膨らむ。
人物を撮影する時、頭や身体が全部、画面の中に入るように写すのが基本です。しかしこの基本から外れて、頭が画面から切れたり、身体が画面からはみ出たりするように撮影すると、なんとなく雑誌や広告などで見るような写真になります。
全部見えてしまうよりは、どのように被写体を切り取るかという撮影する側の個性も際立つことになります。
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全身をしっかり画面に写したもの。面白みに欠けます。
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画面からはみ出るように写すだけで、力強いポートレートになりました。
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顔を画面の端に大きく写しました。さらに迫力を感じます。
最後に
人物を撮影しようとするとそれだけで緊張してしまうものですが、ここで紹介したコツを一つずつ実行するだけで、こうした緊張も少しずつほぐれてくるはずです。また、撮影したイメージを液晶モニタで被写体に見てもらって、次はどうしてみよう、といったアイデアをお互いに出し合うようにすると、撮影がさらに楽しくなりますよ。