少子高齢化と人口減少は、耳にタコができるくらい聞いて、聞き飽きて、誰も対して気にしないような話題のようだけれども、ちょっと調べて自分で想像してみるなら、もうね、ほとんど絶望的になります。
人口推移のグラフに写真界の事象を少しだけ書き込んだものが上の図です。人口問題といえば、だいたい戦後のベビーブーム以降が中心的な話題になるのですが、この図のように、鎌倉時代あたりからスタートすると、現在の「異常事態」がよくわかると思います。
明治以降の人口爆発といっていい人口増加は、単純にいえば「産業革命」によって化石エネルギーを使えるようになった恩恵でしょう。「写真」は科学技術の恩恵の一つとして、人口増加に伴って業界ごと繁栄してきたのだなぁ、ということが直感できます。人口が増え、エネルギーは感嘆に豊富に使えるようになれば、多くの人が楽に生きていけるようになる、消費活動も増える・・・。とまあ、ほんとうにいい成長の時代だったのです。
ここには「写真館」の歴史を簡単に記しただけですが、広告、報道、エディトリアル、アート、趣味、の写真の歴史を重ねるなら、それぞれが人口の増加(ないし科学技術の進展)と結びつけて語ることが可能でしょう。戦中戦後のグラフジャーナリズム、高度成長期のカメラブーム、雑誌ブーム、バブル時代のアート流行り・・・。今、振り返れば、なんのことはない、こうした時代背景の中の、写真周辺の文化の変化にすぎなかったような・・・。
日本の人口のピークはグラフに記されているとおり、2008年です。今年は2025年でピークを超えて17年が過ぎました。このグラフだけを見れば、人口が減るだけしかわかりませんが、その実態は高齢化率の増加(現時点で30%程度)と少子化(2024年の出生数は約70万人)という寒けがする数字が隠れています。おそらくは、これから先、誰も想像することができなかった変化が訪れるだろうことは想像に難くありません。
2019年の厚労省のグラフですが、2040年の出生数推計が74万人となっていて、ほとんど笑いを誘いますね。で、少子化って、1970年始めの第二次ベビーブーム以降の現象なのです。50年以上。で、あと20年ちょっと過ぎたら今生まれている女性たちが子供を産む世代になるわけですから、どんだけ少なくなるねん? という話です。
ここまで少子化が進んでいる中、たとえばスタジオアリスってどうなっているの? で調べてみましたら。
スタジオアリスは、子供写真館としてスタートしたのが、写真道場とほぼ同じ1992年。すごい優良企業として知られています(パート・アルバイト含む従業員の待遇はあんまりよくないって話を聞いたことがありますが)。アリスの成功以降、古くからある写真館の業態変更もあり、異業種からの参入もあり、それでもどんどん大きくなってきた会社です。少子化はこども向け写真館にとって向かい風のように思えますが、これが逆に、一人一人の子供にかける時間とお金が増加することなります、潜在的にもつポケット(祖父母×2、両親、おじおば・・)も増えるという背景がありました。
もちろんこの土壌として「子供中心の家族観」があったといっていいと思います。このあたりも、おいおいゆっくり整理していきます。
とれあれ、このグラフから直近5年で、スタジオアリスの従業員数は2割近く減り、店舗数も1割程度減っていることがわかります。これによって、昨年も増益だったそうですが。たしか20年前くらいからは成人式も手がけるようになったし、最近では幼稚園・保育園撮影にも手を伸ばしているという話も聞きましたが、しかし、さすがにここまで少子化が進むとさすがに、ということなんでしょうか。タワマンがまだまだ建築中で、若い家族がまだ増加するらしい武蔵小杉周辺には、こども向け写真館が増えていますし、フリーランス的な働き方で子供&家族を撮影する人も増えていそうな感じがありますが、さてはて・・・・。
逆に、ここ10年前くらいから、「遺影専門写真館」や「ビジネスプロフィール専門スタジオ」が登場しています。前者は多死社会が進行していくなかで私たちの死と写真のイメージが、後者はネット社会になって個人が顔を出す必要性が増す中で仕事をする個人のイメージがどのように変化していくのか、といった意味で、大変に興味深いところです。
というような時代背景の中ですが、昔々の写真の本の話から始めましょう。