今年5月に父が亡くなりました。昭和12(1937)年4月生まれなので、88歳になって1カ月少しでした。
この写真は1994年に両親が写真道場に来た時に撮影したものですから、つまり57歳の父です。今の私よりも7歳下。
「遺影」については、かねてより、人生でいちばんよかったころの写真を使うのがよい、と私は考えてきました。で、元気なころの父のイメージといえばこの写真というわけで、これを葬儀に使いました。
母はもちろん、親戚にもたいへん評判がよく、「元気なうちに撮っておかないといけないねぇ」ということで衆目の一致するところとなりました。
「遺影」というと葬儀に使う写真≒歳をとって撮影するもの、という具合に考えられることが多いですが、後世の人が当人をどうイメージするか? を決める写真ですから、当人がいちばん本人らしいと思えるイメージにするのがよいと思うのです。こうした意味では、若く美しく、かっこよく、元気だった頃の写真を撮っておいて、それで思い出してもらうのが一番。
歳とった写真がよいという考え方は、長生きがそれ自体で価値であった時代の名残でしょう。現代はもう、長生き自体が価値である、ということにはならないように思います。こうした意味で、どのような写真を遺影とするか? に、本人や家族の人生観が現れているわけで、そこはもう人それぞれであって、「自分のあり方は自分で決めてよい」方向に多くの人々の考え方が変わっていくのでしょう。